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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第3章 結成! マギア・クインテット!
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第51話 準備完了。その名は、マギア・クインテット

ようやくここまで来た……!

長かったなー。


「時は満ちた。我らの悲願がついに叶う」


 そこは明かりのほとんど無い、暗い部屋だった。


 数個のランプと思わしき道具が放つ怪しげな光だけが、その場にいる者たちを照らしている。

 照らされている人影は5つ。

 台に乗っている1人と、その前にいる4人。全員がマントを身に付け、頭には顔が隠れるようなてっぺんが尖った被り物をしている。


 さらに部屋には嵐でも巻き起こっているかと思うほど、雨が叩きつけられる音と激しい雷の音が鳴り響いていた。


 部屋の雰囲気もあって、余計に5人を怪しくさせる。


「皆の者、この長い時間、よくぞ耐えた。すぐに行動に起こしたくても起こせない焦り・苛立ちは多かったことだろう」


 台の上にいる人物はマントをバサッ! と広げる。


「しかし、もう耐える必要はない。思う存分暴れてくれようぞ! この地に我らの名を刻むのだ。この世界に我らの名を知らしめるのだ。そう! 我らの名は――」




「おーい俊。1年半越しの発表だっていうから集まったのにどこにいるんだよー。この部屋かー?」




 ガチャッという音と共に、後ろにあったドアが開かれる。


 ドアを開けたのは寺田だ。開いたドアから明かりが漏れる。

 嵐の雰囲気など微塵も感じさせない暖かな光が部屋を新たに照らす。


 なのに、なぜか今も聞こえる雨と雷の音!

 その正体は台の近くに置かれた録音機から流れている音だ! ドアの向こうからは小鳥のさえずりまで微かに聞こえるというのに、録音機から今も流れている音があらゆるもの全てを台無しにしている!


「ちょっと寺田さん! 今せっかくいい雰囲気だったのに、なんちゅーベストで最悪なタイミングで現れるんですか!?」

「はあ!? 何でオレ怒られてんだ!?」


 台の上にいた人物――俊はマントと被り物を取り払い、怒りをあらわにする。


「まあ、タイミングはある意味良かったな……」

「けど残念~。せっかくいい所だったのに~」

「そもそも、これ、何?」

「アタシが聞きたいわよ……」


 他の4人もどこか呆れた様子でマントと被り物を取り払う。言うまでも無く、大悟・菜々美・音子・椿の4人だ。


 季節は春。3月も終わりが見えてきた頃。

 後数日もすれば、俊たちは小学4年生・・・・・となる。


「つーか、何だよこの状況? 何で俊に貸した部屋がこんな悪の組織の秘密基地みたいになってんだよ? さっきから聞こえてくる雨風や雷の音といい、その変な帽子(?)とマントといい、絶対に俊の我が儘だろ」


 寺田、大正解である。


 今日の俊は遠足前の子供のように朝早く起きてしまい、どうせだからと寺田に貸してもらった部屋を魔改造していた。意味も無く!


 そして同じように早く起きてしまい、予定時刻よりも前に集まった他の4人にマントと被り物を渡して茶番劇をしたのだ。意味も無く!


「だ、だって……これがお約束って聞いたから……」


 そんなお約束があってたまるか。


 動揺している俊の後ろでは、4人が小声で話していた。


「(ていうかアタシ、あの録音機見覚えがあるんだけど?)」

「(椿もか。オレもだ)」

「(……私、覚えてる~。あれオカルトちゃんのだよ~。もう2年以上も経つのに、いまだ返せていないんだって~)」

「(うん。利子が増え続ける)」


 今も嵐の音を出し続ける録音機、それは『ゴミの化け物事件』の際に証拠隠滅として、気絶していたオカルト女子から俊が回収したものだ。

 結局、あれからずっと返せていないのだ!


 最初の内は覚えていたのに、この1年半近くの忙しさで完全に忘れていた俊。今さら返してもどうなんだ? という話である。


 余談だが、その後何とかして録音機を返すことができた俊。利子ということで、使い勝手に困ったあるモノをおまけとして一緒に返すのだが、それが原因でひと騒動起きてしまうのはまた別の話。


「あー、なんだ。とりあえず空気がグダグダになってきたしよ、部屋を片付けてからこれまでの成果とやらを発表しねえか?」

「…………そうっすね」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 悪の秘密組織のような雰囲気が無くなった部屋に俊たち5人と、少し後ろから見学する形で寺田・栗原・田中の3人がいた。


「それでは! この1年半の集大成を発表しまーす! 3つ報告があるから全員、耳の穴かっぽじって聞けよー!」

「わ~~~い! パチパチ~!」

「おー。パチパチ」


 俊が酒が入った宴会の司会者みたいなノリで言えば、菜々美はテンションを上げて、音子は空気を読んで拍手する。


「寺田さん。俊くんたち、この1年半で成長しましたね」

「そうですな。自分の子供のような嬉しさがありますよ」

「アイツらも年齢で言えば、もう10歳ぐらいだしな……。子供っぽい身体の丸みなんかも無くなって、少年少女って感じだな」


 俊は平均的な成長具合だったが、身体を鍛えたのに加えて、前世を持っていることによる大人らしい落ち着きが今まで以上に雰囲気として出ていた。

 謎の茶番をするあたり、中身はアレなままだが……


 大悟は俊以上に鍛えているからか、ガッシリした身体つきとなった。今では俊よりも少し背が高くなっている。

 年齢が上がれば目に見えた身長差が出るだろう。


 菜々美はポワポワした雰囲気はそのままだが、数年に及ぶスパルタ修行の影響か、外面に比べると内面は意外としっかりした所がある。

 最近の悩みは、胸が急成長してきたことらしい。

 年齢から考えると、中学になる頃には男子の視線を集めそうだ。胸に。


 音子は学校内でのマスコットキャラの立ち位置を不動のものとしていた。小柄でカワイイ容姿なので年上の女子に人気だとか。

 最近の悩みは、胸に成長の兆しがまるで表れないことらしい。

 ついつい菜々美と自分のとを比べてしまう。


 椿は小学生でありながら、美少女と化していた。年齢を問わず男子の注目の的となり、椿の知らない所で激しい攻防戦が繰り広げられている。

 もちろん本人はそんな攻防があることを知らない。

 最近では音子の弟でもある良太も自分の恋心を自覚してきたのか、音子を介して椿との仲を深めようとしている。


 そして音子は胸に関するアレコレの怒りを良太を使って発散させていたりする。大悟の父、大志直伝の関節技が良太を日々襲う! これぞ弟の宿命!


「とくと見よ、集大成その1! 腕輪型魔術発動体『リング』!! そして、その補助魔術具『アクセサリー』!! では簡単に説明しよう」


 俊が『異空間倉庫』からまず取り出したのは、数個の窪みがある腕輪とそれぞれ形が違うバッジのような物だ。


 『リング』には5つの窪みがあり、そこに『アクセサリー』をはめ込むことで、素質が無くとも魔力を消費して簡単な魔術を使えたり、自身の魔術の補助に使用することができる俊がこの1年半の間に血の滲むような努力の末完成させたオリジナル魔術具である。


 さらに『リング』には5つの魔術効果が付与されている。

 それぞれ『変身』『魔術発動』『限定ステルス』『認識阻害』『腕輪交換』の5つだ。それほど上位の魔術ではないとはいえ、5つも魔術効果がある魔術具など本来ならあり得ない。しかし、転生してから日本で学んだアニメやマンガなどの現実で言えばありえない、エヴァーランドで言えば非常に独特の発想からヒントを得て、完成するに至った。


 それぞれの魔術効果については、簡単な練習をしながら説明するということで、後回しとなった。


「続きまして、集大成その2! 戦闘服(×5)!!」


 次に俊が取り出したのは、コスプレのような服5着。


 俊の黒を基調とした半袖・長ズボン+腰飾りのもの。

 大悟の青を基調とした改造胴着モドキ。

 菜々美の黄色のフリフリドレス風ワンピース。

 音子の緑を基調としたシンプルな服+猫耳カチェーシェ。

 椿の動きやすいように改造した巫女服。


 この服は専門の業者に頼んだわけではない。魔術によって作られた俊の作品である。魔術薬を作る過程でできた魔術具としての服を創るのに適した植物を材料としている。普通の服と製造過程が大きく違っており、服を作っている人からしたら白目をむきたくなるような製造工程により出来上がっている。


 俊は3年生の終了式の時に最終調整として全員の身長とスリーサイズを計ろうとしたところ、椿に思いっきり殴られてしまった。

 昔と違って羞恥心が出てきたらしい。


 この服も魔術具である関係で防御面はかなりのものとなっており、さらに身体能力の強化に加えて、それぞれに合わせた魔術も付与されている優れ物。


「それじゃあ最後の報告だ。音子さんお願いします!」

「ん。分かった」


 最後の報告と聞いて一体何だと思っていたら、まさかの音子からの報告。なぜここで音子が出て来るのか他の面々には分からなかった。


「私は、1年前に俊から依頼されたことがある。じっくりと考えて、少し前にようやく納得のいくものができた」


 そう言って音子は自分の『異空間倉庫』に手を入れる。


「じゃじゃーん」


 その手にあったのは大きな旗だ。

 五芒星が大きく描かれ、それぞれの頂点に黒・青・黄・緑・赤の玉がある。そして中央に描かれているのは交差する杖と剣。

 そして下の方には、英語で何かが書かれてる。


「なあ、音子。これ何だ?」

「エンブレム。私たちの」

「え!? これが!」

「そう。たくさんの失敗を経て決まった」

「もしかして、下にある英語って……」

「オレたちのチーム名だよ。やっぱりヒーロー活動するのにチーム名とシンボルとなるエンブレムが無くちゃ締まらないと思ってね。1年前の勉強合宿の日に音子に頼んだんだよ。オレは事前に確認したけど、良い出来だろ?」

「すご~い! それでそれで~、チーム名は何~!?」


 興奮する菜々美やそわそわしている大悟と椿を落ち着かせ、俊は言う。これから先、世界に轟かせるチーム名を。その名は――


「『マギア・クインテット』。マギアは魔術とか魔法って意味で、クインテットは音楽なんかの用語として使われる五重奏って意味だ」

「「「『マギア・クインテット』……」」」

「ああ。さあオメエら、これから忙しくなるぞ。オレたちには目的も覚悟もある! それぞれの願いを叶えるための努力もしてきた! 不良やチンピラなんざ怖くない! 『アンノウン』なんかに家族や友を傷つけさせるもんか! 今日この日からオレたちの伝説が始まる! チーム『マギア・クインテット』……結成だあああああああああああああああっ!!」

「「「「おおおおおおおおおおおおおおぉっ!!」」」」


 5人は拳を天に届けと振り上げ、結成の雄叫びを上げた。


 

 ご意見・感想・誤字脱字の報告、待っております。

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 これからも『逆転生』をよろしくお願いします。


 次回、『初陣』


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