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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第3章 結成! マギア・クインテット!
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第48話 錬金術と植物の(魔術的)品種改良


 若干カオスな状況となったものの、無事に話し合いを終えた俊たち。

 話し合いの結果、建物の奥にある空き部屋(建てる時に念のため余分に作らせた)と裏手にある木などが植えらている場所を使わせてもらうことになった。


 どちらも最初から俊が狙っていたのだが。


 そんなこんなで数日後、俊は例の空き部屋にいた。

 本当ならば、俊はもっと早く使いたかった。空き部屋の整理&掃除など寺田が翌日にはやってくれたおかげで、衛生面も問題ない。


「じゃあ、何で来なかったんだよ?」


 俊の隣にいた寺田が聞いてくる。連絡先まで交換したのに、魔術具を作ると聞いて仲間と3人でウキウキしながら待っていたのに、と。


「……そこは説明したでしょう。魔術具を作るために必要な材料の、そのまた材料を調達に行ってたんですよ。友人4人にも手伝ってもらって」


 絵本に出て来るような魔法とは違うのだ。

 ゼロから作ると言っても、本当の意味でゼロから物作りできるわけではない。放課後の貴重な時間をギリギリまで使って材料をかき集めたのだ。


「そういや、そうだったな。で? 何を取りに行っていたんだ? “調達”って言うぐらいだから、店で売っている物とも違うんだろ?」

「土! 石! ……以上!!」

「………………おい。それ以外は?」

「ふっ、……無い!!」

「ニヒルな笑みで言うことじゃねーだろが! 何が『ふっ』だよ! 土と石って、何の捻りもねえじゃんか! そこら辺で簡単に集まんだろ!」


 魔術具を作るための材料というぐらいだから、きっと自分には想像できないようなモノに違いない! と思っていた分、落胆が激しい。

 子供の遊び風景しか脳裏に浮かばないではないか。


「そんなこと言ったって、オレら子供だって分かってます? 集められるものにも限度がありますって。今回はその分、量でカバーしますけど」

「量? 土や石がたくさんあると何かいいのか?」

「ゲームでいうところの素材のレア度みたいのがありまして、普通に材料を作っただけだと、大したものができないんです。付与された魔術に耐え切れなくて自壊するとか。だから、出来上がった材料を合成・圧縮・調和して品質を上げるんです。いやー良かった良かった。『錬金術』は地味だけど、魔術具の研究の上で欠かせないからって、前世で鍛えまくって。最初の素質のままだったら、絶対間に合わなかったよ」


 『錬金術』

 一般的かつ1番簡単な使い方が、物質Aをそれと同格かワンランク上の物質Bへと変化させることができる魔術である。

 他にも俊が言った、類似性のある物質同士を合成――というより融合する方法から、同じ内容量にも関わらず物質を圧縮する方法、違う物質同士を融合させる際にできてしまう歪みを調和する方法、ようは地球でも昔から言われているような錬金術モドキ(俊、談)の本物バージョンということだ。


 基本的に非戦闘系の魔術であるが、『錬金術』の才能が並外れて高い魔術師になると、身に付けている武具の形を瞬時に変化したり、地面から鋼鉄の壁や柱を錬成したりと、攻撃と防御の両方を1度に可能とする。

 ただし、率先して戦いに出るような『錬金術』の素質が高い者は非常に稀であり、大半は研究者肌の者たちばかりだ。


 俊の前世――アレンの友人にも『錬金術』の天才であり、戦いにおいても才があるので下手な魔術師よりもずっと強い者もいた。

 試合形式でアレンがボコボコにされたのは内緒である。

 まだアレンが経験不足で若かったのもあるが、初めて見る『錬金術』の戦い方にどう対処していいのか考える暇もなかったのだ。


 負けたのが悔しく、『錬金術』の素質を自分の限界まで上げたのが、まさか転生してから役に立つとは俊も思いもしなかったが。


「それで? 一体どんくらい集めたんだ?」

「とりあえず石と土、両方合わせて30トン程」

「……聞き間違いか? 何トンだって」

「だから、おおよそではあるけど30トンぐらいの量ですって」


 想像以上に桁が違った。


「ちょっとまてやああああああああああああああっ!! 30トンって、バカじゃねーのか!? 子供が遊びで持ってくる範囲を超えすぎだろ!」

「遊びじゃなく、大マジメですから」

「大体、30トンって言ったらかなりの量だぞ! どこから持って来たんだ! 山からゴッソリ持って来たんじゃないだろうな!? 山にも所有者はいるし、掘った場所によっては土砂崩れの危険だってあるんだぞ! さっさと教えろ! 場合によってはオレだって動かなくちゃ――」

「山口組が持っていた土地です」

「……パードゥン?」

「山口組が持っていた土地です」


 寺田は止まりかけている思考をフル回転する。

 ――それって、この前ニュースにも出た“ヤのつく人たち”じゃ?


 俊は材料の調達にあたって、大悟・菜々美・音子・椿の4人には河原での石集めをお願いした。俊が指定した条件(大きすぎず小さすぎない、なるべく普通の石)に合致するものを音子の『異空間倉庫』に入れて来てくれと。

 もちろん、一ヶ所で取り過ぎないように注意はした。


 そして俊は1人で大量の土の調達に。

 山にも所有者がいるのは知っているし、土砂崩れの危険性も理解している。自分が欲しているのはトン単位の土なのだ。

 そこら辺からちまちま集めるなど論外。


 そんな時に見ました山口組のニュース。

 何やら組単位で悪事に加担し警察にしょっ引かれたらしいのだが、テレビに映された本部の屋敷の映像を見て、俊は思いついてしまった


 ――庭、随分広いな……土、多そう……


 調べれば、電車で行ける距離にあるではないか。

 その後の俊は早かった。土日休みを利用して電車に乗り込み目的地へ。

 駅からしばらく歩いて、警察が封鎖している山口組の本部に到着。


 小さな体であることも利用して隙を見て敷地内に潜入。

 すぐに『人払いの結界』と『遮音結界』を敷地全体に展開。

 そこからは土木作業員にケンカを売るがごとく、『地属性魔術』で地面から土を掘りだしては『異空間倉庫』に入れるの繰り返し。


 結果、本部のある敷地内の土が半日足らずで大量に消失した。

 ホクホク顔で俊が帰り、結界が無くなった後で敷地内に入った警察の方々はさぞ驚いたことだろう。

 なにせ、土だけが盗まれていたのだから。

 景観? 組長が手入れをしていた松? 土を調達する際に邪魔だから、全部見るも無残なことになっておりますよ?



 ――組長、及び組の皆様、奴は最後にとんでもないものを盗んでいきました。あなた方が住んでいた屋敷の……土です!!



「その年で盗みは良くないぞ、ル〇ン」

「誰がルパ〇だよ。自重無しに行動すると決めたんだ。もう、誰にもオレを止めることはできやしねえ!」


 ――ダメだコイツ。ブレーキ役が必要だ。

 寺田はもうツッコミ疲れていた。


「そんじゃ始めますか。まずは材料作りからだ」


 そう言って俊は何枚かの大きな紙を取り出した。

 見れば魔法陣のようなものが描いてある。


「何だそれ?」

「魔法陣ですよ。正真正銘本物の」


 『魔法陣魔術』

 筆やナイフなどに『魔法陣魔術』用の魔力を流しながら、魔方陣となる文字や記号を含んだ図形を描くことで効果を発揮する魔術。


 様々な種類があり、中には魔法陣の中に入った途端に電撃が襲う『電撃罠エレクトラップ』という罠として使えるものも存在する。

 ただし、突発的な戦闘ではほとんど役に立たないことが多く、素質を持っていても極めようとする魔術師がほぼいないと言っていい魔術だ。


 ちなみに、“魔法陣”という言葉は例によってエヴァーランドの言語を地球の分かりやすい言葉に直したものなのだが、俊としては違う魔術と区別するため“魔法”の部分を違う言葉にしたかった。しかし、いつものメンバーにも相談した結果、日本語で『魔法陣魔術』ということに。


 相談した際、椿が1番推していた。

 「魔法陣は魔法陣だから魔法陣なのよ! ま・ほ・う! この言葉が入っているのがいいわ!」などとグイグイ意見して俊が折れた形である。


「それではこれより! 麻倉俊の何分かクッキング(?)の始まり!」

「アバウトすぎねえか?」

「まずはこの錬金用の魔法陣を部屋のいたる所にセット。その上から紙の外に出ない量の土を載せまーす」

「ふむふむ」

「そして魔力を流す!」


 俊は土が載せられた魔法陣に魔力を込める。すると魔法陣が描かれた紙が淡く光りだし、その光は土を包み込むように広がっていった。


「おおぉおおおおおおお! すげえな! それで、ここからどうなる!?」

「この量からだと……18時間放置して材料の完成だな」

「分単位で収まってね―じゃんか」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「寺田さん酷いですよ! オレたちだって、その『錬金術』っていうの見たかったです! 今日は奢ってください!」

「ただの土が魔術具の材料の特殊な金属になる工程をオレも見たかったのに! 代わりに今日は奢ってください!」

「却下だ、バカ野郎共!!」

「「チッ!」」


 裏庭に移動しようとしたら、栗原と田中に遭遇した俊。

 あれ? そういえばいなかったよな? と疑問に思ったので聞いてみたら、2人の担当する作業が終わらず、来れなかったそう。

 寺田は魔術を見るために高速で作業を終えたようだが。


「それで俊くん、次は裏庭で何をするんだい?」

「簡単に言えば魔法薬作りのために、植物をいくつか育てます。正直オレでも難しい類なのですが、やるしかないんです」

「魔法薬? 薬ってことか?」

「ええ、回復薬や解毒薬を中心に作ろうかと。何とかこの世界で似ている植物を見つけたんで、こちらも『魔法陣魔術』で品種改良を行います」


 実戦において、回復手段があるか無いかは大きい。

 『回復魔術』の使い手は全体的に見ると少ないので、魔術効果のある薬品による回復手段の確保は重要だ。


 材料や製法の関係から大量生産することはできないが、上級の回復薬ともなれば、瞬時に傷を癒すこともできる。

 低級の回復薬は効果が低いがその分安価である程度なら量を揃えられるので、お金を溜めれば平民でも手が届く。


 今回使用するのも『魔法陣魔術』だ。まずは植物を魔草にしなければいけない。そこからさらに植物を急成長させるため、別の魔術を。品種改良のために、また別の魔術を。そんなことを気が遠くなるほど繰り返してやっと成功するかどうか。


 地球の植物や果物・野菜を魔術を使って品種改良するのは俊とて初めての試みだ。理論上は可能だとしても、あくまで理論。

 実際にしてみなければ分からないことの方が多い。


 だが、それでも俊はやってみせる。

 ヒーロー活動をするに当たって、自分がいない状況というのはありえる。そんな時にもしも・・・があってはならないのだから。

 

 俊に土を奪われ庭をめちゃくちゃにされた組長さんは、警察の人から話を聞き、写真を見て、白目をむいて気絶しました。

 俊からしたら、本当に悪いことをした集団だったので慈悲の欠片もありません。

 裏庭はブルーシートで見えないようにしたうえで、簡易の結界も施しています。ついでに周囲の安全も確保。

 

 次回、『修行と準備の日々』


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