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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第3章 結成! マギア・クインテット!
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第43話 UNKNOWN(アンノウン)


 それ・・がエヴァーランドで最初に確認されたのは、前世の俊――アレンが生まれる何十年も前のことであった。


 事の始まりはアレンの生まれ故郷レイアラース王国の隣国、そこにある辺境の村付近で通常とは異なる魔獣の目撃例が出たこと。


 その辺境の村周辺は強い魔獣がおらず、むしろ食用に適しているとさえ言えるウサギのような姿の魔獣が生息していた。

 この魔獣はかなり種類の少ない草食の魔獣で、肉食でないためこちらから攻撃しなければ襲ってこない性質だった。

 例え襲ってきても、慣れてさえいれば特別な訓練を受けていない人間でも十分対処ができるほどだ。


 しかし、ある日のこと。

 いつものように件の魔獣を狩りに出かけた村人は、森へと入った途端にうっすらと寒気がしたという。

 森の異常にも気が付いた。

 普段と違い、やけに静かだったのだ。


 そして、村人は出会うことになる。


 狂暴な顔つきとなり、角が生えた魔獣と。


 その魔獣は目が合った瞬間に襲ってきたという。突然の事態に動揺した村人はいつも通りの力を出し切ることもできずに負傷。

 命からがら村へと帰還した。


 すぐに村人の中で狩りに秀でた者たちが集まり、魔獣の討伐に向かった。

 幸いにも角が生え狂暴になっているとはいえ、今まで1人あたり何十匹と狩っている魔獣である。多少手こずったものの無事討伐された。


 しかし、討伐直後に奇妙なことが起こる。

 死んだ魔獣の身体から黒い煙のような物体が出て来たのだ。


 村人たちは気味悪がって煙に近づかないでいると、煙はゆらゆらと揺れながら森の奥へと姿を消したという。

 さらに討伐した魔獣を改めて見れば、先程まであった角が無くなっていたらしい。それこそ、夢か幻のように……


 こうして辺境の村で起こった奇妙な出来事は解決した。


 ……だが、


 それは、世界中で起こることの序章でしかなかった。


 それからというもの、世界各地で不可解な出来事が増え始めたのだ。



 例えば、樹齢1000年の大木が突如として魔獣となる事件。

 魔獣名『浸食森林の長』。

 植物系の魔獣はいるにはいるが、被害の規模が段違いだった。



 元々森の深い所にあった大木で、滅多に人が寄り付かなかったのも原因ではあるが、徐々にその森が『浸食森林の長』のテリトリーになってしまったのだ。


 人々が気付いた時にはすでに遅し。

 森全体に植物系魔獣が蔓延り、『浸食森林の長』を討伐しようにも森全体が天然の迷路、かつ罠だらけという鬼畜ぶり。

 さらに最悪なことに、手をこまねいている内に森の範囲が外へ広がり始めたのだ。少しずつではあるが確実に。


 そのせいで2つの村が森に飲み込まれた。

 村人が逃げるだけの時間があった事だけが唯一の救いだ。


 結局、手遅れになる前に『火属性魔術』の使い手をかき集めて、外から森を燃やし尽くす作戦に出ることとなった。


 全てが終わったのは作戦開始から1週間後。

 緑一色だった森の姿はもうどこにも無かった。



 例えば、洞窟の迷宮化。

 こちらの世界で言う所のダンジョンである。

 元々は鉱石などが採れる採掘場だったらしい。



 その日、採掘場に向かった家族の帰りが遅いと、街の役所に人が押し寄せたため何名かの衛兵が様子を見に行った。


 衛兵がそこで見たのは、体長2メートルはあろうかという人型の鋼鉄の塊。そして、すぐ近くで呻き声を上げる作業員と思われる人物。


 隙を見て作業員を救出し、事情を尋ねたところ、いつものように採掘場に入ったが妙に広く・深くなっていた。

 気になって全員である程度調べたのち、さすがに不気味だといったん戻ろうとした時、足元に巨大な穴が開きその場にいた者たちが飲み込まれた。


 そこからはほとんど覚えていないという。

 動ける者たちで何とか助けを呼ぼうと眼前に広がっている謎の通路からの脱出を試みたが、いくつもの罠に鋼鉄で出来た魔獣によって1人、また1人と死んでいき、最後に残った男がやっとの思いで入り口に戻ったと思った瞬間、体に強い衝撃と痛みが走り意識を失った。


 2日後には特別調査隊が結成され、迷宮の調査に乗り出すこととなったが、罠と魔獣の多さに難航。

 さらに迷宮から外に鋼鉄の体を持った未知の魔獣が定期的に出て来るため、無視することもできなかった。


 それからは貴族を含む魔術が使える者数名の犠牲者を出しながら、迷宮の最深部まで到達し、核と思われる玉を破壊。

 全員が出た時点で迷宮が崩壊した。



 例えば、戦場跡地での死者のアンデット化。

 別名、「古戦場の亡者事件」。

 最終的に各国の連合によって解決が為された事件。



 エヴァーランドの歴史は古い。

 魔獣への対策が優先され、各国で連携している今と違い、大昔は国同士での争いが頻繁に行われていた。


 事件が起こった場所は立地の関係から最も多くの戦いが起こり、血が流れ、人が死んでいった戦場であった。

 戦争が終結した後も、長い間死体が放置されたことが原因で悪臭が辺りに漂い、誰も近づかないでいた。


 問題が起こったのは、その戦場跡地から1番近い道を護衛たちと共に進んでいた行商人たちがアンデットに襲われた件だ。


 幸い死者こそ出なかったが、それからというもの武器や鎧などを身に纏ったアンデットの目撃例が多数寄せられることになる。


 当然のことながら、近くにある戦場跡地が怪しいという意見が出る。

 そして調査に向かった者たちが見たのは数えるのもバカらしく思えるアンデットの大軍であった。さらに良く見れば、奥の方に遠くからでも見ただけで「アレはヤバイ」とそう思わせるほどのプレッシャーを撒き散らすアンデットがいたと言う。


 その国は事態を重く見てすぐさま各国へ援軍を要請。

 各国もそれを了承。アンデットの大軍と連合軍の戦いが始まった。

 皮肉だが、かつていくつもの国同士が争った戦場で複数の国が共通の敵を倒そうと協力し合ったのである。


 戦いが終わったのは奥の方にいた異常な強さのアンデットを倒した時。

 当時、各国で最も強いとされる魔術師たちが決死の覚悟で挑んだことで、ようやく倒すに至った。



 先の3つはアレンが生きてた当初、貴族が学ぶ歴史の勉強などでも取り上げられるものだが、それは一部でしかない。

 他にも小さいながら謎の魔獣の出現や、不可解な出来事は100年近くの間に多くあった。中には大事件すぎて・・・・・・語れないものまである。


 そしてこれらの事件に共通することが1つ。

 魔獣と化した大木を倒した時も、迷宮の核を破壊した時も、アンデットの大軍の中にいた特に強力な個体を倒した時も……倒し、破壊したものから、“黒い何か”が出て来たのだ。


 それ・・が一体何なのか? 知るものは誰もいない。

 残っている資料を全て見ても、過去に存在しない。

 何の前触れも無く、突如として現れた。


 分かっていることは、それ・・が生物の狂暴化や無機物の変質化などの説明がつかない未知の能力を有していること。

 大きな事件に関わっているそれ・・ほど、本体と思われる黒い煙の姿形が具体的になっていること。

 そして、魔獣と同じく、人類にとって“敵”であること。


 アレンが生まれる数年前には、この“敵”に対して正式な名称を決めておこうと、全ての国の代表が集まる会談で話し合われた。


 そこで決められたのは、エヴァーランドの言語で「正体不明」「未確認生命体」などを意味する言葉。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「だからオレは、それ・・が前世にいたものと同一の存在であると確信した時、同じ意味合いでこう呼ぶことにした。――『アンノウン』と」


 ――UNKNOWNアンノウン

 英語で「未知の」「不明の」という意味の言葉だ。



 次回、『これからに向けて』


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