表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第3章 結成! マギア・クインテット!
52/73

第39話 猶予


 辺りには風が吹く音しか聞こえなかった。

 よく耳をすませば下校中の子供の声なども聞こえるのだろうが、今の4人にそこまでの余裕は無かった。


 ――どうしてこんなことに……


 示し合わせたわけでも無かったが、4人とも考えたことは同じだった。


 つい数分前までいつものメンバーでいつもの雰囲気だったというのに、気が付いた時には取り返しのつかなくなる1歩手前のような状況だ。


 1分か、それ以上か。

 長い長い沈黙が続く。


「……はあぁ~~~」


 沈黙を破ったのは俊の吐く大きな息。

 自然と視線が俊に集まることになった。


「……3日だ」

「え? 3日……?」

「それって……何の?」


 突然の「3日」発言に戸惑ってしまう4人。


「3日後に、もう1度今の話について聞く。今日は金曜日だ。帰って土曜と日曜を挟んで月曜日の放課後、もう1度ここに集まれ。オマエらが本当にヒーロー活動したいってんなら、その時までに目的と覚悟を決めろ」

「で、でも~……」

「俊、否定的だった。何で?」


 ついさっきまで、さんざん論破されたばかりだ。

 それもぐうの音も出ないほどに。

 てっきり「今後も魔術を教えてもらいたいなら、今の話は忘れろ。金輪際2度とするな」とでも言うと思っていた音子は予想外の言葉が俊の口から出たことで戸惑ってしまう。これでは、今の言い方はまるで……


「目的と覚悟次第で、活動可?」

「……まあ、そうなるな……」

「「「へ?」」」


 音子の問いにまさかの肯定を示した俊。

 大悟・菜々美・椿はマヌケな顔になってしまう。


「オレが軽くキレたのは、何の覚悟も無くフワフワの目的で活動しようとしていたからだ。そりゃあ魔術使ってヒーロー活動を~って時点で呆れもあったけど、それとこれとは別問題って言うかさ……」


 実を言うとまだ少年・少女と言うのも躊躇ためらわれる年齢の子供相手にちょっと言い過ぎたかな~? 感が俊の中であったりする。

 よくよく考えたらオレだけ精神年齢大分違うのに、随分偉そうなこと言ちゃったな~感も少なからずあったりなかったり!


 しかも相手は自分が認めた友人たちだ。

 本気で落ち込ませるのも何か違う気がする。


 そして予想以上に重苦しい空気になってしまい「やっべーっすわ。どうすっぺこの状況?」と心のライフカード片手にうんうん悩んでいた所(碌なカードが1枚も無かった)、ある落としどころ――というか俊の目的・・・・とうまく噛み合いそうな考えを思いついたのだ。

 それは頭の上に電球の明かりがピコンッ! と点くレベル。


「オレもオレで最近悩んでいたことがあったんだけど……。オマエらの言うヒーロー活動を本格的にするんだったら、かなりの近道になりそうなんだよな。渡り船っていうかさ。けど、さっきも言ったように目的も覚悟も無いようじゃ意味がないんだ。オレの目的のこと考えたら、下手すると10年とかそういうレベルで続いてもらわなくちゃ」

「俊くんの目的~?」

「初めて聞いたぞ、そんなの」

「10年続けなきゃいけないかもって……」

「ものすごく大きな事?」


 俊の目的には心当たりは無かったが、時折「世間が……」「いや、それだと間に合わないかも……」「バレないようにするためには……」などと悩むそぶりを見せながら思考が口から洩れているのは知っている。


 その度に「どうしたの?」「何か悩みでも?」と聞いてもはぐらかされてきたのだ。友達である自分たちにも教えてくれなかったのは不満であったが、あまりしつこくするのも違うと思い、深く聞かないことにしていた。


 ――その俊が悩んでいる目的が、自分たちがその場の勢いで言い出したヒーロー活動を本格的にすることで近道になるかもしれない?


「その……目的って何なのよ?」

「言うの無理?」

「今の段階では言えないな。何度も言うが、4人が本気で活動したいと思って目的と覚悟をハッキリさせるなら、オレも自分の目的を話すよ」


 そうじゃなきゃ意味ないからな。と肩をすくめる俊。

 ゴミの化け物との戦いから1年近く悩んでも妙案が出なかったこと。

 それは確かにヒーロー活動をすれば近道になるとは言ったが、だからと言って目的と覚悟をあやふやのままにしていいわけがない。


 なにせ、その2つを持ってヒーロー活動するのであれば、いつかは俊が定めている“敵”との激闘も何度だってあるかもしれない。

 未来のことは確定ではないが、俊を含めたこのメンバーの性格や、最悪の場合・・・・・などを考えれば戦いになる確率は大きい。


 だが、もしヒーロー活動をしないというのであれば、そうならない可能性だって少なからずある。その場合は場合で問題が出てくるが……


「と・に・か・く! 猶予は3日だ! その間に考えろ。もし、4人に納得できる目的と覚悟ができたと分かったら、オマエらの考える数倍は全面協力してやる。自重無しだ。テレビで活躍するヒーローが『ちょ、オマっ!?』って言っちゃうぐらいだ。それぐらいオレも本気になる。じゃ、今日は解散! 明日予定していたの修行は休み! ……オマエらにとって、納得できる答えが見つかることを願うよ」



 実をいうと、5人の中で1番テンパっていたのは俊。

〈ライフカード〉

・よし! 焼き肉食いに行くか!

・オカルト女子が突然乱入してあやふやに

・謎の力で時が戻る

 ……うん、無理。


 次回、『それぞれが思いを巡らせる』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ