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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第3章 結成! マギア・クインテット!
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第36話 最近不良が多い? 世紀末覇者出るよりマシだろ


 ちょっとしたトラブルもあった校外学習から数日。

 自然公園内でスケッチした絵が教室に張り出されていた。


「……うん。普通の範囲、かな?」


 絵を見ながら、小声で頷いているのは俊。

 幼稚園の頃からの課題である“わざと画力を下げる作業”は今も続いていた。とはいえ、これから徐々に元の画力に戻す予定である。

 それも、本来の予定より早く。

 小学生になれば個性も強く出てくるものだし、絵がうまくても大丈夫だよね? と心配気味ながらも肩の荷が1つ減るのは嬉しかった。

 何より、身近に例外2人がいるのだから……


「菜々美ちゃんすごーい!」

「これどうやって描いたの?」

「えへへ~」


 クラスメイトの何人かに囲まれているのは菜々美。

 描いてある絵はリスと小鳥なのだが、小学2年生とは思えないほどうまかった。俊や大悟からすれば見慣れたものだが、こうしてクラスメイトなら誰でも見られるという状況で菜々美の絵を初めて見る子供たちからすれば、明らかに群を抜いているのだから。

 ……動物限定ではあるが。


 そして、明らかに格が違うのも……


「……これ、本当にエンピツ?」

「大人の人が描いたわけじゃないよな?」

「私ちょっと廊下ですれ違った先生同士の話を聞いたんだけどさ、前に高校で美術の授業を担当したことがある先生が『是非直接会って話がしたい!』って音子ちゃんに会いたがっているみたいなんだよねー」

「……普通に描いただけ」


これのどこが普通だ!? という言葉を何とか飲み込んだ俊。


 音子が描いたのは風景なのだが……異常にうまい。

 優れた才能の持ち主は鉛筆だけでもリアルな絵を描くことができる。それは俊もテレビで紹介されたのを見て理解しているつもりであった。あったのだが……やはり実際に見ると少々引いてしまうレベルのうまさだ。


「こんなんがいるんだから、今すぐ元の画力に戻しても誰も気にしないかな? ……うん。ちょっと落ち着こうかオレ」


 少々、普通とは一体? と混乱し始める俊であった。




「そういえば、直樹くんと優香ちゃんは最近どうなの?」


 昼休み。椿がふと思い出したように俊へ質問した。

 俊の双子の弟と妹にはいつものメンバーはすでに会っており、その可愛さに4人ともノックダウンしていた。


 音子には弟の良太がいるが1つしか年が違わず、大悟・菜々美・椿の3人は1人っ子だ。そのため、俊の家に行くと陽子と共に出迎えてくれる双子の赤ちゃんのことを気にかけている。赤ちゃんの可愛さに勝てる者などそうそういないだろう。


 なお、健康面については全員心配していない。

 双子が生まれる前から俊がやらかした話をすでに聞いているからだ。「一生病気にかかる心配はないよ」とサムズアップして言う俊に、良くやったと言うべきか、何やっとるねんと言うべきか非常に迷ったのは4人だけの秘密である。


 大悟に関しては飴細工を扱うかのように接している。

 向かいの家に住んでいるのでいつでも会えるのだが、双子に会う前、瞳孔が開いた状態の俊に「触れる時、力加減間違えて痛がらせてみろよ? 貴様とて容赦しないぞ?」などと言われたら高速で首を縦に振るしかない。

 さらに言えば、その時にガッチリ掴まれた肩から聞こえたらいけないような音が鳴ったのも理由だ。マジで痛かった!


「いやー、うちの直樹も優香も賢くてなー。夜泣きも滅多にしないし、この前ハイハイできるようになったんだぞ♪ こりゃあ、2本の足で立って歩くのもそう遠くないんじゃないかな? ……ヤベ、想像したら鼻血出そう」


 相変わらずの誰やねんオマエ状態の俊!

 初期の頃より兄バカが加速していた! 話を聞いている4人の表情は複雑だ! だって顔がデレデレしすぎて見ていられないもん!!


 音子はポケットに入れてあるテッシュをスタンバイしていた。いつぞやの婦警候補のお姉さんのように、本当に鼻血を出しそうな雰囲気だから。

 事情聴取で初めて会ってからの1年間で2、3回偶然外で会う機会があったのだが、その度に鼻を抑える仕草から入るのだからシャレにならない。あの殺人現場のような状況を繰り返すわけにはいかないのだ。

 そのため、音子のポケットには常にテッシュが2つ分ある。


 その後、数分間に渡って双子の自慢話もとい溺愛話を聞かされてげんなりしてきた頃、近くから大きなため息が聞こえてきた。

 俊たちが振り向けば、別の男子グループが。


「どうしたんだよ? でかいため息して?」

「また母ちゃんに怒られたのか?」

「違うよ。昨日自転車で遊びに行ったら、不良に絡まれたんだよ。たまたま通りかかった警察の人のおかげで助かったけど……」

「あー、そういえばボクのお姉ちゃんもチャラチャラした人たちに“なんぱ”されたとか言っていたなー。すごい迷惑だったって」


 先日も自然公園で別のクラスの子供が絡まれていたのに、また不良の問題かとあきれる俊。前世であればそんな奴がいても、物理的に解決してくれる人がかなり多かったが(親友であったリウスにとっては日常的で愚痴に付き合わされたことも)、こっちでは法律やらがあるうえ、暴力で解決すること自体、例え正当性があっても周りの反応は良くないなんてことが多い。

 エヴァーランドとは違い、魔獣もおらず生活も豊か。そんな平和な日本でどうこう言うのもアレだが……


「婦警候補のお姉さんから聞いた。最近、不良やガラの悪い人、多いって」

「そういえば……うちの神社に来るおじいちゃんおばあちゃんなんかも、そんなことこぼしてたわね。孫が絡まれないか心配だって」

「お母さんも注意してた~」

「ふーん」

「不良やガラの悪い人、ね……」


 言うほど恐いか? と思う俊。

 エヴァーランドで飢餓や戦争などがあった時期などは、日本の不良やチンピラ・ヤのつく人なんか可愛く見えるような人も溢れていたのだ。

 そう、地球で言う所の世紀末覇者。


 バイクではなく馬に乗っているし、モヒカンヘヤーでもないけど、どこでそんな服手に入れたの? もしかしなくても自前? と聞きたくなるようなトゲトゲ装備などを高確率で着ているのだ。奴らにとって通る道にいる人物全てが敵。善も悪も関係ねえ! ヒャッハー! と、そんなのだ。


 前世、世界中を回ってたアレンが初めて目にした時は2度見してしまった。「え? 何アレ? 本当に同じ人類?」とツッコむレベル。

 進路上にいたためか、出会って5秒で突っ込んで来たので返り討ちにしたが。


 「ブベラハッ!」とか「アベシッ!」とか言いながら吹き飛ぶ世紀末覇者が思った以上におもしろく、全バリエーションを聞きたいがためにハッちゃけたら、最後に残ったのはボロ雑巾のようになった(元)世紀末覇者だった人たち。

 アレンの中では黒歴史になりましたとさ。


 そんな経験をしたからか、どうにも神妙な雰囲気のみんなに同調できずにいた。


 菜々美の(動物限定で)画力は高校の美術部レベル。音子の画力はプロ。

 マジメな話、トゲトゲ装備ってどうなんだろ? 位置によっては自分に刺さりそうだけど……


 次回、不良やガラの悪い人の話を聞いて……


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