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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第2章 あなたは魔法を信じますか?
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閑話 麻倉俊 視点:筆舌に尽くし難し美味を①

 ぶっちゃけ、俊による食レポ。

 5歳の誕生日まで遡ります。


 その日はオレにとって特別な日だった。

 今日でこの世界に生を受けてからちょうど5年が経ったのだ。

 そう、つまり……


「俊、5歳のお誕生日おめでとう~♪」

「あはは、ありがとう母さん」


 つまり! オレの5歳の誕生日だ!!


 いやー、長かった。

 本当に長かったなー。前世の記憶が蘇ってから約2年、いろんなことがあった。エヴァーランドでも子供が5歳まで健康に育ったらお祝いするモノだったからな。こっちの世界で生きることを決めたオレにとっても特別意味のある日だ。


 七五三? 後2年も待てるか。


 そして何より楽しみなのが――


「それじゃあ、俊お楽しみのバースデーケーキの登場~」

「いよっ! 待ってました!」


 うほー! これがケーキか! デカ!

 無意識に拍手でそれを出迎えていたよ。

 テレビや本で見た時から食べて見たかったんだよなー。

 オレにとって5歳の誕生日はもう1つ特別なことで、これまで健康のために控えさせられていた甘いモノや脂っこいモノが解禁されるのだ!


 ホント前世の記憶が蘇ってから何が辛かったって、食べ物!

 オレ、意外とグルメなんだよ?

 世界中を回った時も、その土地特有のモノを食べるのが楽しみだったし。

 お酒だって好きなのになー。うん。無理ですね。未成年だし。幼児に飲ませるなんてもってのほか。頭では分かっているんだよ。


 けどさ? 消化にいいものばかり1年以上食べるのは堪えるんだ……。たまたま母さんと出かけた時に見つけたレストランのメニューの食品サンプル? ってのをガラス越しに見た時なんて、いつの間にかよだれ垂らしてガラスに張り付いていたからな。

 後で冷静になったら、恥ずかしくなったよ。


 だが! そんな辛い日々とも今日でおさらば!

 今日から量さえ気を付ければ肉でもケーキでも自由に食べられる!

 マ〇クにケンタ〇キーなどの人気店の味! 寿司、天ぷら、スキヤキ、唐揚げ、とんかつ、コンソメスープ、ビーフシチュー、牛丼、海鮮丼、親子丼、ナポリタン、ボンゴレ、ペペロンチーノ、ワンタン、エビチリ、チャーハン! その他etc.……!!


 日本は素晴らしい国だ。そう再認識した。

 誕生日が近づくにつれて食べ物関係の情報収集に力を入れたが、1つの国で当たり前のように世界中の食べ物が自由に食べれるなんて。

 『日本人の食へのこだわりは異常レベル』なんてことテレビに出演していた外国の人が呆れた表情で言っていたが、まさにその通り。


 しかし、同時に感謝する。

 2度目の生を受けたのが日本で良かったと!


「し、俊? 大丈夫……?」

「ハッ! な、何でもないよ!」


 いかんいかん、トリップしてた。

 まずは目の前にある切り分けられた|宝(ケ―キ)を食べねば。


 母さん曰く「せっかくだし」ということで、少しお高めのケーキらしい。真っ白なホイップクリームと宝石のようにツヤのあるイチゴ(水あめを塗ってあるらしい)。飾り気は最小限にしたことで、逆に味への期待を促す憎い演出。


「いただきます」


 勝負へ望む言葉は一言で十分。

 いざいかん! 未知との出会いへ!


 ゆっくりとフォークを入れて一口大に切る。しっかりとしているはずなのにフワフワのスポンジ。当然中央に挟まれているイチゴのも忘れずに。


 そして、ゆっくり口の中へ――入れた。



――カッッッ!!



 ……目と口から光線が出た。

 いや、本当に出たわけじゃないけど。そんなことになったら家中大変なことになってしまう。特に母さんへのフォローが大変だ。

 だが、そう思ってしまう程の衝撃だ……!


「う、う……」

「う?」


 そう、これは、


「ウーーーマーーーイーーーぞーーーーー!!」


 何じゃこりゃあああああああああああ!!

 口の中が、正確には舌がビックバンを起こしたんじゃないかって思うほどの衝撃! 美味しさが電流となって脳を駆け巡る!


 まず感じるのはスポンジの柔らかさとほのかな甘み。

 しかし、ひとたび噛めば次に来るのはホイップクリームの濃厚かつ繊細な甘さ! 

 追い打ちをかけるのはイチゴが持つ微かな酸味!

 それらが見事にベストマッチして口の中を蹂躙していく。

 最初に予想していたうまさなど嘲笑うかのように!


 前世で食べたどの甘味よりおいしい……

 正直舐めていた。まさかこれほどのレベルとは。

 うん。この世界で生きる理由、増えたな。


 こうして、オレは食へのこだわりがより一層強くなった。

 突然叫んで、再びトリップしたオレを心配する母さんの声をBGMにしながら。


 エヴァーランドの食文化は最低レベルではありませんが、それほど進んでいるわけでもありません。

 俊が食べたケーキは、普通のバースデーケーキの1.5倍ぐらいの値段。

 それでも、俊にとっては人生初のおいしさでした。


 次回、『登場人物紹介①』


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