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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第2章 あなたは魔法を信じますか?
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第31話 本当は信じていた(side:火之浦椿)


 自分で言っといてアレだけど、何から言えばいいのか……

 えーと、いつの話だったかしら?

 具体的に何歳の頃だったかは覚えてないわね。

 たまたまテレビで見た魔法少女ものアニメを好きになったの。



『アタシの魔法で、悪者を懲らしめてあげるんだから!』

『何を~! この悪の幹部、ざんぎゃーくんに勝てると思うてか!』

『正義は負けないわ! この魔法少女キララが相手よ! 汚物は消毒だ!』



 本当に小さな子供向けのアニメだったから、全然難しい内容じゃなかったんだけど。カワイイ格好をした魔法少女が毎回悪さをする、いかにも悪者だ! って姿の怪人を不思議な魔法の力で懲らしめるって物語だったはずよ。



「キララちゃんカワイイ~。まほうすご~い」



 好きになるのに理由らしい理由なんて無かったわ。

 気付いたら好きになってたんだから、説明のしようがないじゃない。


 え? 言葉遣いが随分違う?

 アタシだって最初から今みたいなしゃべり方じゃないわよ!

 自分で言うのもなんだけど、昔はもっと可愛げがあったのよ!



「椿は将来、何になりたいのかな~?」

「えっと~、まほう少女! キララちゃんみたいになりたい!」

「神社の娘なんだし、そこは巫女さんって言ってほしかったかしら……」



 今思うとお母さん、相当複雑だったんでしょうね。

 神社の娘が将来、魔法少女になりたいって……

 魔法少女って、基本的に『和』の要素皆無だし。


 でも仕方ないじゃない?

 テレビの影響もあったけど、アタシの家、火之浦家ってずっと前はかなり身分が高かっただけじゃなくて、ご先祖様は本物の魔法を使うことができたって話が伝わっているし……。魔法って存在に引かれる環境だったのよ。


 ……魔法少女になりたい、はどうかと思うけど。


 まあ、うちの親は両方とも神社の娘だからって変に考え方を縛る人じゃなかったから、しばらくしたらアニメに出て来た魔法のステッキも買ってくれたの。

 あ、もちろん本物じゃなくて、おもちゃのよ?



「お父さんありがとう! キララちゃんみたい!」

「椿が喜んでくれたなら、ボクも嬉しいよ」

「チンクル、チンクル~♪ おぶつはしょうどくだ~♪」

「おーい、母さんやーい。テレビ局へのクレームって、どうすればいいんだっけ? ボクらの愛娘がスゴイ物騒な言葉を覚えちゃったんだけど!?」



 それからは1日中魔法少女ごっこしても飽きなかったわね。

 ちょ、何でアンタたちそんな生暖かい目で見るのよ!

 幼稚園に入ったばかりぐらいの時なのよ! アンタたち4人だって覚えくらいあるでしょう!?


 は? 麻倉は魔術の扱い方の練習と情報収集? 坂本は親から武術の訓練? 小池は動物と遊んでた? 藤野崎はアリや植物の観察ばっか?


 いやいや、方向は違うけどアニメとか特撮番組の影響受けて、自分も~ってあるでしょ? あるわよね? こら、何で4人とも目を逸らすのよ!?



「まほう、すっごいなー。ほんものもいつか見たいなー。ごせんぞさまみたいに、使えるようになりたいなー」



 ハアハア、話を戻すわよ? 戻すからね!

 そんなこんなで、魔法への憧れみたいのが日々強まっていったわ。自然と、魔法は現実にもあるんだって信じるようにもなっていったの。

 さっき言った家に伝わる話もあってね。


 お父さんもお母さんも、その話をしても「きっと、いつか見れるよ」とか「椿なら、本物の魔法少女になれるわ」とか言っていたから、さらに信じるようになっていたの。今思えば、子供の夢を壊さないように気を使っていただけなのに。


 本当、バカみたいな話よね……

 良くも悪くも心から魔法はあるんだって信じ続けたから、余計にその時、ショックを受けたのよ。否定されて、バカにされて……



「まほーなんて、あるわけないじゃん! アハハハ!」



 きっかけは本当に些細なものだったわ。

 アタシの通ってた幼稚園で、たまたま話の流れから「魔法少女になりたい」って、「魔法はあるんだ」って言ったら、近くにいた男の子が突っ掛かって来てね。

 そこで簡単に鬱陶しい奴をあしらえるようなら良かったんだけど、当時のアタシは大好きだった魔法のこと否定されたのが悔しくて……



「そんなことない! まほうはあるもん!」



 まあ、そっからはアンタたちでも想像できる通りね。

 そんな風に感情的になったもんだから、向こうも面白がって。

 しかも最悪なことに、周りにいた子たちも魔法とかの存在信じていなくて、最初に煽った男の子の側についたのよ。


 そっからは孤立しちゃってね……

 幼稚園の中にアタシの居場所なんて無くなっていたわ。

 今でも思い出すわよ。露骨にこっちのこと無視したり、ニヤニヤして離れた所からみたり、仲の良かった子が近づいてこなくなったり。



「グズッ……まほうなんて、しんじたから」



 どのくらいの期間がそうだったのかは忘れちゃったけど、もうこれでもかってぐらいふさぎ込んじゃって。

 あれだけ好きだった魔法のことが、段々嫌になってきたのよ。

 宝物だった魔法のステッキもどっかにやっちゃったし。

 見た瞬間に嫌な気持ちがあふれて、投げ捨てたのは覚えてるんだけどねー。


 それで気が付いた時には、魔法なんかあるわけない! って自分で言うようになってたわ。今、この時だから分かるけどさ、そういう風に自分に言い聞かせなきゃ耐えられなかったのかもしれないわね。……だってそうでしょ? 否定されて、バカにされて、辛い思いをして……それでも、心の底ではまだ魔法を信じてる自分がいるんだもの。


 そして、小学校に入っても変わらなくて、魔法なんかないって言って……昨日のアレでしょ? 目の前のアンタたち3人でしょ? 自分でも結局何をどう言いたいか分かんなくてね。とりあえず魔法を信じなくなった理由を言ってみたわけ。


 どう? 本物の魔術師からしたら、アタシってバカ見たいでしょ?

 こんな理由で本当に実在していた魔法を――魔術を否定していたんだから。

 それもアンタたちがいる教室の中で。

 ……笑っちゃうわよね。



 次回、『魔法はあったよ』


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