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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第2章 あなたは魔法を信じますか?
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第28話 VSゴミの化け物 前編

 この3日ほど体調崩していました。

 遅れて申し訳ない。

 次回はなるべく早くに。


 時間は俊たちが駆けつける数分前に遡る。


 夕食を食べ終えた俊はいつもなら母親とお風呂に入っている時間帯に、しかし今日はリビングでテレビを見ながら双子の姉弟と戯れていた。


「ほれほれ~くすむり攻撃だぞ~」

「「キャッ♪ キャッ♪」」


 非常にだらしない顔で! それほど双子はカワイイのだ!

 今の俊など、友人たちにはとてもお見せできません!


「俊、まだお風呂入らないの? お母さんもう準備できてるのに……。そろそろ入らないと寝るの遅くなるわよ?」

「う~ん、気になることあるからもう少しだけ」


 俊としては現段階で長時間自由に動くことができなくなる風呂に入るわけにはいかなかった。それは今日同じクラスの何人かで行われる肝試しにどうにも嫌な予感を覚えたから。事前に事情を説明しておいた大悟と菜々美の2人も、今の自分と同じようにすぐ行動できるようにしているはずだ。

 少なくとも音子から無事の知らせが来るまではこうして待つしかない。


 クラスの子供たちが家からこっそり抜け出して集合する地点の手前でも連絡するよう音子には言っており、実際に連絡も来た。

 本当に一言だけ「今、集合場所の手前。また後で」という何とも簡単すぎるものであったが……


――~~~♪ ~~~♪ ~♪ ~♪


 その時、リビングに置いてあった携帯から日曜の朝を守る某仮面なヒーローの主題歌が。俊が設定した着信音だ。

 急いで確認すると、予想通り相手は音子。


 かまってほしそうに服を引っ張る双子を引きはがして(めちゃくちゃ罪悪感溢れる表情で)、通話ボタンを押す。


「音子か? で、どうだった?」

『もしもし俊? ミックスピザ1枚。チーズ多めで』

「うちはピザ屋じゃねえ!!」


 俊、渾身のツッコミ! だって意味不明だもの!

 陽子と双子は3人揃ってビクッ!


『ゴメン。実は――っ! 逃げて……みんな早く逃げて!! 走って!!』

「音子!?」


 聞いたこともない音子の焦った声が聞こえてきたと思ったら、次に聞こえてきたのは複数の子供の悲鳴と、とんでもない衝撃音だった。


「おい! 音子! 一体どうした!?」

『ケホケホ。……単刀直入に言うと、絶賛ピンチ中。ゴミでできた化け物に襲われてる。冗談抜きで逃げなきゃ死んじゃう』

「……とにかく逃げろ。すぐに行く」

『うん、分かった。とにかく逃げる。じゃ』


 音子からの電話が切れた瞬間すかさず大悟に、その次に菜々美へと連絡を取り、それが終わると玄関に直行。用意しておいたクツを履く。


「ちょ、ちょっと俊! 一体どうしたっていうのよ!? 最初のは少し前に仲良くなったっていう音子ちゃんって子からなんでしょ? その後すぐに大悟くんや菜々美ちゃんにも連絡してたし、何があったって言うの?」


 陽子としても気が気じゃない。

 今まで見たこともないほど息子の顔が真剣そのものだったのだ。電話中の会話の内容はほとんど分からないが、電話相手に何かが起こったのは間違いない。

 そんなことのすぐ後、息子は何をするつもりか……


「……ゴメン母さん。後で怒られる」


 それだけ言うと、バンッ! と玄関のドアを開けて外に出る俊。

 慌てて陽子が追いかければ、競輪選手もビックリなスピードで自転車に乗って遠ざかっていくところだった。


 俊としては後ろ髪を引かれる思いだが、ここで止まるわけにもいかない。『身体強化』を発動し、車を追い抜き、赤信号も無視して(事故に繋がらないよう注意)、1秒でも早く音子たちのいるゴミ処理場へと向かう。

 後から追いついてくるであろう大悟と菜々美にも期待しているが、先に自分が到着するだけでも違うかもしれない。うまく逃げられればそれでいいが、何事も楽観視することはできない。とにかく俊は非常識な速さの自転車で、誰よりも早く音子の元へ向かう。


 ……もっと非常識な2人がいることも予想できず。




「ワリィ母さん! オレ、トイレ行くわ!」

「え? あ、うん……」


 俊からの連絡ですぐに行動した大悟は、そう言って母親である千秋の側から離れると、そのままトイレに――は行かず、自分の部屋へと戻って窓を開け、事前に用意しておいたクツを足に付ける。


「待ってろよ藤野崎。『身体強化』!」


 発動させた魔術によって、大悟の身体能力が急上昇する。

 そのまま窓から隣の家の屋根に大ジャンプ! そして、着地。


「……確か、ゴミ処理場のあるのはあの方向だな。ちんたらしてても遅れちまう。緊急事態だし……一直線のショートカットだ!」


 再び大ジャンプ! 離れた所にある家の屋根に着地したと思ったら、さらにジャンプ! ジャンプ! ジャンプ!


 大悟の言うショートカットは、一直線に建物の上を飛び跳ねながらゴミ処理場近くの建物がほとんどない場所まで行くというものだった。

 人気の無い道に出た後は目的地まで走ればいい。


 このようなこと現時点の俊でも身体への負荷が大きすぎてできないが、『強化魔術』の素質が突出して高い大悟だからこそ、小学1年生の身体でも負担を掛けることなく長時間発動できるのだ。俊のスパルタ修行のお陰でもある。


 この夜、建物の上を軽々と飛びながら渡る謎の影が多数の人に目撃され、この辺りの新たな7不思議になるのだが、それは別の話。




「お母さ~ん、お父さ~ん。私部屋に戻るね~」

「それはいいけど、さっきの電話はなあに?」

「俊くんか、大悟くんだったんじゃないのか?」

「う~ん……秘密~」


 そう言ってちゃっちゃとリビングから2階に上がる菜々美。後ろから両親が来てないことを確認すると、廊下からベランダへと出る。クツも準備済みだ。


「『召喚』! ポチ~!」

「わうーーーん」

「お母さんとお父さんには悪いけど~、音子ちゃんのこと助けたいから~、仕方ないよね~。いくよポチ~! 発動! 『巨大化』~!」


 菜々美が発動した新たな魔術によって従魔であるポチに変化が起こる。

 ポチは普通の柴犬と同じ大きさだったが、それが魔術による光と共にどんどん大きくなっていく。光が収まった時、ポチの大きさは菜々美を乗せても問題ないほどの、ライオンと同程度の大きさへと変わっていた。


 『巨大化』。

 それは従魔であるポチとタマを生み出した後の修行によって、新たに身に付けた魔術である。その名の通り、自身の使役する従魔1体の身体を巨大にするというものだ。ただし扱いが難しく、今の菜々美には中型犬サイズのポチをライオンサイズにするので精一杯だ。

 俊の予想では、最終的には怪獣大決戦になるレベルの大きさにもできるだろうとのことだが、菜々美としてはそんな日は来ないでほしい。


「それじゃ行くよ~! GO~! GO~!」

「わん!」


 ポチの背中にしがみついた菜々美が指示を出す。

 指示を受けたポチは、その巨体からは想像できないほどの速さで菜々美を背に乗せたまま走り出す。例によって車より速い。ショートカットのために家や川だって飛び越えてしまう。目的地のゴミ処理場まで一直線だ。


 この夜、巨大な犬が風のように走り去るのを多数の人が目撃し、この辺りの新たな7不思議に組み込まれるようになるのは別の話。




 で、自転車のタイヤが擦り減るほど爆走してゴミ処理場へと辿り着いた俊が見たのは……


「へへ、大差はねえが、オマエがビリだぜ俊」

「えへへ~。俊くんに勝った~」


 自分より後で家から出て来たはずの大悟と菜々美だった。


「何でオマエらが先に到着してんの!?」


 俊、本日2度目の渾身のツッコミ!

 理由を問い詰めたくはあったが、ゴミ処理場の敷地内から大きな音が聞こえたため、急いで中へと入っていった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 そして現在に至る。


「あの電話の後、逃げ切ってくれれば安心できたんだけど……その様子じゃ、本当にギリギリだったらしいな。急いで駆けつけて良かったよ」

「俊が……すぐ来るって……言ってくれたから。はっきりと……言ってくれたから……がんばれた。……来てくれて……あり、がとう」

「どういたしまして」


 音子のがんばりは無駄ではなかった。

 こうして来てくれたというだけで、さっきまで感じていた恐怖や焦り、そして不安といった感情が自分の中から消えているのを感じた。


「あのー、そろそろアタシにも説明してほしいんだけど?」


 蚊帳の外になっていた椿さん。俊と音子の間だけで会話が為されているので、いい加減事情の説明がほしかったようだ。


「おい俊! 気失ってる奴が何人もいんぞ!」

「はわわわ。たいへんたいへん~」

「え!? 坂本に小池!? アンタたちも!?」


 俊が椿にどう説明したものかと悩んでいると、大悟と菜々美が戻って来た。そこで周囲が死屍累々の状態(死んではいません)だったのを思い出し、ゴミの化け物が動きを止めてる間に子供たちを回収して、音子と椿の所へ避難させることに。


「菜々美。オマエはコイツらの側にいてくれ。離れていても従魔には問題なく指示できんだろ? 1ヶ所にいてもらった方がこっちも守りやすい」

「了解~」

「えと、あの……」

「悪いな火之浦。そろそろ動き出しそうなんで後でな」


 俊が言った直後だった。

 ゴミの化け物の目が再び光り、起き上がる。


『OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!』


 表情(?)に変化はないが、先程までと違って全体のゴミが大きく流動していることからも、何となく雰囲気から怒っていることだけは伝わってくる。

 さらに、ゴミの化け物の近くにあったゴミの一部が動き出し、俊が攻撃した胴体部分のゴミが本体から分離して動き出したゴミが修復するようにくっつく。


「あ~これまた、めんどくさい種類の相手だな。あの化け物の体が完全に無機物なうえに修復する物がそこら中にあるか……。オレの今の実力とあの2人の体力・魔力のこと考えると、短期決戦しかないか。しかも後ろには気絶した子供多数(完全なお荷物)。こりゃ厳しいわ」


 少々ネガティブな発言とは裏腹に好戦的な笑みを浮かべる俊。

 気付けば、大悟とポチ・タマがそれぞれ隣にいる。大悟はともかくとして、2匹の従魔までも「やってやるぜ!」みたいな雰囲気だ。


「どっちみちコイツを何とかしなきゃ後ろの奴ら逃がすこともできないしな。……大悟、菜々美、それにポチとタマ……気合い入れて勝負するぞ!」

「おっしゃー! 腕がなるぜ!」

「えいえい、お~!」

「わうーん!」

「にゃーん!」


 ついに本格的な戦いが始まる。


 おかしい。プロットならもう戦い始めてたはずなのに・・・


 次回、『VSゴミの化け物 後編』


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