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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第2章 あなたは魔法を信じますか?
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第24話 魔法を信じる者


「何……あれ……?」


 1ヶ月にも及ぶ修行? によって、ついに俊の追跡――もといストーキングに成功した音子が見たのは、信じられない光景だった。


 ――訳が分からない。

 ――信じられない。


 最初に抱いた素直な感想がそれだ。


 ――ありえない……

 菜々美の周囲の何も無い空間から突如、犬と猫が現れたことも。

 菜々美とその2匹が普通に会話をしていたことも。

 2匹が普通なら無理なアクロバティックな動きで芸を始めたことも。

 芸の最中に突然(実際は菜々美が密かに指示)俊にぶつかりにいって、すぐ側を流れる川に落としたことも。


 ――ありえない……

 大悟が小学1年生では普通持てそうにない重さの石を両手に持って、軽く準備運動のようなことをしていたことも。

 自分よりずっと大きな岩を持ち上げて見せたことも。

 その岩に俊が乗り、大悟からの抗議を聞こえているはずなのに無視して「オレの体重なんて誤差だから」と笑っているその鬼畜さも。

 最後の方で「いい加減にしやがれぇえええええ!!」と、大悟が上に座っていた俊ごと岩を川に放り投げたことも。


 ――ありえない……!

 俊が3人分の自転車を謎の空間の中にしまったことも。

 犬と猫にぶつけられ、川に落ちたことでずぶぬれ状態になった俊が枯れ木を集めたと思ったら、ライターも何も使わずに火を起こしたことも。

 大きな岩ごと川に投げ込まれたにも関わらず、無傷だったことも。

 川から上がり「せっかく乾いたのに……」と、気にする所がズレてることも。


 訳が分からなかった。信じられなかった。ありえなかった。

 だが……本当のことだ。


 目の前の光景は自分の見間違えなどではない。

 正真正銘現実に起きていることなのだ。

 これが、これこそが、最後のピース!

 自分の観察でも分からなかった、3人の謎!


 ふと思い出すのは、約1ヶ月前の教室でのこと。

 魔法などの超常的な力が存在するか否かの議論。

 その答えは目線の先にあった。


「魔法は……実在する……!」


 音子の存在が俊たちにバレたのは、そのすぐ後だ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――と、いうこと」

「「「長い……」」」


 長かった。

 音子の話は非常に長かった。

 それこそ途中で、帰宅が遅くなりそうだと、それぞれ携帯で家族に連絡することにしたぐらい音子の話は時間が掛かったのである。


 俊・大悟・菜々美の3人は音子の存在に気付いた後、事情の説明を可能な限り詳しくするよう音子に求めたのだが、それがいけなかった。

 音子は元から無口で、口から出る説明の一つ一つが短いために、全部を聞き終わる頃には日が傾いてきたのだ。


 夕焼けの中、カラスの鳴き声がやけに響いて聞こえてきた頃になってくると、3人とも説明を求めたことに激しく後悔した。

 俊など「『カー』だの『アホー』だのうるせーわ! 静かにせんかー!」と、カラスに八つ当たりしたほどだ。


 それこそ、カラスの勝手だろうに……


 一通り話を聞き終わったところで大悟には疑問が。


「なあ俊、確かこの林を囲うようにいろいろ結界が張ってあんだろ? なんで藤野崎の奴が入ってこれたんだよ?」

「あ! そういえば~」

「? 結界?」


 音子は「何のこと?」とばかり、こてりと首を傾げる。


「執念……としか言いようがないな。修行の初日に結界の説明で言ったろ? 余程の確信を持って、とんでもないストーカーレベルで跡を付けられなければ大丈夫って……。実際にやられるとメチャクチャドン引きだけど」


 俊、まさかの自分でフラグを立てていた。


 さらに言えば、家から出た時に誰かに見られてる気がしたけど音子だったとは……と、地味にショックを受けていたりする。

 最近では前世のように魔獣を警戒する必要も無いので気が緩んでいたとはいえ、小学1年生の子供の追跡に気が付かなかったとか……


 俊は落ち込んでいるが、追跡に気が付けなかったのは音子が異常なだけである。


 心の中でorzの格好になっている俊に音子が顔を覗き込むような姿勢で近づく。


「確認したい」

「……何をだよ」

「俊たちが使ってるの、魔法?」

「オレにとっての魔法はシンデレラみたいのを指すんだよ。オレらが使っているのは魔術だ。努力しないと使えないやつ」


 今更誤魔化しても意味無いので素直に話す。


 俊の答えに音子は考えるような仕草をし、


「魔術教えて(キラキラ)」


 音子のおねだり攻撃! 実際にそうなっているわけでもないのに、音子の瞳が星のように輝いて見える!

 あざとくも胸の前で手を組むポーズだ!


「やっぱな!」


 俊はヤケクソ気味だ!

 何となく音子の空気が以前、自分たちにも魔術は使えるのかと聞いてきた大悟と菜々美に似ていたので、そう言ってくると思ったら案の定!

 大悟と菜々美がうんうん頷いているのが鬱陶しい。


「で、でもな、魔術を使えるようになるためには適性が必要なんだよ。だからもし適性が無くても怒るなよ? フリじゃないぞ?」

「了解」



 で、『分析アナライズ』で調べたその結果――



「これで私も魔術師!」


 音子は右拳を天に向けて、瞳はキラキラ!


「もうどうにでもな~れ~」

「やっぱこうなるのな……」

「なっかま♪ なっかま~♪」


 俊はもう疲れた。

 早くおうちに帰って寝たい。



 俊は自業自得で川へGO! ×2

 音子に関しては魔術を見られたうえに完全に信じてるので、仲間にするしか今の俊に取れる手段はありません。適性が無かったら無かったで別の問題も出ますが。


 次回、『好奇心は猫をも殺す』


 サブタイトルが不穏ですが、音子とは関係ありません。


 ご意見・感想・誤字脱字の報告がありましたら感想欄で。

 ちょっとしたことでも待っております。


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