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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第2章 あなたは魔法を信じますか?
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第21話 魔術の修行開始 後編

 新年あけましておめでとうございます。


「あ、そういえば俊くん~」

「ん? どうした菜々美?」

「今更だけど~この場所って普通は人が来ないって言っていたけど~、絶対じゃないんだよね~? それに音なんかも~。結界ってどこまで範囲にするの~?」

「あ! そうだよ俊。最初は『結界魔術』を俊が使うのかなって思っていたけどよ、よくよく考えたらこの場所って地味に広いぞ。修行中ずっと結界を張り続けるのって、魔力的にも体力的にも負担なんじゃねえのか?」


 『人払いの結界』や『遮音結界』などの『結界魔術』は基本的に、その効果範囲が広くなればなるほど発動中に消費する魔力も多くなる。

 これが『結界魔術』の素質の高い者なら、現在しゅんたちがいる林程度の範囲に結界を張り続けることなど朝飯前だろう。


 しかし、俊の『結界魔術』の素質は平均レベルだ。

 大悟は自分や菜々美の修行中、ずっと俊に結界を維持するための負担を強いることになるのではないかと心配しているのだ。


「あーそれな。何も問題ないよ。オレの魔力量って転生してかなり増えているから、修行する2時間ぐらいは問題ないし。まあ、確かに負担になることも事実だけどね。だけど安心しろって。さすがに本当にそれをやると効率悪すぎるから、事前に林の外側にある木に『結界魔術』用の記号を彫って、少しの魔力で簡単に結界を維持できるようにしてあるからさ」

「「記号?」」


 初めて聞く単語に大悟と菜々美は首をかしげる。


「そう言えば魔術的な意味を持つ記号のことはまだ説明していなかったけ。簡単に言えば、魔術の補助をすることができる特殊な文字や図形だな。魔法陣や魔術具を作るのに欠かせないもので、今回の場合だと、この場所を囲うように一定数以上の数の木に記号を彫ることで、その範囲内に限って『結界魔術』を発動する際の負担やらなんやらを軽減しているわけ」


 この魔術的な意味を持つ文字や記号の使い方は奥が深く、前世の俊のような魔術の研究をしていた魔術師にとっては、永遠に無くなることがないと言われているテーマなのである。


 単純に文字や図形の組み合わせを考えたり、それをどんな材料に刻むのかを考えたりするだけでなく、新しい文字や図形を生み出したりするのだ。

 例え、魔術師の研究者として全く芽が出ることが無くても、今までに無い魔術的な意味を持つ文字や図形を生み出せば、それだけで本に載る。


 俊がした結界の補助など、基本中の基本だ。


「念には念を入れて、結界を発動した時に上空からは景色に同化して開けた場所でも見えないようにしておいたよ。ヘリコプターや最近話題のドローンでも分からない。ここに来ることができるとしたら、それこそ、余程の核心を持ったうえでトップクラスのストーキングでオレらを追いかけて来ないと無理だ。ま、そんな奴が一般人でいるわけないけど」

「それならいいや」

「安心安全~」


 俊の言葉に2人とも納得する。

 上空から見られることに関しては思いもしていなかったので、事前に対策がされていることに一安心したのだ。


「さて! 結界の説明が長くなったし、そろそろ修行を始めようか。そうだな……まずは『魔力玉』を発動してくれ。2人ともだ」

「おう」

「分かった~」


 すぐに頷く2人。


 これまで自分に1番素質がある言われた『強化魔術』も『創造従魔クリエイト・ビースト』も俊からの言いつけで、修行できるまでの間は練習を禁止されていたのだ。


 その分、人がいない場所(主に自分の部屋)でなら『未分類魔術』に限って練習してもよかったので、真剣に練習していた。


 『魔力玉』

 これは『未分類魔術』に分類され、最も簡単な魔術である。

 効果は、球体上にした魔力の塊を創り出す。それだけだ。


 『魔術因子』にアクセスできるようになった魔術師が最初にできるようになることを求められる魔術であり、最低限の魔力しか使わず、たいして危険性も無いことから、魔術に慣れる練習として最適とされている。


 エヴァーランドでは、大人の魔術師は子供が『魔力玉』を発動させて魔術の練習をしている風景を見つけると、自分も昔あんな風によく練習したな、と思い出にふけるものだ。


 ずっと練習していた『魔力玉』を発動させるのは簡単だった。

 数瞬後には2人の手にてのひらサイズの光る球体があった。


 俊はそれをじっくり見る。


「……うん、問題ないね。魔力の流れが悪いこと以外は」

「? 魔力の流れ?」

「『魔力玉』は最も簡単な魔術と言われているけど、面白い特徴があってね。魔術をうまく使いこなせる人ほどキレイな『魔力玉』を創れるんだ」

「キレイって~?」

「実際に見せた方が早いな。……『魔力玉』」


 俊は手を前に出すと、すぐに光る球体が現れる。


「……なんつーか、こうやって見ると、オレと菜々美の『魔力玉』って俊と比べると不格好つーか、ギリで丸い形になってるって感じだな」

「光り方も弱いよ~」

「ま、こういうこと。『魔力玉』ってようは純粋な魔力を球体上に維持する魔術だからさ、発動させるのだけなら簡単だけど、よりキレイな球体にするのってかなり難しいんだ。それこそ、魔術師としての技量を高めて、魔力の流れを自分の手足のように扱えるようにならないと。2人の『魔力玉』が不安定なのは自分の中にある魔力をまだうまく扱えていないからだ」

「光の強さは?」

「自分の中にある魔力量の多さだな。大悟と菜々美みたいに、まだ魔術を使えるようになったばかりの奴は例外を除けばそのくらいの光り方だから気にするな」


 ちなみに今の俊の魔力量は前世と比べてもかなり多くなっており、『魔力玉』を創り出す際に調整して、光を加減していたりする。

 加減しなければ、結界でも隠せないくらい光ってしまうからだ。


「今はこの差を覚えておけ。1ヶ月後にもう1度比べよう。まじめに修行をすれば今よりもキレイな『魔力玉』になるはずだ。……自分の成長は分かりやすい方がいいだろ?」


 俊はニヤリと笑い、大悟と菜々美は力強く頷く。


「菜々美に関してはオレがワンツーマンで教える。ただでさえ資料でしか知らない『創造従魔クリエイト・ビースト』だからな。……がんばって従魔を創り出せるようになろう」

「お~~~!!」


 力いっぱい腕を上に上げて答える菜々美。


「オレは?」

「大悟は基本的にオレがアドバイスしたら、後は自分でがんばるって感じかな? 途中で何度か様子見るし、ほっぽっとくわけじゃないから安心しろ。最初の目標としては……あそこに少し大きめの石があるだろ? あれを軽々と持ち上げられるようになることだな」


 大悟は俊の指さした方向を見るが、


「…………少し大きな石じゃなくて、オレの身長の倍以上ありそうなでけー岩なら見えるけど……」

「目標は1ヶ月後までに、こう、バーベル上げの選手みたいにダー! って持ち上げられることな。それも軽々と」

「いや、ちょっと無理があるんじゃ――」

「大悟の『強化魔術』の素質の高さなら問題ないよ。……ギリで」

「おい待て、最後なんつった? もしかしなくても結構ハード――」

「やれ」

「………………はい」




 その後の修行で大悟と菜々美は知ることとなった。

 俊が割とスパルタなことに。


 俊による魔術の修行は厳しいです。

 菜々美の側には基本的に俊がおり、塾の講師みたいに教えます。

 大悟は『強化魔術』ができるようになる度に、次のハードルが上がります。

 一応、俊としてはまだ身体が出来上がってないことを考慮したうえで、負担になりすぎないギリギリのラインを維持して大悟に課してます。


 次回、『修行の成果』


 ようやく作者が個人的に好きなキャラが・・・


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