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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第2章 あなたは魔法を信じますか?
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第20話 魔術の修行開始 前編


 「魔法を信じない」と言って教室から出て行った火之浦ひのうら椿つばきに、俊はどうにも違和感があった。


(うーん……なんて言うか、普通に魔術とか魔法を信じていない人の反応じゃないよな。どっちかと言うとあれって、好きなものを否定・・・・・・・・された人の反応に近いような?)


 誰だって自分が心から好きなものを悪く言われたら嫌な気分になるし、相手の言い方によっては感情的になって怒ることもある。

 先ほどの火之浦椿の反応は、前世で見たことのあるそういった人によく似ていた。しかし、今の状況とあの言葉はおかしい。


 魔法や超常的な現象についての議論をしている所に、突如現れたオカルト女子。元々興味を持っていた子も否定的な意見だった子も、オカルト女子が持ってきた雑誌を見て「やっぱりあるのか?」「本当なのかも?」という意見が出始める。

 そんな中での、あの言動である。

 俊にはまるで、「魔法なんてものがあるわけない」と思っているから出た言葉ではなく、「絶対に魔法が存在しない」と思っていなければいけないと、自分自身に言い聞かせているように聞こえたのだ。


 教室の空気が悪くなり、昼休みも終わりに近づいていたため、オカルト女子は自分の教室に帰り、集まっていた子供たちも解散していった。


 大悟と菜々美も数分後には掃除の時間が始まるのでロッカーから道具を出すために移動していたが、俊はしばらくその場から動けずにいた。



「…………」


 そんな俊の姿を、ジッと見つめる子供にも気付かずに。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ただいまー」

「おかえり俊。今日の学校はどうだった?」

「うーん……とりあえず、オカルト女子にパワーアップした例の子の名前はもう知らなくてもいいやって思ったよ。下手したら一生分かんないだろうし」

「ごめんなさい俊。お母さん、俊が何を言っているのか分からないわ」


 学校が終わり、家に帰った俊を陽子が玄関で迎え、何気なく学校のことを聞いたら訳が分からない答えが返ってきた。

 オカルト女子というのが何かは知らないが、名前ぐらい普通に分かるものなんじゃないか、と。


 俊も母親が何を考えているかは予想がついたが説明する気は無かった。

 ――だって、アレ・・は実際に見ないと分かんない存在だし……


 幼稚園の頃から知っている俊からすると、オカルト女子の存在は怪奇現象と言われても信じてしまいそうなぐらいのレベルに達していた。


(『触らぬ神に祟りなし』なんて言葉もあるくらいだしな……)


 いつの間にか、祟り神扱いされてしまっているオカルト女子。


「優香と直樹は? 出かける前にかまってあげたいんだけど」

「今はお昼寝の時間だからね。ぐっすりよ」


 残念だなー、と肩を落とす俊。

 目に入れても痛くないといっていいほどカワイイ弟と妹なのだ。元気に起きていたら出かけるまでの数分だけでも可愛がるところであったのに。


 本来であれば、全力で作った魔術具のお守りを身に付けさせておきたいところだが、いかんせん、その魔術具を作るための材料が無い。

 用意しようと思えば材料から創り出すことも不可能ではないが、時間はともかく場所が無かった。何をしても怪しまれない場所が。

 いろいろな道具を置く都合上、安全に作業に取り掛かれる部屋が必要なのだが、そんな都合のいい場所など無い。


「それじゃ、しょうがないけど出かけるね。ちゃんと暗くなる前には帰るからさ。何かあったら携帯で連絡だってするから」

「本当に大丈夫? 自転車は便利だけど危ないから気を付けるのよ」

「分かっているよ」


 今日、俊は大悟と菜々美の3人である場所に集まることになっていた。しかし、そこは地味に遠いので子供の足ではきついうえに、親が心配してしまう。

 だからこその自転車と携帯(子供用)だった。


 小学校の入学祝いということで3人とも親にお願いした結果、あっさりと叶ったのだ。それぞれの親からしても自転車ぐらいなら問題ないし、今の世の中、子供でも簡単に使うことができる携帯を持たせていた方が安心して見送ることができるのだ。


 ちなみに、俊が買ってもらった自転車はいたって普通のデザインである。

 自転車を買う時に陽子は俊が時おり見ているアニメのキャラクターが描かれた自転車を押してみたのだが……俊の顔は隠し切れない程「ないわ~」な表情になっていた。

 お店の人もこれには苦笑いに。


「じゃあ、いってきまーす」

「いってらっしゃーい」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「オマエら、魔術が使いたいかー!」

「「おー!」」

「誰でも使うことができる『未分類魔術』じゃない、自慢できるほどの魔術を使える魔術師になりたいかー!」

「「おー!」」

「始める前に言うことは1つ。お願いだから死なないで」

「「いや何で!?」」


 開始前から大悟と菜々美を不安にさせる俊。


 現在、俊たち3人がいるのは初めて河童と出会った場所だった。

 そう、この場所こそが俊が魔術の修行をするのに適していると判断していた所だったのだ。


 3人の家から通うことができる距離で、住宅地から外れ、木々が外からの視界を遮ってくれている。まさしく修行に打ってつけの場所。


「だってさ、人に魔術をまともに教えるのなんて初めてだし……念のために保険を、と……」

「いやいやいや、『未分類魔術』覚える時にアドバイスとかしてくれたじゃん!」

「不安になること言わないでよ~」

「『未分類魔術』と他の魔術を一緒にするな! 習得の難しさが一気に跳ね上がるんだぞ! 特に大悟は『強化魔術』だからな……」

「な、何だよ?」

「安心しろ。簡単ではあるが、オレは『回復魔術』の素質を持っている。だから……多少のケガをしても直して見せるから途中で逃げ出さないでくれ! っていうか逃がすか!」

「いや本当に何させる気だよ!?」


 一応、俊が言いたいのは身体に作用する魔術だから、2人の中で1番痛い思いをする確率が高いという意味だ。決して大悟をからかいたいからではない。

 非常に面白そうな表情になっているが、俊はマジメなのだ!!


「……先行きが不安だな~」


 菜々美にしては珍しく引きつった表情になっていた。


 オカルト女子「私、一応一般人よ? 普通のどこにでもいるような女の子よ?」

 俊「普通で一般人な女の子は際どいアングルになるたびに光が隠したりしないし、異常なレベルで名前が分からないなんてことになるかよ」

 オカルト女子がどうしてこうなったのか作者にも分かりません。


 次回、『魔術の修行開始 後編』


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