表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第1章 異世界の魔術師が現代日本に転生!?
16/73

第13話 衝撃の真実


「そんじゃあ、今度こそ帰るわ。君らも帰りは気をつけるんやぞ」

「今日は本物の河童に会えて良かったと思います。お元気で」

「じゃあな。カッパも気を付けろよ」

「……カッパさ~ん」

「泣くんやない。正直、もう会えるとは思えないけどな、ワシらは友達なんやろ? だったら遠く離れてもお互いのこと思いやれる。違うか?」

「……うん! それでも言わせて。またね~!」


 河童との別れを惜しみながらも、精いっぱいの笑顔で手を振って見送ろうとする菜々美。河童もその姿を見て、また会いたいと思いながら背を向ける。


「とおっ!」


 そして河童は大ジャンプ!

 川に向かって落ちながら、アクロバティックな演技を見せて飛び込む!

 ここがオリンピックで、飛び込みの競技を担当している審査員がいれば文句なしで高得点を叩き出したことだろう。それほど見事だった。


 河童は1度水面から顔を出して、俊たちに手を振ってから潜っていく。

 菜々美は「さようなら~! また会おうね~!」と大きな声で言いながら、ちぎれんばかりに姿が見えなくなった後も手を振り続ける。


「なあ、シュン。今の……」

「言うな。深く考えたら負けのやつだろう」


 別れのサービスなのか予想外の演技を見せた河童に、最後の最後でイメージが崩れていった大悟と俊の2人と、全く気にしていない菜々美が対照的であった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「それで、ちゃんとせつめいしてくれんよな?」

「……何をかな?」

「とぼけんなよ。分かってて言ってるだろ」

「何のお話なの~?」

「ナナミは分かってねえのか? さっきのおかしくなっていたカッパとの戦いについてだよ。いくら何でも、あの時のシュンのことはみすごせねえって」

「たたかい~? そう言えばすごかったね~」

「……すごいのいきからこえすぎなんだよ」


 河童との別れの後、俊は大悟から詰め寄られた。

 最初からこうなるのを覚悟のうえで河童と戦ったわけだが、実際の話どこまで説明すべきで、今後の2人への対応をどうすべきなのかを頭の中で今も考えている。


「2人はどこまで・・・・聞きたいの?」

「全部に決まってんだろ。ともだちなんだから」

「わたしも~。なかまはずれはイヤ~」

「……はあああぁぁぁぁぁぁっ」


 2人のその答えに、俊は大きく息を吐いた。


「友達とか仲間はずれとか、そんな言葉使われたらオレの負けだろ。オマエら、何ていうか、いい性格になったよな」

「ほめても何も出ねえぞ?」

「えへへへ~」

「褒めてないよ。呆れてんだよ」


 一体誰に似たんだろうな、と俊は思っているが、自分の存在も大悟と菜々美の2人に大きな影響を与えていることを自覚していなかった。


「まあいい。先に言っておくけど、これから話すことは例え親でも話したらいけないことだぞ? 絶対話さないって約束できるか?」


 その言葉に2人は力強く頷く。


「じゃあ結論から言うぞ。オレは……魔術師だ」




 俊は詳しく言っても分からないようなことを省いて、大悟と菜々美にも分かるよう可能な限り簡単に魔術の説明をした。

 話の途中でたびたび質問をされたが、予想できたことだったので、嫌な顔もせず1つ1つ丁寧に答えていく。


 ただし、自分が異世界で生きてきた記憶を持つ転生者と呼ばれる存在であることは誤魔化した。当然のようにされた「何で魔術なんてもんが使えるんだ?」という質問の答えを素直に言うと、ただでさえ小冒険・河童襲撃・魔術とイベントが重なっているというのに、これ以上の爆弾を投下したら子供でなくても情報量の多さに頭が爆発してしまうことだろう。

 実際、一通り話し終えた時には頭が痛くなってきたのか、2人とも頭に手を置いたり、目をグルグルしていたのだから。


 とりあえず異世界転生うんぬんの話は、後日必ず話すと約束した。


「ビックリすることばかりで、もうつかれたし帰らないか?」

「わたしもおなかへった~」

「そうだな、それじゃ帰ろうか……って言いたいところなんだけどさ、ちょーと無理そうなんだよねー。いやマジで」

「へ? どうしたんだよ?」


 大悟も菜々美も後はもう帰るだけだ、という空気であったが、俊には帰りたくても今すぐ帰れない理由ができてしまっていた。


「実はさ、最後の攻撃のための大ジャンプの時に、限界ギリギリまで魔術で脚力を強化したんだけど、やっぱり負担が大きすぎたみたいで……」

「「みたいで?」」

「まともに足が動かん。ていうか、めちゃくちゃ痛い」


 そう、『身体強化』の魔術は強化に耐えられるほどの肉体の土台が無ければ自滅しかねない。そしてまともに身体が出来上がっていない5歳の肉体の土台など、たかが知れている。普通に『身体強化』を掛ければ逆に動くこともできなくなるため、河童の攻撃を躱すことができ、なおかつ俊の身体が耐えられる程度に強化を抑えて戦っていた。

 しかし、最後の大ジャンプをするためには限界を超えて『身体強化』で部分的にでも脚力を強化しなければならなかった。そうでなければ幼稚園児が10メートル以上ジャンプなどできるはずが無いのだから。


 その結果が今の俊の状態であった。

 心配させないため、ほとんど意地だけで立っているのである。


「ぶっちゃけ、後1時間はここから歩くこともできそうにない」

「そっか~」

「まあ、オレらまもってくれたんだから文句はねえよ」

「いや、1つ、大きな問題があってだなぁ」


 俊は視線をさまよわせながら、口から言葉を絞り出した。

 この後、確実に起こるだろう大問題を!


「母さんたちが迎えに来るまでの間に帰れないんだよ!」

「「あ、あああああぁ~!?」」

「絶対にどこ行ってたんだって雷を落とされる!」

「「ぎゃああああああああああ~!!」」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 それから1時間以上経って、ようやく幼稚園に戻ってこれた俊たちを待っていたのは母たちの優しい笑顔――ではなく、3体の般若はんにゃでした。

 いや、菜々美の母親は笑顔だったが、目が笑っていなかった。1人だけ背景が猛吹雪だっただけでなく、本当に般若みたいなスタ〇ドを従えていたのだから。


 のちに、この時の出来事を3人はこう語った。


「ようやく動けるようになって、再び乗ったバスから幼稚園の近くで降りて最初に感じたのは、前世で何度も見た屈強の戦士が震えてしまうほどの気配だったな。分かってはいたけど、その正体は幼稚園で待ち構えていた母さんたちだったよ。え? それからどうなったかって? 決まってるだろ、雷を落とされたさ。それも特大のね。これ以上は思い出させないでくれ。震えが止まらない。いや、ホント、マジでお願い」


「いえにかえったら、とーさんとかーさんにじごくをみせられましたまる」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんな――」


 3人とも見事にトラウマになった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 辺りも暗くなってきた頃、幼稚園内の階段に腰かけているのは3人の子供だ。ただし、某ボクサーのように真っ白に燃え尽きていたが。

 そう、俊・大悟・菜々美の3人である。


「「「…………」」」


 その表情は子供がしていいものではなかった。事情を知らない人が見たなら「何があったの!?」と心配を通り越して、驚愕することだろう。


 母親たちは少し離れた場所で話している。雷を落とされた後、3人の母親たちから言われたことを要約すると「お母さんたちで少し話をするから、そこでおとなしく待っていろ。OK?」であった。YESマム! 以外の答えなど存在しない。


 燃え尽きている3人の中で最初に復活したのは俊であった。


「……今日はいろんな意味で疲れたし、事前に言っていたように詳しいことは後日――っていうか心が回復してからってことでいいか?」

「……さんせー」

「……お~」


 覇気は全く無いが、とりあえず立ち直った俊たち。


「そういえばさー、あの『こっくりさん』だっけ? あれもシュンが言っていた、まじゅつだったんだろ? 今になってなっとくしたわ」

「あ~たしかに~」


 そんな大悟と菜々美のつぶやきに俊は、



「え? 『こっくりさん』で魔術なんて使っていないよ?」



 あっけらかんと、そんなことを返してきた。


「「…………はい?」」


 一瞬、思考が停止する2人。


「それにしても『こっくりさん』、いや、『こっくり様』って呼んだ方がいいか? 霊的な存在なのは間違いないけど不思議だよな。魔術にはさ『精霊魔術』や『死霊魔術』なんてのもあるけど、そういうのにも当てはまらない存在みたいだし」

「え?」

「自分でいろいろ試してみたら、出やすい場所と時間の関係も少し分かって、簡単ではあるけど信頼関係を気付くことができたから普通のやり方とは違うやり方でも答えてくれたって言ったろ? 他にもああいう存在がいないか調べているんだ」

「え?」


 俊が言ったことを理解したくない大悟と菜々美。

 しかし、どんどん言っている意味が分かっていき……


「俊、話が終わったから帰るわよ。続きは夕食の後でね」

「はーい。じゃあまたな2人とも」

「「……」」


 俊は母親に連れられながら2人に別れを言ったが、大悟と菜々美は俊の姿が見えなくなっても何も言うことがなかった。


「うふふ、私たちも帰りましょうね菜々美」

「まったく、帰ったら父ちゃんにも今日のこと言うからね」

「「……」」


 俊が去っていった方向を見つめたまま動かず、母親たちの言葉にも全く反応を示さない2人にどうしたのかと聞こうとした時だった。


「「ぎゃああああああああああああああああああ~!!」」

「「わ!?」」


 2人が突然絶叫をあげた。

 どうやら、ただでさえ様々なことが重なって精神が疲弊している時に、衝撃の真実を聞かされて、全てを理解した途端に恐怖から叫んだようだ。


 異世界で生きてきた記憶を持つ俊と、この世界の一般人である子供の大悟と菜々美とでは、霊的存在に対する認識が大きく違っていた。




 帰りの車の中、俊は母親に聞こえないぐらいの声でつぶやく。


「あの黒いやつ……まさか……」


 『こっくりさん』で現れるこっくり様は実在しました。

 俊の住んでいる地域担当のこっくり様は、週4の午前9時から午後5時までに出現。金・土・日の3日と年末年始は休みです。


 次回、『事情の説明と怪しい影』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ