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逆転生した魔術師にリアルは屈しました 【凍結】  作者: 影薄燕
第1章 異世界の魔術師が現代日本に転生!?
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第10話 人気のない場所=大体物語では事件が起こります


「坊やたち、本当にここでいいんだね?」

「うん! ちゃんとメモをわたされたからまちがっていないよ。ここまでどーもありがとーございました! おじさん、バイバーイ!」

「ああ。車には気を付けるんだぞ」


 回復途中の俊の精神にダメージ!

 精神HP 87/100 → 68/100


 目的地に1番近いバス停に到着した俊たち3人。

 バスの中で河童との友好にキュウリがどれだけ必要で大事なものなのかを力説しているうち、あっという間に着いてしまった。


 バスが俊たちを下して走り去った後、俊は再び精神的なダメージを負いながらも地図を確認し、菜々美はもうすぐ河童に会えるかもしれないという思いでワクワクしていた。大悟だけはバスの中でさんざん河童とキュウリの話を聞かされ続けたので、すでに疲れている。俊だけならまだしも、普段おとなしいはずの菜々美まで生き生きとして加わったのも原因である。


「2人とも、ここから数分歩けば目的地だ。行くぞ」

「お~!」

「おー」


 現在、俊たちがいる付近は平日ということもあるだろうが、元々人通りも少ないのか、目で見える範囲に人影は見えない。近くには住宅地や何かしらの店もあり、耳をすませば中から音が聞こえてきているので、たまたま今の時間帯に外に出ている人がいないだけだろう。


 俊としては非常にありがたかった。

 道行く人に「何しているんだい?」と聞かれたら、また先ほどの運転手に対してしたような話し方で誤魔化すつもりだったのだから。

 中身が大人の俊にアレを何度もこなすなど中々に鬼畜難易度なことなのだ。

 やり過ぎると河童と会う前に精神がすり減り、ストレスで胃に穴が開いて本当に吐血することになるやもしれない。


 明日の朝刊で『幼稚園児の胃に穴が開いて吐血!? 原因はストレスか!?』なんて記事が載った日には軽く死ねる。ストレスが原因で吐血する幼稚園児など聞いたことがない。家族も友人も全員を巻き込んで迷惑が掛かること間違いないだろう。




「そろそろだな」


 俊たちが人影を気にしながら歩いて数分、目的地が近づいてきた。

 河童が現れると『こっくりさん』で出た目的地とする場所は、家や店がある場所から少々外れた所にある。辺りには林が広がっており、遮蔽物になる物も多いため、離れた所から誰かが見ていても林の中に入ってしまうと分からなくなるだろう。


「入るぞ」


 俊の言葉に一瞬の間をおいて頷く大悟と菜々美。

 おどろおどろした雰囲気はないが、このような場所に来ることなど今までなかったし、外ではいつもいる親もいない状態なのだ。

 口には出さないが2人とも少し不安になっている。


 林の中に入り、そのまま川の音が聞こえる所まで進む俊たち。今日はとてもいい天気なのもあるだろうが、木々の間から漏れている光が3人を照らし、大悟と菜々美の不安も先ほどまでよりも無くなってきた。


 しばらく進んだところで、ついに川が見えた。

 川が流れている場所は意外に木が生えていない所が多く、周りにも人工物らしき物は見当たらなかった。この場所だけを見るなら、本当に河童が現れそうな雰囲気がある。


「へー、本当に出そうなふんいきがあるな……」

「あの川からカッパさんがでるのかな~?」

「かもしれないな。見た感じ思っていたよりも川の深さがあるみたいだし、水面にいきなり現れることだってあるかもしれないな。とりあえず、まだ出現予定時間まで少しあるし、今のうちに適当に座って休憩しておこう」


 その後は少し大きめの石に腰かけて休む3人。

 俊自身もそうだが、大悟と菜々美の顔を見ると普通に遊んだ後の疲れとは違う種類の疲れを感じているのが分かる。前世の記憶を持つ俊にとっては何てことの無い移動でしかないが、2人にとっては大冒険に近かったのだろう。


 全員が休憩をして息を整えたのを見計らい、俊は話しかける。


「そういえば大悟。オマエ、クッキーしか持っていないんだったな?」

「え? それはバスの中で言ったろ」

「これから河童に会うのに、3人の内2人はキュウリを出しているのに、残りの1人がクッキーじゃ格好が付かん。てなわけで、オレが持ってきたキュウリを1つあげよう。これを持って河童に友好をはかるんだ」

「はかるんだ~! パチパチパチ」

「あ~うん、ありがとう」


 表彰状を受け取る人みたいに、俊からキュウリを受け取った大悟。その顔には「今でも釈然としねえな」と書かれている。

 横にいる菜々美の拍手が若干鬱陶しい。


「どうせだから、河童に会った瞬間に言う言葉も考えよう。3人とも同じように言えば、どれだけ真剣かが伝わるはずだ」

「どんな言葉~?」

「そうだな……キュウリを差し出すように前に出した状態で『河童さん、お友達になってくれませんか?』って言うのはどうだ?」

「まあ、悪くはねえんじゃねーか?」

「わたしもそれがいい~」

「よし、じゃあそれで。そろそろ時間のはずだから――」


 川の方をきちんと見ておこう、と俊は言おうとしたが、急に黙り込んだかと思うとその川の方を睨みつける。


「どうしたの~?」

「……どうやら、少し早くお出ましのようだ」

「え?」


 俊につられて川を見る大悟と菜々美。

 ぱっと見では何も変わっていないように見えるが、よく目を凝らせば川の一か所から不自然に泡らしきものが浮いてきては消えている。


「わ! わ! カッパさん!?」

「マジで当たったのかよ。スゲーなシュン……」

「だから言ったろ? ……だけど、これは」


 興奮している菜々美と、純粋に驚いている大悟に対し、俊は喜べずにいた。


(何だ、この感じ? 言葉で表せないこの不気味さ、前にもどこかで感じたことがあるような……単純にUMAが出現する時っていうのはこんなものなのか? それとも……何か嫌な感じがするな)


 俊が訝しんでいる間にも、川から出る泡は勢いを増す。

 そして、


――ザバァーーーーーンッ!!


「Kaaaaaaaaaaaaaaa!!」


 そこから出て、3人の前に姿を現したのは確かに河童だった。そのはずだった。

 その姿はテレビなどで紹介されている河童そのものであった。緑色の肌に水掻き、背中の甲羅にクチバシのような口、そして1番の特徴である頭の上の皿。どれをとっても河童だ。


 ただし、あきらかに狂暴な雰囲気をかもし出しているが。


 口元からはダラダラとよだれを垂れ流し、目は真っ赤に染まって吊り上がり、頭の皿からは黒いモヤモヤしたものが出ている。

 初めて河童に会う者でもおかしいと思える様子だ。


 そんな河童を目の前にした俊たちは、



「「「……河童さん、お友達になってくれませんか?」」」



 ほとんど無意識に、半ば現実逃避気味に、キュウリを差し出すような恰好で、先ほど決めたばかりのセリフを言って河童に友好をはかった。


 どう考えても無理そうだ。


 ついに河童が登場(敵意むき出しで)。

 俊は河童から、どうにも覚えのある嫌な感じを感じ取っています。


 次回、『転生後の初戦闘 VS狂暴河童』


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