就活であった面接の話
むしゃくしゃして書いた。今は反省している。
企業によっては、ときどき突飛な質問を出してくる所がある。
大抵はその人の志望動機、自己PR、企業に対しての質問といった、予め予測しやすい問題が多い。だが、イジワルな面接官なのかそれとも企業がそういった趣向なのかは定かではないが、ギャグじゃないかと思える質問をしてくるところも本当にあるのだ。
時には脱線したまま面接を終えることもある。……選考を忘れさせる話術は大切なものだと痛感する。
私は45分の個人面接で90分使って話し込んでしまい、なぜか人事の人に注意されたことがある。さすがにお互い様だと思ったのか、注意されたとき相手も笑顔だったが、質問事項が半分終わらなかったと苦笑された。
ちなみに、その面接は通過できた。
「もしもあなたの家にドラ○もんが来たとしたら、何の道具を使ってみたいですか?」
いきなり何を言い出すんだ、このおじさんは……!
圧迫面接(面接官がこちらを中傷するような発言や態度を取る面接方法)の次に受けた面接だったので、ビクビクしながら受けた面接の質問がこれだった。
その前に志望動機とアルバイト経験を聞かれたのだが、まさか表情一つ変えずにこの質問が来るとは思わなかったので、私の意識は二次元に飛んだ。
しかしこの質問は、常々私が「あったらいいな」と思っていたことだったので、おそらく誰よりも早く答えを導き出せたはずだ。
「『もしもボックス』です」
「……と、その道具で何をしたいですか?」
もしもボックスを知らないような雰囲気だった。
おそらく、面接官の中では『どこでもドア』や『タケコプター』といったメジャーなものが思い浮かんでいたはずだ。『もしもボックス』と答えた学生は、おそらく私だけなのだろう。
「もしも〜だったら、というとそれが本当になる機械なので、なんでもできます!」
落ちた。
集団面接にて、こんな人がいた。
「大学生活で、勉強以外で励んだことはなんですか?」
という質問に対し、堂々と「勉学です」と答えたW大の生徒。まあ、W大に行くくらいだ、相当頑張ったんだろう……だが、ここは嘘でも部活なりアルバイトなり趣味なりにしておかないと、印象が悪いんじゃないだろうか。
彼は背筋をぴっと伸ばし、優等生の雰囲気を前面に出して、
「私は、大学では勉学に専念しようと思っていたので、サークルにもアルバイトにも手を出しませんでした。大学では自発的に資格取得や勉学に取り組み(以下略)」
私は彼の履歴書を見ていないので、それが本当なのかはまったくわからないが、学生の見本のような回答をしていた。
しかし面接官の若い女性は、笑顔でその答えに対して切り返してくる。
「では、勉強のストレス発散方法はなんですか?」
今まで流暢だったのに、彼は黙った。
少しして歯切れ悪く、
「……目標があるうちは……勉強が苦痛とは思いませんでしたので……」
小さいころからスパルタ教育でも受けてきたのだろうか。
簡単に受け流せそうな質問なのに答えが思いつかなかった彼を見て、私は真面目すぎるのも考え物だと思った。
というか、W大の生徒がなんでここを受けるんだろう……知名度はあるけど、ここはブラック企業認定されているのに。
文系なのにIT企業を受けたこともある。
そこは離職者が少ないのが自慢らしいので、どんなに雰囲気のいい会社なのだろうと思って覗いてみたのだ。
説明会で先輩社員の男女(同じチームらしい)が、いろいろな質問に答えてくれている中で、こんな質問があった。
「残業時間はどれくらいですか?」
正直に言おう。この質問をするのは結構勇気がいる。
誰もが気になるのだが、印象が悪くなる気がして避けているのが大半だ。
もっとも、卒業した先輩曰く、人事の言うことなんて半分は嘘だと思っていないと、入社したときに馬鹿を見ることになるので、信じてはいけないらしい。
ネットでも『残業はありません=残業と認めませんが働きなさい』の法則が挙げられているし、私もバイト先で経費削減とか言って残業代が出なくなった社員の方々が苦労しているのを見ている(店は増え続けているのにね)。
さらに言えば、月休八日とか言っているアルバイト先の正社員募集要項だが、休みは週一日である。
うちには全部落ちたとき以外来るな、と元社員のおばさんから助言を貰ったくらいだ。
さて、残業時間について尋ねられた二人の社員だが、どうやら人事の根回しが足りなかったようである。
二人とも残業はある、と正直に答えてくれた。そこまではいい。
女性の方は笑顔で、
「私は八時には会社を出ますね」
というのに対し、男性の方は、
「忙しい時期ですと終電か、徹夜もありますよ。たまにですけど」
男女の雇用差はネットだけではなく、真実のようだ。
そして別のIT企業にも突撃した。
その会社は資料を配布したくせに、椅子だけで机がないという説明会を開いてくれた大変ありがたい会社である(大手)。
しかもアンケート記入とかふざけるなといいたい。机出せ! みんな四苦八苦して膝の上で腕を動かし、字がヨレヨレになっているのは仕方ないだろう。
バッグの中に入れっぱなしの『まぶ○ほ』下敷きを使う勇気はさすがにない。
あまりやる気がなかったのだが、性格適正や筆記試験になぜか通ってしまい、二次面接(実質三次選考)まできてしまった私は、前のIT企業で感じた男女の残業時間の違いを尋ねてみることにした。
「うちは基本的に男女平等だよ」
と、人事の方は笑顔で答えた。だが……。
「でも、帰りが遅くなることがわかっている場合は、女性だけ帰すね」
……それって平等じゃなくないですか? とつい口から出てしまった私の言葉に、人事の方は言い難そうに苦笑する。
「いやあ……女性に問題が起きると、会社としてちょっと……いろいろ物騒だから」
言葉を濁したが、今がブームの『女尊男卑』の影響なのだろう。
ニュースでも帰宅時間が遅くなった男性が襲われるのと女性が襲われるの、どちらの扱いが大きいかと聞かれれば当然女性の方なわけで、責任追及もされるだろう。
思わず「じゃあ男性だったら問題起きてもいいんですね」と言ってしまいそうになったが、寸前で飲み込んだ自分を褒めたい。
私の女性不信度が2上がった。
その選考は通過したが、四次面接(実質五次選考)で落ちた。
約二ヵ月の長い選考期間であった。
三次面接にて、隣で面接をしていた女の子二人が泣いていたのが、とても怖かった。
落ちた話ばかりだったので、内定を取れたお話。
私は趣味の欄に『イングランドプレミアリーグ観戦』と書いているのだが、社長がサッカー好きらしく、話が弾んだ。
ちなみに私はリバプールファン。応援歌も歌える。
「プレミアって言ったらあれか、……アブラモビッチ!」
「チェルシーのオーナーですね」
「カカ(ACミラン所属)が移籍するんだってね」
「え? いや、初耳ですね……。しないと思いますよ」
「いや、でもニュースで見たよ。移籍金140億って」
「いやいや! カカは毎年移籍するって騒がれますからしませんよ。去年一昨年もレアルと合意したとか騒がれましたけど、デマでしたし」
「そっかなあ。140億なら移籍すると思うけどなあ」
「今のミランがカカ手離したら目も当てられませんよ。ロナウジーニョとパトが五輪で取られていますからね」
そんな話で大半が潰れ、内定を貰った。
豪華なソファーって座りにくいよ、不思議!
面接を受けていて感じたことがある。
就職課の面接練習がまったく役に立たないことと、聞かれる質問はほとんど台本どおりの物だということだ。
しかし台本を逸れた質問をされたとき、どう返すかが選考に響いてくるのだろう。
もっとも、あまり変な質問をされたことなんてないので、言葉に詰まることはほとんどなかったのだが……。
ただ圧迫面接をされると開き直って言いたい放題言ってしまう癖を、秋までに直そうと思う。
履歴書書き溜めておこう…。