3話)「結局」
3話)「結局」
こんな俺にSランク...。なぜ俺がここまで自分をけなすような言い方をするかというと、俺の日々の日常が問題だ。俺は日々、ダンジョンと呼ばれるモンスターが自然にポップする地下迷宮に潜っている。しかし、俺は弱モンスターのポップする下層に潜っている。そして、そのモンスターを狩り、ドロップした金貨やドロップ品を売ったりして、その日泊まる宿屋の賃金をやっとまかなえる程度の生活をしていた。
そんな生活をしていたわけで俺は今、驚いている。
「ホントの、ホントにSランクですか?」
鑑定士の人が深く頷く。
「はい。本当にSランクのアーティファクトです」
鑑定士の人がここまで張って来るのだ。あのネックレスは本当にSランクだ。こうなれば、聞くことは...
「じゃあ、このネックレスにある魔術の能力は?」
「...」
鑑定士の人が下を向いている。
「ん?どうしました?」
「それが、私どもにもわからないのです。分かることは、
――強く願うことが、一番の力――
と、いうところだけなのです」
「強く願うことが、一番の力...」
鑑定士の人に礼をしてその場を去ってから数時間。俺の持つアーティファクトは一部のみ解読成功という鑑定士の中では異例の結果となり、ギルド会館前の掲示板に情報が張り出され、噂がいろいろなところへと広まりつつある。
俺がこのネックレスを露出して歩けば
「あいつがつけているのが、あの噂の...」
「あんな奴が持っているのかよ」
「そんなに目立ちたいのかしら」
こんな感じで批判が7割程度だ。この状況に俺はため息しか出ない。なぜ俺にこんなものを女神は授けたのだろうか。本当に意味が――。
ウガッ。
考え込んでいて前を見ていなかった。それで人にぶつかっていた。見たところ相手は盗賊に見える。
「おい、兄ちゃんイテーじゃねーか」
「すいません」
「すいませんで済むほど、この世界が甘いと思ってるのか」
その一言で分かった。相手はわざと俺にぶつかってきた。そして俺に何らかのいちゃもんを付け、俺のネックレスを盗もうとする手口だ。
こうなれば俺は逃げるのが、最善の手かもしれない。しかしそれを考えるのが遅かった。周りには野次馬が集まっていて逃げることができない。
どうするべきなのか。俺は日々ダンジョンに潜っていたと言っても、筋力などの戦闘系の力はほぼない。
どうすればいいんだ。どうすれば。
――強く願うことが、一番の力――
そうだ、こうなったら―。
「目の前にいる盗賊が消えてほしい」
これが今俺が思いつく一番の願い。それを強く願う。
しかし、何も起きなかった。いや、起きていた。俺の体からマナと呼ばれる魔力が大量に外へ放出していた。
俺は地面に倒れ込んだ。もう意識を保つことが精一杯だ。
「どうしたよ、何もせずにマナだけ体から放出するってアホかよ」
目の前の盗賊がゲラゲラ笑っている。それを見ることもままならなくなっている。
俺の首からネックレスが外される。
「これは、ありがたくいただいていくぜ」
その言葉を聞いて、俺はもう目を閉じた。
結局、俺にはなんの力もなかったのだ。
「おい、何をしている!!」
俺はその声を聴く事しかできなかった。
3話)「結局」
読んでいただきありがとうございます。投稿日を月曜日、金曜日と決めた後、すぐにすっぽかすというなんという失態。今までいろいろ生活が変わり忙しかったのです。まぁ言い訳ですけど...。
今後は月金じゃないかもしませんが、しっかり投稿していこうと思います。
Definition of the world ー世界の定義ー を今後もよろしくお願いします。