冒険忘失 僕は神を殺した
これは一人ぼっちの旅人の話
ある日、ノルンという男が
禁断の願いをしたのです
僕ら旅人は、何気なく魔物を倒し、当たり前のようにたびをしているだろう。
しかし、それは終わりを告げる。
ドラゴンの鳴き声と共に・・・。
「落ちこぼれがいるぞ。ノルンだ。ワハハッ」
「わー旅人に恥をかかせた奴じゃねえーか。コノヤロー」
痛い、つらい、立てない。僕は最近、金を盗んだ。
本当に落ちこぼれだな、僕。
あー旅人何てならなきゃよかった。田舎で調子に乗って都会に来るなんて間違いだった。
「コラ、君たち何をやっている。」
強いことで有名なひとだ。どうして僕をたすけるの?
「君、大丈夫?」
ああ 同情か・・
ああ 胸くそ悪い。腹が立つ。
「じゃあまた。君もがんばれよ。」
いつも強い奴は弱いやつを見下す。うっとおしい。
あ、鼻血が出てる。これは弱い奴という印なのだろうか。
今も、僕を見下す奴がいる。どうせ、僕はおまえらより弱い。
「どうせね・・・。」
僕はぼそりと呟いた。
今日の夜ご飯も草の根かな、
僕は再び立ち上がった。
暖かい陽射しで僕は目覚めた。太陽に手をかざす。
「僕も太陽になりたい」
太陽になったらこの世の人達をみくだせる。
そして、僕は思った。
僕はずっと見下され続けるだろう。
同情、殺気の混じった眼で、
この世界がある限り 永遠に・・・
こんな世界・・・・・
消えてしまえばいいのに。
僕はそう思った。
-それがお前の望みなら-
僕の耳にかすかに聞こえた。
ウオーン
それは魔物の鳴き声だった。しかし、それは醜く激しい声だった。
そして、僕の眼には映ったんだ。
魔物の凶暴な姿が、
仲間同士を殺し合い、旅人を次々と倒していき、魔物の糧となっている。
死ぬ。
「あ、わ、ああ、わあ」
怖い。
死ぬなんてヤダ。しかし、僕の頭の中には「死」という文字しかない。
この僕が生き残れるだろうか。
そう考えると、気を失った。
・・・・おなか減ったな
気が付くと、何故か僕は一人暗い場所にいた。寒い、怖い、死にたくない。
僕は今、死をさまよっているのだろうか。
遠くをみると、一輪の青い花が咲いていた。その花はとても美しかった。
そして、僕の眼には青い花を映すように涙が流れた。
僕はなぜこんな世界望んだんだろう。
今も人は死んでいる。
後悔が涙とともに流れ出す。涙は花へとおちっていった。
すると、花はまばゆい光を放った。そして、花は木へと変化し、ピンクの花を咲かせた。
桜だ。何年ぶりだろう。いつの間にか僕の涙は止まっていた。僕は木に抱きついた。
暖かい。ずっとここにいたい。
気付くと僕はそう思っていた。
-世界が消えてほしいと望んだのはお前だろう?-
それはあの声だった。僕は怒りがこみ上げた。
「誰だ!」
-お前の望みをかなえた神だ。なぜそう怒っている。そう望んだのは君だろう-
僕は何も言い返せなかった。しかし、このままにしておくわけにはいかない。
「こ、この世界をもとに戻してほしい」
-なぜだ?お前が望んだ世界なのに、どうしてだ?-
どうして?分からない。
僕が返事に困っていると
-お前がこの私より強くなればいい。理由が分からなければ勝てないだろうけどな。ワッハッハッハッハー-
僕は腹が立った。立って立って仕方ない。しかし、言い返せない。僕の眼には止まったばかりの涙がまた流れていた。
「強くなってやる。そしてお前を見下してやる。絶対に、絶対に!」
-良い意気込みだ・・-
きっと今の僕の眼には殺気しかこもっていないだろう。
でも仕方ない。
それは、僕が望んだ世界を滅ぼすためなのだから。
僕は、それから毎日強くなった。
アイツを殺すために
アイツを見下すために
その憎さが頭から消えないのだ
その憎さが僕を強くするのだ
毎日、毎日・・・。
そして、ある時、僕を落ちこぼれといった奴に会った。まだ生きていたのか。
「あー落ちこぼれのノルン、はっけんー」
あいつは僕をバカにする。ぼくはあいつを殴った。
相手は気を失った。
良い景色だ。僕はあいつを見下すことができた。そう思っていると、
バタンッ
「すいません。」
誰かが急にぶつかってきた。被り物で顔がよく見えないが、女なのは確かだ。
すると、風が吹いてきた。
そして、僕は見たんだ。
髪は真っ白で、眼は獣のように赤く輝いている、
人のような魔物を。
「魔物?!」
すると、女は僕をひと気のない所へ連れて行った。
「このことは誰にも言わないで」
「なんでだ。」
意味が分からない。
「実は私、半分魔物の血が混ざっているの。だから、人に知られるとまずいの。」
「お前のような奴は死んだ方がいいと思うが。」
僕はそう思う。どうせこの女はこの世に災いをもたらすだけだ。ただでさえ人が死んでいっているのに。
それが僕の親切だからだ。
僕が剣を振り上げると・
「そうですね」
女は悲しそうに笑った。
桜のように。
僕の胸は高鳴りを覚えた。その時だった。
「いたぞー、人のような魔物が、殺せー」
すると、僕はもう動いていた。
気付くと、女を殺そうとしていた奴は死んでいた。
「ありがとう。」
女はそういった。桜のように顔をピンクにさせて
「私、サクラと申します。あなたの名前は?」
サクラ、僕の好きな花。
「ノルン・・・。」
そう言うと、サクラは嬉しそうに走って行った。
桜の香りを残して
僕は、日の出と共に目を覚ました。
僕は十分強くなった。
しかし、何かが足りない。
それを探し求めるために、今日も強くなろうとしたが、
余計、足りなくなるだけだった。
ドゴゴゴーン
地震だ。あの神がやったのか?
このままではもうすぐ世界が本当に消えてしまう。
僕は人がいる方へ向かった。
そこにはサクラがいた。魔物のようなサクラが。
人々を食い殺していた。
もう人は死体の方が多いだろう。
そして、サクラは僕に気付いた。
獲物を狙う魔物のようにこっちに向かって走ってくる。
しかし、当然ぼくがサクラを殺せるわけがない。
サクラは僕のかたにかじってきた。
痛い。サクラが怖い。でも愛しい。
気付けば、サクラに抱きついていた。
あ 僕はサクラが大好きだ。
「サクラ・・・。」
そうつぶやくと、肩の痛みがだんだん和らいできた。
そして、サクラを見ると泣いていた。
「ごめんね、ノルン、ごめんね」
僕は慰めるように頭をなでた。
-愚かな人間だな、ハッハッハハー-
あの声だ。そしてアイツは姿を見せたんだ。
醜くこの世のものではないようだった。
-その女の為、にそこまでするなんて-
「僕はサクラのためには何だってする!」
-本当に愚かだ、人間というものは本当に愚かだ。-
「僕はサクラいたから、今ここにいるんだ」
-うるさいだまれ!そんなきれいごと言えないようにしてやる-
醜い神は剣を振り上げた
僕も迷わず剣を振り上げた
サクラを守る為
この世界を守る為
僕自身を守る為
絶対、勝つ!
しかし、神は強かった。
心も体もズタボロにされた憎い神
その心を癒してくれたサクラ
この世界を守る!
-お前強くなったな。-
そう神が呟いたとたん、、、
ザクッ!?
手が切られた。しかし、僕には守り抜かなければいかなければならないものがあるんだ!
ザクッ!!!
-なにっ?!-
僕は神の心臓を貫いた
神は黒い粒と消えていった
勝った
僕はサクラに抱きついた
この世界を守ったんだ
そして来年もこれからも桜は咲き続けるだろう
ドラゴンの鳴き声とは関係なしに
永遠に・・・
皆様は世界が消えて欲しいと願ったことはありませんか
それは終わりの扉をひらいてしまうかもしれません
初めて投稿しました
結構自信作です
読んで下さってありがとうございました