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その奴隷、いつか幸せにすることにしました。

一旦完結の舌の根も乾かぬ内の投稿すみません。


ジャンル恋愛なのに、恋愛要素薄すぎると思い、ほぼご都合主義ですがあげてみました。

それから変態です。変態がいます。苦手な方は、Uターンを。


楽しんで頂けたら幸いです。


尚、料理が出てきますが、全てフィクション・作者の妄想だと思ってください。







 モリが【お仕事】をした次の日、お疲れ様の意を込めて美味いものを食べさせたくなった本日、手に入れた調味料で料理リベンジ!をします。

 と言っても、我々根なし草のため、宿に泊まって台所をお借りします。

 宿屋の食堂に極力邪魔にならない時間帯の夜中に仕込みだけ。

 作るのは、明日の宿屋の朝食時間が過ぎた後、またお借りして作る。


 こんな時、住まいが欲しいと思ってしまうなぁ。

 外で防御結界とやらを張ってもらい、獣身のモリに引っ付いて眠るのは別に苦痛ではないけど。

 人の街で目隠しは目立つので、モリは目を閉じて行動している。



 さて、先ずは、マヨネーズ作り。

 酢が無くて呆然としたけど、レモン(こちらでリマウと言うらしい)見つけたから、それで恐る恐る作ったら出来た!

 卵とレモン汁と塩少しと油で、マヨネーズ!


 次はチーズ作り。

 牛乳モドキ見つけたから、沸騰する前まで温めてレモン汁投入して混ぜて分離するまで放置。

 分離したら手拭いみたいな布で分けて完成。

 分けたホエーは、栄養たっぷりなのでデザート用に凍らしておく(モリに魔法を使ってもらった)。


 途中で、モリが後ろから抱きついてきて、「僕を使ってよ」と、人の後頭部にちゅっちゅっと何かを押し付けてきたから、マヨかき混ぜ担当にしてやったぜ。


 何してくれてんだ、全く。

 料理は、戦争だぞ?!邪魔すんな!


 次は、コンデンスミルク作り。

 あぁ、貧乏がこんな所で役立つとは。

 日本でお隣さんからもらった苺にどうしてもコンデンスミルクが欲しくて、作ったんだ。

 ただ、牛乳モドキとその量1/5当たりの砂糖を入れて、中火で煮るだけ。ひたすら30分くらいかな?焦げないように、気を付けながら。


 途中でモリがまた後ろから抱きついてきて、今度は耳にフゥッと息吹きかけて、ハムハムしやがったから、煮詰め中の鍋を任せた。絶対焦がすなよ。

 耳を攻撃された時、ふぎゃーっ!と叫んだら、宿屋の人達集まった。お陰で明日、味見させる事になった。このやろう。


 出来上がったもの達は、冷蔵庫がないので部屋に持っていって、モリに保冷の魔法かけてもらう。


 部屋はベッド一つと小さなテーブルセットの六畳くらいの部屋。

 奴隷として扱われるモリは、ベッドで眠るのを想定されてないことにイラッとしたけど、モリ猫で眠ってやる。


 そして、私はモリに説教するため正座をさせた。


「ちょっとモリ!」

「なぁに?」

「料理中、変なちょっかいかけるの止めてよ!」

「へぇ~?料理中じゃなければ良い?」

「人はそれを屁理屈と呼ぶ!」


 反省の色が全く見えないモリに、何とか反省させるため考える。


「モリ君や、君は味見したくないのかね?」

「味見?」

「さっき作ってきた調味料の数々!ちょっと味見させようと思ったのにな~」


 コンデンスミルクに、ただならぬ興味を引かれていたので、甘味好きと見た!

 後に、私が鬼の形相で鍋から目を離すなと言ったから、凝視してただけだったと判明。

 

「味見…したい。ご主人様、の、食べたいな」

「そうであろう、そうであろう。では反省!」

「うん。料理中に、耳かじってごめんなさい」

「ピンポイントだね」

「耳がご主人様の弱点で、可愛いと思ってごめんなさい」

「は?」

「感じやすいご主人様が可愛い過ぎて、もっと触りたいとか舐めたいとか思ってごめんなさい」

「ふぁっ?」

「ふぎゃ~なんて可愛い反応するから、思わず押し倒そぅむがむが」


 止まらない変態的な謝罪に、思わず正座してるモリの口を押さえる。


「なっ、へ、変たっひぎゃーっ!」


 あろうことか、口を押さえる手を舐めて来やがった!手を引こうとするのに、強い力で手首を取られて動けない。その間も、ぬるぬるする感触にぞわわ~とし、パニックになる。


「やめ、ひゃめ」

「あぁ、ご主人様はここも弱点なんだねぇ」


 見えて無い筈なのに、しっかりこちらに顔を向けて、ニィと笑う。目隠しが無い分、顔全体が見えて嬉しそうなのがよく分かる。

 こちらにもう一方の手を伸ばし、頬を捉え撫でる。


「ウフフフ…真っ赤で可愛い」


 それ、熱感知の真っ赤だよね?!

 羞恥からカチッと固まった私。

 モリは立ち上がり、ゆっくり私に覆い被さる。

 バランスが取れず、直ぐ後ろにあるベッドに二人で傾いていく。

 倒れながら背に手を回され、倒れる衝撃が柔げられるが、もう私は思考停止。銅像のように固まる。

 頭の横に肘を突き、物凄く顔と顔が近い距離で艶かしい声が響く。


「は…ぁ…くっ、ご主人様ぁ、助けて…」

「ひっ」


 キスされる?!

 心臓が、バクバクしてるのが分かる。

 バイト三昧だった私は、彼氏なんていなかった。男の人とこんな雰囲気になったことなんてなかった。

 怖…


「あ、足がぁ~助けて~」


 ……あ?


「ご主人様、足が、足がビリっビリするぅ~」

「…は?」

「どうやったの?魔力感じなかったのに足が…うぅ」


 正座で痺れただけかよ!

 何だろう、イラッとする。

 私は、その体勢のままモリの足を蹴ってやった。

 真夜中に、モリの叫び声がこだまする。けっ。

 

 ファーストキスかと、怖いながらもドキドキしてしまったのが何か悔しくて、三回蹴ってやった。


「うぅう…足が…」

「ふん!味見ナシ!椅子で眠れば?おやすみ」


 床でうちひしがれるモリに、冷たく言い放ってベッドに潜る。

 バーカバーカ!

 ムカムカするけど、真夜中だったし直ぐ眠ってしまった。

 



 深い寝息が聞こえる。

 優希が眠るのを待っていたモリは、そっとベッドに近付くと腰掛ける。


 モリは瞼を開き、その濃く深い紫の目で優希を見つめ、髪を撫でながら、反応が無いのも構わず話しかける。


「……ご主人様?罰を与えるなら鎖で拘束か放り出すか腕をもぐとかしなきゃ駄目だよ?だからこうやって、付け込まれるんだ」


 髪を撫でている手が移動して、頬をふにふにする。


「奴隷に手料理御馳走したり、お願いしたり……代わりに涙を流すなんてしちゃいけない。飢えてるんだから。隙を見せたら、頭からバリバリ食べられ…」


 スカーッと大の字で眠る優希を見て、実に悪い笑顔でクスリと笑う。

 

「隙しかないから、食べても良いよね?僕は優しいから味見だけにしてあげる」


 実に上から目線で言うと、優希の唇に同じものを重ねる。執拗に優希の唇を(ねぶ)る。その奥までゆっくり深く。

 優希は知らぬ間に、ファーストどころかセカンド、ディーむがむがまで終わっていた。


 しかし、これは優希も悪い。

 本人は気付いてないが、獣身のモリに既に自分からファーストキスは捧げてる。


 モリが満足するまで、部屋の中には濡れた音しか響かない。無意識に優希の口が、モリのそれを食べようと少し動く。

 劣情を煽られ、他の部位にまでその唇が手が移動しようとすると、優希が身じろぎする。


「ん…ぅう…」

「おっと、ここから先は意識ある時がいいよね?」

「…まぐ…ろ」

「またマグロ?」


 この状況になると大体『マグロ』が聞こえた。

 後で聞くかと思うモリ。優希の寝言は9割食べ物だ。


「さて、目を取り戻した事いつ言おうかな~」


 楽しそうに言い、猫に変態すると優希に寄り添って丸まる。


 もう、空は白んでいた。




 目が覚めると、もう日は高い。

 こちらに来てから、夢で寿司を食うシーンがよく出てくる。

 昨夜のに限っては、マグロばかり口に突っ込まれ、うんざりした。コーンが一番好きなのに。

  

「私、そんなに寿司食べたいのかな?寧ろケーキとか御菓子が食べたいんだけど…?」

「おはよう、ご主人様」

「ん~おはよう。ベッドもたまには良いやね。さてと、今日は異世界料理堪能させてやる!」

「フフ、楽しみ」


 味噌や醤油が無いから、洋風になってしまう。

 作ったのは、

 カッテージチーズとトマトモドキのパスタ

 マカロニっぽいグラタン

 臭みの少ない干し肉でポテトサラダ

 凍らせたホエーにコンデンスミルクと牛乳入れてぐしゃぐしゃ潰して、ホエーシャーベット。


 奴隷が食堂で食べるのは駄目だと言われ、苛々しながら作った物を部屋に持っていく。

 

「さぁ!食べるが良い!」

「いただきます」


 私の真似をして、モリが言う。

 パク……カッ、ガツガツガツ。

 物凄い勢いでモリが食べ進める。

 …いや、そんなことより…一口目で見開かれた瞼の裏に目玉があった……目玉があった!?

 私は、二度見した。


「も、もり?」


 ガツガツガツガツガツシャクシャクモグモグ


「もりさんや?」


 ガツガツガツガツモグモグモグ

 溢れ落ちそうなほど開かれた目と目線が合った。

 綺麗な濃い紫の目は、涙で潤んでる。


「も、もりもり?」

「ごしゅ、んぐ、じんむぐ様……美味しい」

「よ、良かったね?あの、それより」

「何これ、美味しい」

「あ、うん。あの、それより、ね?」


 モリの目から、ぽろぽろ涙が溢れる。

 目玉まで溢れたら大変だと思い、思わず涙の下に手を差し出す。


「モリ、目玉、落ちる、大変」

「…………えっ?!」


 私の言葉がやっと届いたのか、モリは自分の瞼に手をやる。


「あっ!あ~。アー、ゴ主人様ノゴハンデ目ガナオッター!ワーイ…」

「マジでっ?!」

「ぇ?」

 

 モリの聞き返す言葉も耳に入らず、モリに抱き付く。


「良かった、良かったね!よ゛がっだぁ~!」

「……」

「凄い!地球料理、す、すごいよ~!」


 感動に喜び震え、モリの背中をバシバシ叩く。

 良かった良かったと何度も言うと、固まってたモリがぎゅうっと抱き締め返してくる。


「うん…うん、ありがとう。ありがとう、ご主人様のお陰」

「モリに目玉生えて良かった~!」

「……う、うん。…うんそうだね、ご主人様は最高だよ。……僕、幸せだ」

「地球の料理がだよ~!!うわぁ~ん!」


 お互い抱き締め合ったまま、泣いた。


 しっかし、すげぇ!!どれがどう作用したのか、すげぇ!ホエーか?チーズか?

 ミラクル起きたよ!故郷に感謝!


 その後ぐすぐすと二人で鼻すすりながら、私はもっと食えもっと幸せになれと、モリの口にご飯を突っ込んだ。

 あまりに目を開くから、少し心配になる。


「モリ?溢れたら大変だから、まだあんまり目開けない方が良いんじゃない?」

「あー、うん。ご主人様は、そのままでいてね」


 よく分からない返答が返ってきた。


 街の観光にもう一泊する予定だったけど、昼間に渡した調味料の事を聞きに宿屋の人の来襲があり、あまりにしつこいから逃げた。

 モリにご飯もベッドも用意しない人達に、誰が教えるかってんだ!


 街の外の川原まで走って(モリ犬が)、岩に座る。

 獣身でもちゃんと目玉が入ってる。

 マジマジ見て、また喜んだ。


「ちゃんと見えてる?」

「うん」

「痛くない?」

「うん」

「良かったねぇ~」

「うん。ありがとう」

「故郷に感謝だな」

「ううん。ご主人様に」

「そうか、じゃあ故郷代表として受け取っておこう」

「気持ち悪くないの?」

「はぁ?何で?」

「ううん、じゃなきゃいいや」

「目玉があるとよりいっそういい男だよ、モリは!」

「フ、へへ」


 突然、人身に戻ったモリがガッと私の腕と後頭部を掴む。


「ん?むっ?!」


 ぶちゅっと、キスされた。

 直ぐ離れて、にっこり笑ったモリが、


「ありがとう。大好きご主人様」

「ぎ、ぎゃあぁぁ!私のファーストキスがぁ!」


 パニクった私は、モリにパンチしてハッとなり、目玉が取れてないか心配するけど大丈夫だった。ほっ。

 後々まであの時は、取れそうだった危なかったと言われ、何故か私が謝罪するはめになる。

 解せぬ。


「やっぱり、家作ろうね?ご主人様」

「急にどしたの?」

「初めてが外じゃ嫌でしょ?」

「何の?」

「ウフフフ…」

「怖い!」

「酷いなぁ」





 これからずっと先も、モリが怪我する度今日のメニューが出ることになる。

 目玉が生えたのに、怪我が治らない謎を優希は一生分からなかった。





 ――数年後――


 私は、膨らんだお腹を擦りながら、にまにましている。

 そんな私を見て、モリもにまにましている。


「モリ、幸せ?」

「うん。凄く」

「私もだ」






 異世界人に無理矢理身体から魂まで売り付けたら、幸せになりました。




ありがとうございました。


これにて、一先ず本当に完結です。

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