表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

解約方法を……いえ、やっぱり良いです。

 (前の粗筋)


 玄関開けたら、違う星にいました。

 目玉取られた変態が、いつの間にか私の奴隷になりました。






「奴隷断固拒否!」

「もう、無理~。隷属の契約したもん」

「何それ?」

「隷属。ご主人様の奴隷になったの。魂までご主人様の物」

「なんでそんな事したのよ?!解約?解除は?」

「教えない」

「おいー!」

「困るものじゃないでしょ?離れないようにしただけだよ?」

「いやいやいや?そんなのしなくたって、私モリから離れたら即魔物のご飯だから!」

「じゃあ、良いじゃない。さて、ご主人様?ご命令を。眼はないけど、ちゃんと出来るから。捨てないでね?」


 見えてない筈なのに、きっちり私の顔の前に近付き首を傾げて言う。その口元は、終始楽しそうに笑っている。


 やだこの人、話通じない。

 かといって、今私に出来ること何もない…。

 取り合えず、今は…


「はぁ。綺麗な水あるとこは?」

「え?」

「綺麗な水!」

「かしこまりました。ご案内致します」


 まるで執事のように慇懃に礼を取り、了承するモリ。

 この人、絶対ふざけてる!


「じゃあ、はい」

「なに、して?」

「見えないでしょ?方角教えてくれれば行くから。暗いし、危ないからゆっくりだけど。手より肩に掴まった方が歩きやすい?」


 モリの手を取り方角を聞くが、モリは固まったまま。

 細く長い指の大きな手は以外にもさらりとしてたけど、やっぱり冷たかった。


「モリ?痛み出した?大丈夫?おんぶする?ここで待つ?」

「……ウフフフフ」

「こわっ!」

「酷いなぁ」

「いきなり固まって、笑い出したら怖いよ。歩ける?」

「はい。ご主人様」

「それやめて。優希ね」

「優希様」

「様無し」


 見えない筈なのに、しっかり方角を指し示したモリの手を引きながら歩いていると、暗い森の中で、私だけ転びそうになりながら湖に辿り着く。

 そのまま飲めると言われ、納得。とても綺麗でおいしい水だった。


 転びそうになる度、モリが支えてくれたけど…見えてないんだよね?得体が知れなさすぎる。


「はい、じゃあモリ座って」

「うん。突き落とすの?」

「馬鹿!なんでそんな事しなきゃならないの…全く、思考回路がさっぱり理解出来ないよ」

「何するの?」

「拭くの」


 そう言って、モリの目隠しに手をかけ包帯を外し、湖に浸し絞ったハンカチでモリの顔を拭く。


 モリが目を開けると黒い空洞があり、その穴に言い知れぬ不安と痛々しさが伝わり、あまり直視出来なかった。


「…優希?」

「ん?時間経ってるからカピカピだよ」

「何してるの?」


 大人しくされるがままだったモリが、心底不思議な声で聞いてくる。


「拭いてるの。血液はね、バイ菌…えっと良くないものが繁殖しやすいんだ。傷口が腐ったり熱が出たりするから消毒したいけど、薬とか持ってない…よね」

「……」


 説明するが、何やら考え込んでいるみたい。

 まぁ、私の視覚的に耐えられないというのもあるけど。


 根気強く顔を拭い、私の白いブラウスの袖を必死で破り包帯代わりにモリの目に巻く。

 今度は服だ。


「モリ、服脱いで。火の側ね」

「優希……異界人は、情熱的だね」

「代わりにこれ羽織って…って、情熱的?何が?

 寒くない?大丈夫?」

「……ん、うん。うんそっか、そうだよね」


 血だらけになった上の服を預かり、代わりに私の上着を肩に掛ける。

 服くせっ!汚れ酷い!

 落とせるだけでもと、もみ洗いをする。

 ついでに頬ずりされて、頭にねっとり付いた血も湖に頭突っ込んで流す。

 特に寒くなく暑くない。いい気候だ。


「さて、水だけじゃこんなもんか。モリ、傷は本当に大丈夫なの?何か…ここら辺薬草とか生えてない?」

「……」

「モリ?」

「……」

「寝た?なんて器用な寝方…」


 体育座りで寝てるモリの腕を外し、横にする。

 

 私も横に座り、焚き火の近くに木の枝2本立てて、モリの服を掛ける。


「さて、これからどうなるんだろ…」


 不思議と不安や悲しさが無いのは、この星の人の協力者を得られたからかな?

 変態だけど。


 見たことない夜空。

 見たことないケモミミ生えた変な人。

 知らない世界。


 まだ、現実味がないからか…。


「取り合えず、生きる方法と帰る方法を探す…そうだ、奴隷解除の【命令】をすればいんじゃないか!

 あとは、やっぱり医者探して…。

 魔物が出るって言ったけど、会わないな…そこも教えてもらわなきゃ……

 宇宙船は無さそうだし。帰れないのかな…」


 一人暮らしが長いと、独り言が半端ない。

 お腹空いてきたし、眠るか!


「おやすみ、モリ」



 私は、何も分かってなかった。

 もう帰れない事も。

 変態奴隷にずっと執着されることも。

 全て手遅れなのも。



 眠ったと思ったモリが起き、優希をじっと見ている。

 半分だけ見える口元が、ニィとつり上がる。


「フフ。絶対離さないから、早めに諦めてね?優希」


 優希の肩に掛かるほどのまだ濡れた髪を手に取り、口付ける。

 シュワッと水分が飛んでいく。


 「やっと見つけた。ご主人様」



 優希はその夜、でっかいゴ○ブリホイホイにかかった夢を見た。


「うぅ…。捕まった…助け、て…」






 目覚めると、青空!

 キャンプしてたかな?

 あ、そうか。人生初野宿だった。

 少し、がっかりする。


 身体を伸ばそうと手をあげると、もふっとしたものに触れる。

 えっ?動物?昨日言ってた魔物?!食われる!

 驚いて飛び退くと、馬より少し大きめの白い犬が私の枕になっていた。


「デカイ…デカイ犬だ」

「犬じゃないよ。貴女の奴隷モリだよ。おはよう優希」


 確かに昨日聞いたモリの声が、犬から聞こえる。

 裏付けるように、犬に両目は無い。


「モリ!?」

「なぁに?怖い?」


 何故かしてやったりという雰囲気が伝わる。


「さ、ささ触らせて」

「え」

「ちょっとで良い。撫でさせて触らせて」

「へ、変態」


 お前に言われたくないわ!ちょっともふっとしたものが好きなだけだ!

 私の異様な雰囲気に、モリは後ずさる。

 ちょ、逃げるな!


 その後、やだぁ触らせてくれよ~!と駄々こねた私に恐る恐る近付いてきたモリを確保して、くんかくんか撫で撫でしている。


「あぁ。癒し。そうだよ、訳のわからない状況に追い込まれ心が疲弊してた私には、癒しが必要だったんだよ」

「優希?」

「ん~?」

「何で?」


 何が?

 大人しく触らせてくるモリは、理解不能と言った声音で固まったまま動かない。

 さらさらの真っ白短毛。背中は少し固めの毛、それに反してお腹や首周りの毛は、ほわほわ…おっといけない涎が。


「何が~?」

「怖くないの?」

「中身、モリでしょう?意思疏通出来るわんこなんて、全人類の夢だよ?」

「変な優希。犬じゃないのに。ちなみに、猫と虎と蛇にもなれるよ?」

「……」

「優希、目が落ちそう。何でキラキラしてるの?あと涎」


 もふりたい全てを網羅しているなんて!

 興奮が止まらない。


「お、お願い!お願いします!全部触らせて!」


 えらく戸惑った雰囲気で次々と姿を変えてくれ、私ははぁはぁしながら、ドン引きしているモリそっちのけで一通り愛でた。


「……幸せ」


 ぐったりしているモリが、「計算が狂ったなぁ」なんて言ってたのは、聞こえなかった。




お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ