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願いの形  作者: 白猫ノ夏
1/2

第一部 〜始まりの夏〜

願いの形    





これは普通の中学生が不登校になって二年が過ぎようとしていた。

そんなときに偶然訪れた少女によって

楽しかったあの頃の学校生活に戻りたいと願う少年と少女の

願いを叶えるひと夏の物語が今始まる・・・・かも

僕の居場所はどこにある?






この想いを空高く、君に届くと信じて待ち続ける。

いつまでも、いつまでも。

願いが届き叶うまで、いつまでも待ち続ける。

そして今日もまた願う、あのどこまでも続く空に。

願い続ける、いつまでも、いつまでも。

君が帰ってくる、その日まで、願い続けよう

そしてもし帰ってきたのなら、こう言って出迎えよう

「おかえり」そしたら君は

「ただいま」そう言ってくれるだろうから。

僕は願いながら待つ、君が帰ってくると信じて。

いつまでも、いつまでも。




ぷろろーぐ 出会いのかたち




中学生活もあと一年もない

そんな梅雨の終わりのある雨の日

いつものようにパソコンつけっぱなしで寝ていた高凪裕二は

玄関のチャイムの“び〜”と言う音で起こされた。

裕二は(誰か来たのか?)と玄関まで行くと

ドアを開けた。そこには見知らぬ女の子がいた。

髪は黒い真珠のような色で目も黒い真珠のような色で

それでいて服の色は真っ白なワンピースそんな格好の少女は

「あ、あの 高凪裕二君ですか?」と言うではないか(なんだ?この女の子は)

裕二が「そうですが、なぜ僕の名前を?」聞き返すと女の子は笑顔で答えた。

「私、西川東中学校三年C組の涼霧愛花って言います。」

(西川東中学か〜・・って)

「僕と同じ中学校じゃないですか!」驚いた裕二を見て愛花は

「あれ?高凪君もしかして覚えてないの?

この前の西川東中学侵入事件の犯人の高凪君が逃げる途中でたまたま

いじめられてた私を助けてくれて、で、そのせいで先生に捕まったとこれで思い出した?」

裕二は(あ〜)

「そんなこともあったね〜でもなんでそのいじめられてた君が

学校サボってなんでここにいるわけ?」

愛花はちょっとあきれた様子で答えた。

「そんなこともあったね〜って自分で助けといてその程度ですか〜

え〜とここにいるわけは私あの日以来学校行ってないの

ず〜っと家に居て今日になってあっそういえばって君を思い出したの」

裕二は「なんで僕なんだ?先生とかじゃ駄目なのか?」と言う

すると愛花が急に泣き始めたので

「ごめん、ごめんとにかくこのままここじゃなんだし

なか入りなよ、話はそれからだ」裕二がそう言うと

「う、うんでも入っていいの?親とかいないみたいだけど」

「あぁそれなら心配しなくてもいいよ、うちはそういうの気にしないから

あと近所の人に見られると後々面倒だし」

「じゃあ、おじゃまします。」

家に入った二人はリビングに向かうとまずちょっとした自己紹介から始めた

「僕は高凪裕二で十四歳の中学三年生趣味はゲームと読書くらいかな

あとは休みの日だと友達と自転車で

本屋を回るっていう事しかしないかな?で、そっちは?」

「えっと私は涼霧愛花、十五歳の中学三年生

趣味は読書と絵を描く事とお花を育てることです。」

「へ〜読書ってのは同じなんだね!涼霧さんはどんな本を読むの? 」

「恋愛小説とか推理小説を少し読むだけですけど」何冊くらい読むのかと

裕二が聞いてみると「五十冊くらいですけど・・・あ、あと今言ったのは一ヶ月で読む

だいたいの冊数で一年だと・・・」これ以上聞くと大変なことになりそうなので

裕二はさっさと話を進めることにした。

「い、いきなり本題なんだけどさっき話してた先生のところへ行かないのか?」

裕二は言ってから、しまった!と思ったが遅すぎる。

愛花はまた泣き出したのだ。

「ごめんさっきの話いきなり出しちゃって

でも話してくれないと僕がどうしていいか、わからないから話してくれる?」

愛花は泣きながら小さくうなずいた。

「で、でもちょ、ちょっと待って」と、言ってポケットからハンカチを取り出し

涙を拭いてそのハンカチをしまい話し始めた。




第一章 話のかたち




私は話す、あの日、あの時、あったこと。

全ては話さず、少しだけ嘘も加えてあなたに話す。

全て話せば楽かもしれないけれど

その分、あなたを傷つけてしまうかもしれないから。

その分、私を苦しめるから。

全ては話さず、ちょっとだけ。




「あの日、高凪君が来る前に、SHRが終わってもこない先生を

呼ぶために会議室に行った時、まだ会議は終わってなかったの、だから私はSHRが

終わったことを教えるために会議室の扉を開けようとしたのその時、

部屋の中で私の名前が出てきたの。」

先生A「さっき話していた涼霧の事ですけどほかの先生方も涼霧

やったとお思いですか?」

先生B「まあ、あの時そばに居ませんでしたから、なんとも言えませんが

西崎が、やったのは涼霧だと言ってるのなら彼女がやったんでしょう。」

校長「じゃあ、先生方もあの日、涼霧さんが放課後

自分の教室の窓ガラスを割ったと思っているわけですね?」

全ての先生の言葉がそろった。

「「はい」」

愛花には先生たちが笑っているように見えた。

愛花は会議室の扉を勢い良く開けた。

「校長先生!あの先生たちの言うことを信じているんですか?」

先生たちは口々にこう言った。

先生A「なにを言っているのかな?君は」

先生B「校長先生、彼女の言っていることは聞かなくていいですよ。

ガラスを割った生徒の言うことなど」

先生C「そうですよ、聞かなくていいんですよ、どーせ、ほかの生徒がやったとでも

言いたいんでしょう?涼霧さん」

先生の言っていることがイマイチ見えてこない、そして先生たちの言っていることが

小学生レベルの言い争いにしか愛花は

先生たちは小学生?もしかしてどこかの悪の組織の手によって頭の中を

いじられて小学生みたいなことしか言えなかったり小学生みたいなことしか出来なく

なっていてたとえば・・・スカートめくりとか好きな女子をいじめたりと・・・か?

いやそれはいけないよ先生方、ナントカ猥褻とかナントカカントカ法で捕まっちゃうよ?

愛花は妄想爆発寸前の状態でありながらも

(駄目、落ち着くのよ、こんなことを考えてないで

私はやっていないのだからうまく説明すれば分かってもらえるはず)

「私はやってません!西崎君や小林君がやったんです!

あの日西崎君と小林君と一緒に掃除をしていてそしたら西崎君と小林君がサボってたので

注意したんです、そしたら西崎君がモップを投げてきて

私はそれを避けたんです。そしたら窓ガラスに当たって割れたんです。

それを見た西崎君と小林君が先に帰ってしまって、

一人でガラスをかたずけていたんです。」

でも愛花のその期待とは大きく異なる結果になった。

先生A「この期に及んで人のせいにするなんてひどい子ですね。」

先生B「そのとおりですね」

校長「今の子供たちはみんな同じ事を言いますね。私はやってません

だれだれ君がやったんです。と、まあ一応その子達に話を聞いてみます。

涼霧さんの処分はそれからですね。」

愛花は今にも泣き出しそうな顔で「そんな!」と言いほかの先生が

クラスに向かう姿を会議室で見ていたら

校長がちょっと怒ったような口調で言った

「君も早く行きなさい!」と

愛花は(私が怒りたいくらいよ!)と

思いながらも「は〜い」と言い残し教室へ向かった。




第二章 最初のかたち




出会いは突然やって来る。

いろんな人との出会いと別れを繰り返し

今日もまた、出会いがやって来る。

運命の出会い?それとも感動の再会?

人は出会いと別れを繰り返し

運命、夢、奇跡、それぞれの出会いと

失恋、転校、そして死も、別れは辛いけど

別れた人とは、いつか、どこかで、また出会える。




教室に戻った愛花は、自分の席に座り教科書を出しながら

さっきの先生たちの話のことを考えていた。

何で私の話を聞いてくれなかったのかしら。

そう思いながらも国語と英語の授業をこなし中休みになった。

トイレを済まして教室に戻る途中、朝、会議室で愛花が先生たちに話した。

今、最も会いたくない人達に会ってしまった。

名前は西崎海木と小林高明、ガラスを割った奴らである。

西崎が「涼霧、お前こんなとこでなにやってるんだ?」言ってきたが無視する。

「おい、聞いてんのか?しょうがない高明、手伝えあそこに連れてくぞ」と言うと、

小林がいきなり腕をつかんできた。愛花の必死の抵抗も虚しく体育館第二倉庫に

つれてかれてしまった。




      ○




体育館第二倉庫に連れてこられた愛花はさっさとチャイムが鳴って

二人が教室に帰るのを待つことにした。

がしかし!西崎がいきなり話しかけてきた。

「おい、涼霧お前、先生たちにあのこと喋っただろ!」

愛花は「あぁ〜」と言いながらも「あのことって何のこと?」と、からかい始めた。

西崎がちょっと怒りながら「涼霧お前、知ってて言ってるだろ!」

愛花は笑いをこらえるので必死で西崎の話など聞いちゃいない。

一方、倉庫の角にいる小林は普通学校には持ってきてはいけない。

ランキング第一位のゲーム関係で、今、小林がやっているゲームは

エンド・オブ・ドラゴンという最近人気のRPGのゲームである。

愛花はまだ笑いをこらえている。

でもだんだん西崎もうざいと思い始めたのか言葉に棘が出てきている。

それにきずいてもなお笑いをこらえる愛花を見てとうとう耐え切れなくなった西崎は

愛花のことを叩いてしまった。

西崎は好きな人を叩いてしまった罪悪感と

うざいと思ったやつを叩いたときのスカッとする快感が

心の中でごっちゃになってしまっていた。

でも本当は罪悪感のほうが勝っているのに自分に嘘をついてまで

自分のプライドを守ろうとしてしまったのだ。

愛花は泣きながら、“いった〜い”おもいっきり叩かれながらも

昨日読んだ本、久しぶりに泣けたな〜と

この状況ではまず考えないことを愛花は考えていた。

そんな時、普通、人の来ることのない愛花たちがいる

倉庫の扉が勢いよく開いた。

愛花 西崎 小林が扉のほうを見るなり

三人とも隠れる場所がないかと倉庫内を見回してしまった。

まぁ普通この時点で見つかっていることは誰にだって分かる。

愛花はとにかく謝っておけばいいやと思い先生のほうを向いた。

はずなのだが、そこにいたのは先生でもなく、警備員でもなく

その辺にいそうな、ただの少年だった。

「あとは高凪君が知ってるとおりだよ」といっきに喋って

ちょっと疲れたようである。

そこで初めて愛花の持ってきた荷物が普通、学校に持っていくような

量じゃないことに気がついた。






第三章 暇なときの過ごし方のかたち




人は暇をもてあます。

自分は何をすれば良いのか。

自分には何が出来るのか。

それが分からないから人は暇になる。

それは悪いことじゃない。

むしろ、良いことなのだと分かってほしい。




気になったのでまさかと思いながらも恐る恐る聞いてみる。

「あの、涼霧さんその鞄の中身は?」

裕二の言葉を聞いた愛花は何かわるだくみと言うやつを

思いついたような顔で話しかけてきた。

「ねぇ知りたい?鞄の中身」

裕二はまぁ入っているのは教科書と他多数だろうと思い「いや、いいよ」言った。

愛花は「なーんだ、気にならないのか」と言って自分の鞄からいろいろ出し始めた。

その内容はこうだ。

まずはお弁当、驚いたのはコンビニ袋の中に何かはいっているのか

ちょっと膨らんでいた。

まぁそんなものが何個かでてきた事くらいだ。

ほかは裕二が思ったとおり教科書や問題集などである。流石まともな中学生

愛花がさっさと鞄の中へ入れてしまったのでコンビニ袋の中身は確認できなかった。

愛花は鞄の中からお目当てのものを見つけたらしいそれは携帯電話だった。

しかも最近の機種で色は薄いピンク

愛花は携帯電話でメールを打っているらしい。

「友達に送るの?」と裕二の問いかけに愛花は「うん!」と頷いた。

そんなやり取りをしているうちに愛花はメールを打ち終えたらしい

「送信!」と言いながら送信ボタンを押す。

それから一息ついて「これであとはメールが帰ってくるのを待つだけ!」と言って

携帯電話をワンピースのポケットに入れて

「ねぇ高凪君サボってる時ってなにしてるの?」

「サボってるって言うか登校拒否なんだけ、家に居るときは

大抵ゲームやってるかパソコンで情報集めしてるけど暇なときは外に出て

本屋か古本屋を回ったりしてるよ。」

こんなことしかしてない自分がこのとき初めて情けなく感じた。

愛花はちょっと嬉しそうな顔をしてこんなことを言ってきた。

「いいな〜高凪君は私の親はいろいろうるさくて友達ともなかなか遊べないんだよね〜

ねぇねぇ高凪君、今日は暇な日?」

「う、うん暇って言うか涼霧さんが来ちゃったから涼霧さんをほっといて

ゲームとかできないし僕はもう女の子が寂しそうにしているところを見たくないから」

「そっか、じゃあちょっと手伝ってよ!」と、愛花が言ってきたので

「なにを?」と僕は答えた。

「本を探すのを!」

「うん、いいよ、で、なんて本?」と僕は答えてしまった。

これから始まる僕と彼女のむちゃくちゃ大変な本探しと知らずに

「願いの形って名前の本だよ!」




第四章 本探しのかたち1




本は人の心を落ち着かせ、人の心を躍らせて。

人は本を読み、そして色々なことを知る。

相手の気持ち、自分の気持ち、死と生を

全てとまでは、いかないけれど

色々なことを教えてくれる本を

世界中の人々に。




裕二はまずどこの会社が出してるのかを確かめるためにパソコンを立ち上げようとしたが

愛花が「ネット検索じゃ出てこないよ」と言ってきた。

「じゃあどこに売っているんだ?」と裕二は普通ネットで検索したら

でてくるだろと思いながらも言っていた。

でもその答えはちょっと意外なものだった。

いやすごくなのかもしれない

「普通の本屋には売ってないんだって、あと古本屋にも売ってないの

古本市でしか売ってないんだよ。」

それを聞いて裕二は訳が分からないと言う顔で

「古本市で?最近の本じゃないのか?」と聞き返した。

「うん、最近の本だよ」

「じゃあ、何で古本市で売ってるんだ?

古本市は古本を売ってるんだろ?」

それを聞いて愛花は「そっちのことか」と言い、ネットで調べたことを話した。

5分くらい愛花が話して「これが私の調べた事だよ」

その言葉を聞いてからちょっと考えて裕二は

「つまり、古本市で本を探していて、そしたら女の子の声がして女の子の

声がするほうに行ってみたらそこでは十歳くらいの女の子が本を売っていると、

それが願いの形だったとそれで願いの形は一回読むと消えてしまって

もう一度古本市に行って女の子に会っても女の子は、二回同じ人に売ることは

私にはできません今度は自分の願いの形を探してください、と言って消えていくんだろ

怖くないか?」

「怖くないし、本当の話かすら、怪しいから」

と愛花は言うが

「そんな、話すら怪しいってさすがに無いものは探せないよ」と裕二が言った。

「大丈夫大丈夫!ちゃんとあるから・・・たぶんね」

「うわぁ大変そうだ〜」そう言うが裕二はもう断れない

そんなことを言っていたとき突然

ぼ〜んぼ〜ん♪とむちゃくちゃでかいボールが跳ねたときのような音が家中に響き渡った。

それに驚く二人はそのおかしな音が鳴り止むまで

動けなかった。

おかしな音は一分くらいで鳴り止んだ。

愛花は「高凪君、今の何?」と訳が分からないといった顔で

裕二に聞いていた。

裕二はその言葉を聞いて話すべきか迷いながらも

「あれはきっとねーちゃんの仕業と思う」

「高凪君、お姉さんいるんだ、いいな〜」

愛花のその反応にちょっと驚きながらも裕二は

「涼霧さん、もうお昼だよ、ねーちゃんの話は昼ごはんを

食べてからにしよう」と言って裕二は

昼ごはんの準備に取り掛かった。




第五章 お昼の話のかたち




話すことは大切、でも、もっと大切なことがある。

それは食べること、人は食べなきゃ生きていけない。

そのために生物を殺すこともある、みんな生きているのに

殺してしまう、可哀相だと思うけれど。

でも、それを止めたら生きられない。




愛花の昼ごはんはかなりシンプルなものだった。

弁当箱の中におにぎりがたったの四個だけさすがの裕二も驚いてついつい

「それじゃあ足りないでしょ?」と言って普段は自分じゃ

作らないインスタントラーメンを作ってしまったくらいだ。

二人とも三十分くらいで昼ごはんを食べ終わった。

そのあと裕二はねーちゃんのことを話し始めた。

「ねーちゃんの名前は高凪水樹、性別は言わなくてもわかると思うけど女、年は二十一歳

家には週に三、四回しか帰ってこない、あとさっきのやつみたいに時々変なものを家に

設置してるくらいかな」そんなことを言い終えた裕二は愛花が自分を見ていることに

気がついた。それが分かったのか愛花はすぐに顔を俯けるそれから数秒二人の間に

沈黙が訪れる。最初に話を切り出したのは愛花だった。

「帰ってこない?」と不思議そうに聞いてきたのだ。

「ねーちゃん、朝から夕方まで働いてたいていは帰ってくるんだけど

でもたまに帰ってこない、なんでって聞いたら、彼氏のところに泊まって

彼氏の仕事の手伝いやってんだってさ」

と言うので愛花はついつい「どんなお仕事やってる人なんですか?」と聞いていた。

でもその質問に答えたのは裕二ではなかった。

玄関のほうから「殺人計画を考える仕事だよ〜」

“少々馬鹿にしてる“と言うようなものが入り込んだ言葉が返ってきた。

その言葉に裕二は「あぁ〜またあいつか」とため息混じりに言って

愛花を置いて玄関に行ってしまった。

しばらくして戻ってきた裕二は後ろにくっついてきた人を紹介してくれた。

「この人は人に誤解を招くようなことを平気で口にする馬鹿だ」

愛花は心の中で「見た目は悪くないけどその性格何とかなんないかな」と呟いていた。

「涼霧さん台詞が出ちゃってるよ、そういうのは心の中で言わなきゃダメだよ」と裕二が

クスクス笑いながら言ってきた。

心の中で言ったと思ったけどどうやら言葉になっていたらしいそう反省していた愛花に

「おーい、俺のことは無視ですか・・って涼霧愛花お前、何でここに?」

あれ?この人なんで私のこと知ってるんだろ?と愛花が考えていると

裕二が「いやいや無視してない、ちゃんと紹介するから

こいつは守屋 渡、これだけ言えば涼霧さんなら分かるはず。」

愛花はどっかで聞いたことのある名前だと考えたらすぐに思い出した。

「あ〜あの学校きて出席とり終えたら先生の隙を見つけてすぐ帰っちゃう

有名な・・・なんだっけ?え〜とサボり魔?だっけ?」

愛花は言葉という槍で渡の心を貫いた。裕二にはその槍がちょっと見えた気がした。

渡はショックを受けながらもちょっと強気で

「サボり魔じゃない!サボり神だっ!」と言った。

「あれ?そうだっけ?ってペースに乗せられすぎちゃった!で水樹さんの

彼氏のお仕事の殺人計画ってどういうこと?」

完全にねーちゃんの彼氏のお仕事が殺人計画だと思い込んじゃってるよ。

まぁ考え方によっては殺人計画なんだけどと思いながら裕二は

「先生の仕事をやりながら推理小説を書いてる人だよ」と言ったと同時にどこからか

“ピロロロロロピロロロロロ”と鳴り始めた。

渡が「メールだ!」と言って携帯電話を取り出したことによってその音の正体がわかった。

渡はメールを見るなり

「裕二わりぃ俺、いったん帰るわ、波子が呼んでるんだ、あとで波子を連れてくるかも

しれないから」と言ってさっさと帰ってしまった。

玄関の閉まる音がしてから愛花はわからないことを次々と裕二に質問した。

「波子さんって誰ですか?あとそこにあるゲームの数々は何ですか?古本市にはいつ行

きますか?」といっきに言い終えると愛花は大きく空気を吸い込んで、肺にためた空気を

吐き出した時、裕二が「じゃあ波子さんのことから波子さんは渡の彼女で

西川高校の一年生らしい、本当のことは良くわからないから本人に聞いてみて

じゃあ、次はゲームの数々、あれは渡が持ってきたもの

だいたいが格闘ゲームほかにもテーブルゲームのトランプや麻雀

ほかには恋愛シュミレーションゲームからRPGロールプレイングゲームまで

だいたいのゲームはそろってる。

で、さっき呼び出されたのはこの前の日曜日に波子さんと渡で格闘ゲームやったんだ。

ここまではよかったんだけど、ある賭けをやって戦った。

負けたほうはその日から一ヶ月、勝ったほうの言うことは必ず聞かなければいけない

それで渡は負けたんだけど」と最後の方は呆れながら言った。

「あと古本市のことだよね、まぁパソでいつどこでやるか調べてからじゃないと・・・」

と裕二がここまで言ったとき愛花が「あっ、それならもう調べてあります。」

それを聞いて裕二は感心した。

愛花は裕二の驚いたような顔を見てちょっと嬉しそうに笑顔で答えた。

「三ヶ所あります一ヶ所目は七月六日、明日ですがここは割と近いですよ。

場所は北西川にあるプラネタリウムの地下にあるホールでやるらしいですよ」

気になったので裕二は「ホール?上にプラネタリウムがあるのにつぶれないのかな?」

「それはなんか最近のナントカ磁石の技術で可能らしいですよ」と自慢げに話す愛花に

「へぇ〜、説明してもらっといて何だけど

ごめん明日は無理なんだ。ここでみんなとゲーム大会するから」と

申し訳なさそうに言った。

残念そうに愛花は「そっか、じゃあ二ヶ所目は七月七日、ここはちょっと遠いかな

絆町ってとこなんだけど電車で三十分くらいの場所にあるけど、どう?」

絆町か〜遠いな〜まぁいいか「いいよ」と言った、言ってしまった。

ちょっとって距離じゃないのに一方、愛花はちょっとした計画に

裕二を巻き込めたことが嬉しくて

心の中では大騒ぎ心臓はさっきからドキドキしっぱなし

心が回る〜♪心が踊る〜♪と浮かれながらも

「じゃあ決定!あと私は・・・」まで言って止めた。

裕二は気になって聞いてみた「あと私は?」

自分から浮かれ気分は消えたとわかった愛花は

「ううん、なんでも・・・ない」と言い残しの家を飛び出した。

残された裕二は何かまずいこと言ったかな?と考えていた。

また一人になったことも忘れて




第六章 ゲームのやり方のかたち




ゲームは暇つぶしの道具の一つに過ぎない。

でも、それを人生にしている人もいる。

いまの親は何にも分かってない、分かろうとしない。

ゲームは有害、ゲームは病原菌、そんなことを言って

子供をゲームから遠ざける。

有害なゲームもあるかもしれない。

でも、全てを遠ざけるのは間違っている。




愛花が帰ってから本を読んだ。本を読んでいると心が落ち着くのだ。

3時間くらいたった頃だろうか、外がちょっとだけ騒がしくなったのがわかった。

窓の外を見てみると雨が止み、制服を着た男女が道にあふれていた。

「もうそんな時間か〜」とつぶやきながらボーっとしてると二人の男女が

こっちに走ってくる。それを見て裕二は「もうそんな時間!」と慌てながら言って

自分の部屋のドアを開けた。

それとほぼ同時に玄関でチャイムが“び〜“と音を立てた。

「はいはい」と言ってからめんどくさそうに裕二が玄関へいって、

ドアを開けようとしたとき

勝手に開いた(開けられた)ドアから「「おじゃましまーす!」」と言いながらずかずかと

人の家に勝手にあがってきた渡と波子はゲームスペース(リビング)に入るなり

「あ〜また本読んでたな」と渡はあきれながら

「あ・れ・だ・け何度も何度も言ったのに〜」と波子は子供みたいに繰り返し言い

三人でゲームの準備を始めた。三人で

「何で僕まで手伝わなくちゃいけないのさ」と言いながら嫌々手伝う

裕二に渡と波子は声を揃えて「忘れてた君が悪い!」

と人の家にいることを忘れているように・・・

いや、ホントに忘れているみたいだ

だっていま「だいたいさぁ〜人の家でよくのんきに本なんて読んでられるよな」と

言っていたのだ。

まぁ確かに人の家と言えばそうなるんだけど

そんなやり取りをしているうちにゲームをやる準備が整った。

「それで今日やるゲームはなに?」と裕二がコントローラーを手に持ってから渡に聞いた。

「「恋愛シュミレーションゲーム!」」波子さんまで言わなくてもいいんじゃないか?

あとそんなに嬉しそうに笑顔をプラスしなくても

だいたい恋愛シュミレーションのどこが良いのだ。

「あれ?でもなんで恋愛シュミレーションゲームなんだ?対戦できないだろう?」

だが渡は“フッフッフッ”と不気味な笑い声を発しながら

「「そんな問題とっくの昔に解決できている!」」

だからなぜ!波子さんまでいっしょに言う!と心のツッコミは心の中だけに

そんなツッコミは置いといて渡は話し続ける。

「一週間くらい前なんだけど日宮に頼んどいた資料がさっ!

今日届いたんだよ!その資料ってのがこれなんだけど」と言って

渡は鞄からなにやら紙の束を出してきた。

その紙の束にはこう書かれていた。

“大勢で恋愛シュミレーションゲームを楽しむ方法”(ゲームソフトつき)

「なんだそれ?」

「これは世界中のオタクたちがときには女の子にフラれるようなことをして

ときにはのぞきやストーカーなどにまで手を出してありとあらゆる手を使って

女の子たちの生活を気持ちを調べて、研究に研究を重ね、作り上げられた。

究極の携帯ゲーム機用恋愛シュミレーションゲームなのだっ!」

「ストーカーはまずいだろ!あとのぞきって完璧に犯罪じゃん!だいたいそこまでしな

くても恋愛シュミレーションくらい作れるでしょ!」

「ストーカーも犯罪だよ」と一人仲間はずれにされたと思い込んだ。

波子が目をよくアニメに出てくる萌えキャラみたいにうるうるさせながら言ってきた。

それが渡には効いたのか心臓を押さえながら倒れるフリをした。

起き上がりながら渡は「今のは効いた!今のは効いた!」と二回くり返して言った。

「渡、これって携帯ゲーム機専用じゃない?」と裕二は壊れた渡に言った。

それを渡は「いいとこだったのにな〜」と文句を言いながら説明した。

「それは大丈夫もともと普通のゲーム機じゃ無理だし特殊なのも頼んであるから

テレビゲームに繋いで最大十人まで同時プレイが可能になったやつというわけで

各自、携帯ゲーム機を持ってきたまえ一番新しいのな」そんなことを渡が言い終えると

波子が「私、持ってきてないよ〜」と言ったが渡が「そんなこともあろうかと!」と

言いながら鞄から最新の携帯ゲーム機を二台取り出した。それを見て波子は

「やったーこれで私もできるね!」嬉しそうに笑顔で答えた。そんな波子を見て裕二は

「渡、いくらお前が金持ちだからってゲーム機何台持ち歩いてるんだ?あと渡、お前〜

僕の家に十八禁のゲーム置いていくなよな〜ねーちゃんがやって大変だったんだからな

ねーちゃん頭良いから全部女子校通ってるんだから免疫ゼロなんだよ。

次の日部屋に閉じこもって出てこなかったんだから

そしたらその次の日は僕に呪いの言葉を言いながら出掛けてったぞ」と

もうめちゃくちゃ怒ってやった、なのに渡は

「へ〜水樹さんそんなことになってたのか、どーりで今日会った時避けられるわけだ」と

のんきなことを言いやがるそんな裕二たちを止めるべく波子が

「ねぇねぇそのじゅうはちきんのゲーム私もやりたい!」と言ったがそれは逆に

裕二の怒りの炎に油を注ぎまくっていた。「わ〜た〜る〜波子さんにもやらせるきか?

口利いてもらえなくなるぞ!」と注意したのだが

「大丈夫だよあんまり激しくないのにするから」と

ぜんぜん人の話しを聞いてなかったように言うから

裕二の炎はますます大きくなる、が今度こそ波子が止めに入った。

「ストップ、ストップ二人ともゲームは良いからこの怒りを歌でぶっ飛ばそう!

というわけでカラオケへレッツゴー!」と叫んだ。

「そうだなどうせ明日これやるだろうから良いんじゃないか」渡は納得したらしい

だが、納得のいかない裕二は「渡、逃げるき・・か、っておいっ!

僕まで連れていくきか〜」と叫びながらカラオケへ直行した。




第七章 お泊り会のかたち




お泊り会、それは女子と男子の距離が最も近づく時。

そして、その逆もある。

学校行事でも修学旅行に強化合宿とあっても

男女が一緒にお風呂に入ったり、同じ部屋に泊まったり

そんなことが無いのが普通とされている。

それが嫌で人の家に泊まるのが

お泊り会。

それは人の心と身体が近づく場。




結局八時までカラオケでアニソンを歌いまくった裕二と渡と波子は

コンビニでおにぎりを買った。

渡と波子は裕二の家に鞄と制服を置いてきたので取りにいっしょに

帰っているところだったが

渡がまたとんでもないことを言い出した。

「これからお泊り会というやつをやらないかい?明日、学校休みだし」

その提案にすぐに裕二は「僕の家は駄目だよ」と言うと、

渡と波子が声を揃えて「「えぇ〜!駄目なの〜?」」と言ってきた。

「前から不思議だったんだけどなんで何かあったら僕の家ってなんで?」

だいたい答えはわかっていたが聞いてみた。

渡たちはまた声を揃えて「「楽しいから!」」

裕二が思ったとおりの答えを返してくるから

ため息混じりに「やっぱり」と答えた。

そんなことを話していると後は角を曲がれば裕二の家に着く。

そして角を曲がった時、自分の家の前に誰かがいるのを見つけた裕二は

走って家に向かっている途中で分かったその人の名前を呼ぶ

「涼霧・・さん?」

それを聞いて家の前の人はこっちを見て笑顔になるそして

「高凪君!」やっぱり涼霧愛花だった。

愛花の声を聞いて渡も「涼霧愛花がなぜここに?」と首をかしげながら

裕二たちのもとへ向かう、そんな渡を波子が追いかけながら

「涼霧愛花って誰〜?」と言った。

結局みんなで走った、そして家の前に着いて裕二は波子に

「とりあえず理由は中で聞くから渡たちも早く!」と言った。

裕二はとにかく変な噂が広がってはいけないと思っただけだが

渡と波子はニヤッとした眼でこっちを見てくる、がそれはまず無視して家に入り

リビングに行き渡はソファーにダイブ!波子はお茶を淹れにキッチンへ

愛花はリビングの入口に立ったまま

そして裕二はソファーに座って準備が整うまで待つことにした。

三分後準備が整いみんながソファーに座ってお茶を一口飲むと渡によって

お話し会とやらが始まった。ちなみに第一回だそうだ。

「で、涼霧愛花が今日二回もこんな普通の不登校の家なんかに?」と

なぜか渡が質問してた内容が(特に最後のほう)気になったもののここは黙っておく。

「一回目は相談に来たんです、それで二回目は・・・あの笑わないでくださいね」と

言ってそして立って裕二の前まで行くと

「今日ここに泊めてもらえませんか?」と言った。

裕二はそれを聞いて渡の家に泊まれば?と言おうとして口を開きかけたとき

それにきずいたのか渡と波子は裕二の口を塞いで声をそろえて目を輝かせながら

「「いいですよ〜!」」と、言った。それを聞いた愛花は

「ほんとですか!」と、ほんとに驚いた顔で嬉しそうに言った。

裕二は「うん・・・」と、答えるしかなかった。そんな顔で声で言われたら断れない

だがその言葉を聞いて喜んだのは愛花だけでは無かった。

渡と波子もまた「「やったー!」」と、言った。

結局“みんなでお泊り会!”一応ねーちゃんにも確認をとってみたが

「いいな〜お泊り会か〜懐かしいな〜今日ねーちゃん帰れないからな〜ざんねん」

というところで電話が切れた。それにしても残念そうに言うなよ。

そしてそのあと各自家に電話で伝えたが波子のところは渡がいるという理由で

渡の方なんか裕二の家だからという理由だけでОKが出た。

愛花のほうはOKは事前にもらっているとのこと

そしてパジャマなど必要なものは渡が全て用意した。下着類まで(女性用も)

愛花はなんでそんなものが手に入るの?と、裕二に聞いてきたので裕二は

渡のくだらない買い物を教えてあげることにした。

「渡はいいとこのボンなんだよねそれでこの家だって渡がここで

ゲームがやりたいって理由で隣の家を買い取って、くっ付けちゃったんだ。

だから涼霧さんも渡と話すときは言葉を選んだほうがいいよ。

ほんとに実行しちゃうから」と注意したはずだったが愛花は目を輝かせ

「家にも図書室見たいの作れるのかな〜」などとすごいことを言い始めた。

それを止めるべく

「涼霧さん・・お風呂入ってきなよもう波子さんもあがる頃だから」

「そうだね、じゃあお先に」と言って風呂場に向かった。

愛花がいなくなりため息をついていると渡と波子がリビングに入ってきた。

「お風呂よかったね〜」と言う波子は水色で水玉模様のパジャマ姿これは分かる。

「改造しといて正解だった!」と言う渡も水色で水玉模様のパジャマ姿これも分かる・・・?

「渡と波子さん!二人いっしょにお風呂、入ってたでしょ!小学校低学年じゃないん

だから別々に入る!あと波子さんは恥ずかしくないんですか?」と言ったが、

「バスタオル巻いてたから大丈夫だよ!邪魔だったから五分くらいで外したけど」

「それじゃあ、意味無いじゃないですか!」

「胸、柔らかかったな〜」と言う渡に裕二は、

「渡!お前、波子さんの胸触ったのか?この“歩く十八禁青少年”いや十八禁の時点で

青少年じゃないな“歩く十八禁男”だよな」などとネーミングしてみたが、渡は

「いや、まだ十八禁まではいかないせめて十七歳以上対象くらいだろう」と

反論してきた。「いや、絶対!十八禁だ!」とそこは譲らない裕二と

十七歳以上対象だろうと反論する渡との熱い戦いが始まったが

すぐに終了せざるおえなかった。リビングの扉が開くとピンク色で花柄模様の

パジャマを着た愛花が入ってきて

「いいお風呂でしたゆったりとフワフワ浮くことのできるお風呂は初めてでした。

あと何のお話をしていたんですか?」と感想を述べたが最後のが余計だった。

裕二はすぐさま「涼霧さんは聞かないほうが良いよ。下手するとねーちゃん

みたいになるから」と言ってお風呂場に向かった。




       △




裕二はお風呂に浸かりながら渡たち変なこと涼霧さんに言ってないかな?と思っていた。

風呂から上がった裕二が着替えを取ろうと手を伸ばした先にあった物は

さっき涼霧さんが着ていたのと同じものだったピンク色で花柄のパジャマ。

裕二は顔を顰めながら「なにかの嫌がらせか?」と言いながら少々ためらったが

これしかないのだから仕方が無い。

なんか渡の企みに乗せられている感じで気に食わないが

ピンク色で花柄のパジャマを着た裕二はみんなのいるリビングへむかった。

リビングへ着くとまずみんなの視線が痛い特に涼霧さんの目が

変なものを見るような眼なのだ。

渡は笑いをこらえながら「お、お前、ま、マジでそれ着たのか」と言ってきた。

「やっぱり渡だったのか」と裕二は半分呆れて(残りの半分はもちろん怒り)言った。

渡は「じゃ、ふふっ、じゃあつぎ、ふふふっ、いってみよ〜ふははは」

笑いながら言っているからなにを言ってるのか分かりにくい

とにかく渡につれられて全員が空き部屋に入るといつ用意したのか分からないが

いろいろ置かれていた。懐中電灯を持って渡はその部屋の扉を閉めてから電気を消した。

そのあとすぐに懐中電灯を点けるとボオォっというような明かりが部屋全体に広がった。

それをそこら辺にあった物の上に懐中電灯を置くと渡は喋り始めた。

「それでは夏になろうとしているので、なっているかもしれないが怖い話というやつを

やろうと思う、では俺から始めて波子、愛花ちゃん、裕二の順番でいくぞ〜〜〜〜〜〜〜

怖い話がないときはパスして良いよ。ただし裕二だけはパスなし、最後だから」と

言って渡の怖い話が始まり、次に波子が話し、愛花はもちろんパス

そしてついに裕二の番が回ってきた。

「裕二くん、新しいやつお願いね!」と波子が言うと、渡も

「そうだすごく怖いやつ頼む!」と言った。それを聞いて裕二は

「わかった、すご〜く怖い話だ!いくぞ

“ある日友達が家に泊まりにきたらしい。

その日の夜、友達は「腹減った!なんかコンビニで何か買ってこようぜ」といって、

二人でコンビニへ行ったらしい。

その帰り交差点で友達が「なんかが焼ける臭いがしないか?」とたずねてきた。

それに「いいや、そんな臭いはしないぞ!」と答えたらしい。

「そうかな〜確かにしたんだけどな〜」そんなことを言いながらすぐに違う話をして

家に帰ったらしい。

家に帰った二人はコンビニで買ってきたお菓子らを食べて風呂に入った後

すぐに寝てしまったらしい。

次の日の朝、起きたら友達の姿はなく置手紙すらなかったらしい。

「帰ったのか?」と呟きながら友達に電話をかけたがつながらない

いつもならすぐ電話に出るのにな〜と思いながらも気になったので、

友達の家に行ってみたが、友達の家の前には消防車が二台来ていた。

でもどこかおかしかったんだ。

どこも火事になっていないんだから。

そのことを消防士に聞いたら「それが私たちにもわからないんですよ。

朝早くに火事だ!熱い!熱い!助けて!ってそのあと住所を言って電話が切れたんです。

いたずらだったみたいでほんっと!迷惑な話ですよね〜」と、答えた。

そんな話を聞いて「それは大変でしたね。こんな田舎町まで」と、言って

友達の家に向かったんだ。でも何度呼び鈴を鳴らしたのに誰も出てこなかったらしい。

どっかいったのかな?と思いながら家に帰ることにした。

それから1週間後、結局あれから友達から連絡がなくて流石に心配になったので

警察に捜索を頼みに行ったらしい。

そしてそれから二日後、友達は見つかった。

焼死体となって交差点の近くの空き地にある産業廃棄物の山の中から

あとで聞いた話しだがその空き地には昔、焼却場が在ったらしい。

そこで女の人が焼却炉に放り込まれ死んだらしい。

そのあと焼却場はつぶれたがその跡地には今も住み着いているらしいです。

焼却炉で焼かれて死んだ女の人の怨念が・・・と、

言うまぁあのねーちゃんの彼氏の作家が教えてくれた。

怖いらしい話なんだけど・・・ってあれどうしたの」

みんなふるふると震えていたそんな中、渡と波子は「ゆ、裕二、曖昧なのに怖すぎねぇか?」

「そ、そ、そうだ・・よ、裕二くん曖昧なのに怖すぎだよ」そんなことを言っている。

「そんなこと無いと思うけどな〜、てか曖昧なのに怖いって作家が怒るぞ!まぁそれは

置いといて涼霧さんも怖かった?曖昧だけど」と聞くと愛花は首を縦に振る。

すると涙が零れ落ちそれは懐中電灯の光をうけてキラキラ光りながら落ちていく。

それを見て裕二は「ごめん、渡、あと頼む。十分位したら部屋に来て」

涙をこらえながら言って、部屋から出て自分の部屋に向かった。

部屋に入った裕二は机の中から花柄の日記を取り出して読まずに胸に抱いて泣いた。

それから十分位たってから渡が部屋に入ってきて裕二に

「またあの時のこと思い出してたのか?」とベットに座りながら言った。

「あぁ、女の子の涙を見るたびにあの時のことを思い出して悲しくなるんだ。」裕二は

日記をしまいながら言った。そしてしまい終わると「もう寝るよ。」裕二はそう言って

電気を消して眠りについた。




第八章 本探しのかたち2




本は人を変えていく。

考え方を心を立場を全てを変えていく。

人は生まれて死ぬまでに、どれだけの本を読むのだろう。

そして、どれだけのことを知るのだろう。

それは読んだ人にしか分からない。

だから人は本を読む、その答えを知るために。




あの怖いらしい話を話してから二日後、前日のゲーム大会の途中で

ちょっとしたハプニングが起きたせいで、裕二は疲れていて

もっと寝ていたかったが起きなければならない。

今日は愛花との約束の日、古本市がある日だ。

渡はさきに起きてリビングに行ってしまったらしい。

布団から出た裕二はもう着慣れてしまったピンク色のパジャマを脱ぎ捨て

白色のTシャツを着てベージュ色のズボンを穿いて財布と携帯を持つと、

忘れ物が無いことをチェックすると部屋の扉を開け、みんながいるリビングに向かった。

リビングに着くと渡と波子がペアになってテーブルを挟み愛花に何かを聞いていた。

「愛花ちゃん、裕二と絆町でやる古本市に行くんだよね?」愛花は驚いた顔で。

「どうしてそれを?」と聞き返すと渡は自信満々に

「これぞ!情報屋の力!」と、言ってようやくリビングの入口にいる裕二に気がついた。

そして当たり前のように渡は

「俺たちもついていく!ちょうど日宮に会いに行こうと思っていたからさ!」

などと何かしら理由をつけている。

「やっぱりついてくることになるのか〜わかった、そのかわり電車代は渡!お前持ち!

それで良いよね?涼霧さん?」と裕二は呆れとため息混じりに言った。

愛花は「は、はい別に良いですけど」と、ちょっと嫌そうに言った。

そしてやっぱり「「やったー!」」と言う声が家の中に響き渡った。





こうしてみんなで電車に揺られること三十分、絆町に着いた。

そして改札を出てすぐ渡と波子が声を揃えて

「「着いたー!」」と言ったのは言うまでもない。

裕二たちは古本市が始まるまで日宮の家で待つことにしたが

家に行くと日宮絆の妹の日宮水飛が出てきて

「お兄ちゃんは今出かけてるよ、三日くらいで戻るって言ってた」と、

笑顔で答えて“じゃあね”と言うとドアを閉めた。

結局日宮の家で待つことが出来なくなり、近くのファミレスでつぶすことにしたが、

今度は休みだった。こうなるともう自由行動になる。渡が

「一時間後にこの噴水の前に集合な!じゃあ自由行動開始!」という言葉と共に裕二は

花屋に行くことにする。それに渡と波子と愛花がついて行こうとして、

渡が「波子、愛花ちゃんとほかのとこ回っててくれないか俺たちはちょっと寄るとこが

あるから、ごめん、ほんとは一緒に回りたいんだけど」と申し訳なさそうに、波子に

言うと、波子は

「うん!わかったあそこに行くんだよね。それなら私達は邪魔しないよ!」と、

分かってくれたのか愛花を連れてさっさとアクセサリーショップに入っていった。

波子たちの姿が見えなくなると渡が「じゃあ行こうか」と言い、

裕二と二人で花屋に入っていった。




       ◇




アクセサリーショップに入った愛花は波子に「あそこってどこですか?」と、聞いた。

「その話はあっちでしましょ!」と、

波子はアクセサリーショップの向かい側にあるファーストフード店を、

指差ししながら言って愛花を連れてファーストフード店に入った。

この時間帯はいつも人が来ないのか店員がいろいろ話していた。

オレンジジュースを二つ頼んだ。

それを持って席についてジュースを一口飲んでからさっきの話の続きを話し始めた。

「あそこって言うのはね、まだ私と渡が出会う前の話なの、だから渡に聞いた

範囲までしか分からないんだけど、渡と裕二くんが中学一年生になって

三ヶ月くらいたったころ裕二くんに二年生の女の子が告白したんだって

裕二くんもその子が好きだったんだけど付き合えないって言ったんだって

そこでその女の子が理由を聞いてなんか言ったんだけど

そこまでは渡も聞きだせなかったの。

その子の告白を一度は断ったんだけど、その言葉のおかげなのかОKを出したらしいの。

それからデートもキスもしてこのままならハッピーエンドなんだけどね。

夏が終わるちょっと前に彼女が倒れたんだって。

心臓の病気でもう長くないって言われたらしいの。

彼女は裕二くんに「私のお見舞いに無理して来なくていいよ。高凪くんは

テストのことだけを気にして、私は大丈夫だから!」そう言われたんだってさ。

だけど裕二くんは通い続けたんだって、彼女のいる病室に。

そしてテスト前に彼女が危ない状況だって彼女のお母さんから連絡が入ったらしいの。

だけど裕二くんが病院へ着いたときにはもう、その前の日に最後に見た。

彼女の笑顔は泣いていて、それを今でも女の子が泣いていると、

時々思い出すんだって。それでそのたびに悲しくなるそうよ。

そして今日は彼女に告白された日なの、

去年は家で泣いてたから、今年はそんなことが無いように

渡がお泊り会で盛り上げようとしたんだけど、そこに愛花ちゃんが来て、

それで今日はちょうど絆町に来ることになったから

ついでに墓参りをするんだって。

それで花屋で花を買って彼女のお墓に向かったの。

だからあそこっていうのはその彼女のお墓だよ。」と、

いい終えると、波子は残っていたオレンジジュースを

一気に飲みまだ空になってない愛花のオンジジュースも飲み乾し、

両方とも空にすると「じゃあ行こっか!」と波子は言って愛花と共にアクセサリーショップに戻った。




       ☆




その頃、裕二たちは花を手に墓に向かっている途中だった。

「涼霧さん大丈夫かな?」と、裕二が心配そうに言うと渡が

「波子を何だと思ってるんだ?怪物か?触手を伸ばして襲う怪物か?」

「だからなんで触手なんだよ!まだ誰も怪物なんで言ってないし

僕はただあのことを話してないかと」と、裕二が言うと

「裕二がツッコミをくれない〜あとそのことなら波子はちゃんと話してると思うぞ」と

渡が残念そうに言ったが、最後のが余計だ。

そんな話でお墓までもたせるなんてさすが渡だと裕二は思ったが、すぐに別の気持ちに

負けた。そして数多くのお墓の並ぶ道を、迷わず歩いて、

そのお墓の前にたどり着いた裕二は、

「縁、今年はちょっと早いけど来たよ。」そう言うと花を置いて手を合わせた。

渡も同じことをする。そしてそれが終わると裕二が、「縁、今日は時間が無いからこれで

お別れだ、今度は夏の終わりごろにもう一度来るからな、それまでまってて、

じゃあさよならまた来るからな」そう言うと、涙を拭きながら来た道を戻る。




       ☆




そして集合時間になり裕二と渡が集合場所に行くと、

そこにはもう波子と愛花が待っていた。

裕二たちに気がつくと「お〜そ〜い〜」と言いながら波子が走ってきた。

全員集まると渡が「じゃっ!古本市へレッツゴー!」と言って、

古本市の会場行きのバスに乗った。

バスに乗ってから十分、古本市の会場につくと、その大きさに驚いた。

普通に古本市をやるような大きさじゃない。サッカーの試合を二戦同時に行えるくらいだ。

さらにそれだけの場所を古本市のためだけに作られたというのだから驚きだ。

年に一度、古本市をやるためだけにこんなの作って良いのだろうか?

そんなことを考えながら会場の中に入った三人は・・・三人?

それに最初に気がついたのは渡だった。

「あれ?愛花ちゃんがいない」と、言うと、それを合図にしたように

「こっちだよ・・・」と、言う声が三人の耳元で囁かれた。

それに驚いてみんなで同時に、

「裕二今、何か言ったか?」

「波子さん今、何か言いました?」

「渡今、何か言った?」

と、言ったあとまたまたみんなで同時に

「へ?」

「はい?」

「なに?」

「みんなも聞こえたのか?」と、渡が言うと裕二と波子は頷き

裕二は「こっちってどっち?」

裕二の言葉に波子は「あっち」と、言いながら指差した場所には女性用更衣室があった。

「女性用更衣室って波子ちゃん後は頼んだ僕と渡は男子だから無理・・・って!」

裕二がそう言いながら渡のほうを見るともうそこにはいなかった。

すでに女性用更衣室に向かって走り出していたのだ。

だが追いかけようにも人が多くてうまく前に進めない。

やっとのことで波子と供に女性用更衣室の入口にたどり着くと、

そこには渡となぜか愛花までもがいた。

渡に事情を聞くと

「愛花ちゃんはこの会場に入った瞬間“こっちにありますよ”という声を聞いて

何かに導かれるみたいに歩いていたらここに着いたらしい」それを聞いて裕二は

「もしかして、願いの形?」と愛花に聞くと

「たぶんそうだと思います、この中に女の子が―」そこまで言ったところで渡が

「そりゃいるだろ女の子くらい女性用更衣室なんだから」とツッコミを入れた。

そんなことをしている間に愛花は女性用更衣室の扉を開けて中に入ってしまった。

それに裕二がきずいた時には「きゃっ!」と愛花の悲鳴が聞こえていた。

それを聞いた瞬間、裕二は何の躊躇も無く扉を開けて中に入った。

裕二に続いて渡と波子も入った。そこで三人が見たものは呆れるものだった。

愛花が大型犬と戯れていた。

どうやらさっきの悲鳴はいきなり舐められて驚いただけのようだ。

だが裕二と渡そして波子にはさらに驚くべき人物がそこにいた。

そいつの名前を三人一緒に言う。

「日宮っ!?」

「日宮先輩っ!?」

「日宮君!?」

そして呼ばれた日宮は三人に笑顔で答えた。

「よっ!久しぶり!」




第九章 誤解爆弾の正しい解体の仕方のかたち




誤解、それは小さいものから大きいものまで

色々あって大変だけど

誤解があるから恋があり、誤解があるから人生は面白い。

もし、誤解が無かったら

あんな誤解や、こんな誤解で話しが盛り上がることも無い。

もし、誤解が無かったら

恋愛なんて出来やしない。

相手を好きになる、と言うことは

半分が誤解なのだから。




「何で日宮先輩がここに?」裕二の問いに日宮はこう答えた。

「この古本市俺が入ってる部がやってるやつなんだよ」

先輩が部活を?中学のときはずーっと帰宅部だった先輩が

「あれ?そういえば先輩、高校入ったら“勉強をやりまくってやる”とか

言ってませんでしたっけ?」

「あぁ〜そうなんだけどよ、ちょっとしたことで水飛の誕生日の次の日に無理やり部長に

入部させられて、でも月光さんがその部にいたんだよ!」愛花を除く三人には分かった。

「先輩それって部活で月光さんを狙ってるって事ですよね?」

「な、なぜそれを!?」図星だ。だが運のいいやつだ。

「日宮く〜んちょっと手伝ってくれる〜?」と言う月光小由里の声が日宮を救ったのだ。

「手伝ってと言われただから俺は行く、じゃっ!」そう言い残すと女性用更衣室から

出ていった。裕二は愛花のほうを見るするとさっきまで犬と戯れていた愛花はすやすやと

寝ており犬はいなくなっていた。裕二は愛花を起こすべく近づいて

手を伸ばそうとしたとき、誰かに後ろから押され愛花に倒れこんでしまった。

今の裕二は他のやつから見たら愛花と抱き合ってるようにしか見えない、

さらに密着している部分が止めなのだ。口と口、口付け、キス、きす、kiss

裕二はすぐに離れようとするが愛花が寝ぼけてるのか「行か、な、いで」とか言いながら

抱きついてくるから離れられない、これはものすごい状況なのではないのか?渡たちに

助けてもらおうとしてもなぜか二人の姿が見当らない、駄目じゃん!

だいたい普通は男が襲う側であって女は襲われる側じゃなかったか?

じゃあこの状況は・・・逆だよね?うん、逆だ!とにかく誰か来る前に

愛花を起こさないと、そう思い裕二は愛花の名前を呼ぶ。

「愛花!愛花!起きろ!愛花!愛花!愛花!愛花!起・き・ろ!」そこまで

言ったところで「ふにゃ?」と言って愛花が目を開けたそして愛花は今、自分が

裕二に対してしていることを理解すると

「高凪君が愛花って名前で呼んでくれた!やった!」

そっちかっ!それに“やった”ってなんでだ?まぁいいやとにかく今は

「涼霧さんとにかく離れてくれ!」裕二がそう言うと愛花はすぐ離れてくれた。

立ち上がった裕二は先に立ち上がっていた愛花に「ねぇ高凪君もう一度、

愛花って呼んでくれませんか?」

「あぁ、うん、いいけど」と言うと「やった!」そう喜んだ。

よく分からないが女の子はみんな名前で呼ばれるのが良いのか?

「じゃあ、あ、愛、花」そう言ったとき裕二の目の前に愛花の顔があり数秒後、

裕二の背中に強い衝撃が・・・来ない、裕二は思わず瞑った目を開ける、とそこには

一瞬、息が出来なくて咳き込んでいる愛花の姿があった。

裕二は愛花に乗っかっている状態だ。

短時間で動き過ぎた為に二人の息は荒く、頬はやや赤い、

おまけに髪は乱れ、愛花の着ている白いワンピースはなぜか濡れていて下着とかが

透けて見えている。

“パシャッ”と言う音が部屋の中に響いた。

そんな状態から裕二と愛花が抜け出せないでいると女性用更衣室の扉が開いた。

それを聞いた裕二は一瞬ビクッとしながらも入口を見る。

とそこには渡と波子の姿があった。

渡は裕二と愛花を見るなり

「お、お前ら、展開が速すぎないか?」と驚きながら言ってきた。

それに続くように波子も

「えっ!もうヤッちゃったの!?」

いやいや、波子さ〜ん?ヤッちゃった、って僕はジョシコーセイを襲うオッサンデスカ?

まぁ、この状況に遭遇したら誰だってそう考えるよな〜

「あの〜襲ったのは私なんですけど〜」と言って愛花が誤解の炎を消そうとしたが

それは水と油を間違って注いでいた。

「えぇ〜!愛花ちゃんが裕二を襲ったの〜!?」と渡が言うと

「愛花ちゃんて積極的なんだね!」と波子が言う。

「あぁ〜止めてくれ、これ以上誤解を招くようなことは・・・」と裕二が

言いかけた時すでに遅し

「積極的?う〜ん、そうかな〜?でも気持ちよかったよ!」

言っちゃった遅かったよ、最上級の誤解爆弾に火つけて爆発させたよ。

「うそっ!マジで!?どうだった?」と渡は愛花にさらなる爆弾質問をする。

「う〜ん、そ〜だな〜、すごい量だったよ!」

あぁ、もう駄目だ。誤解爆弾を爆発させまくる三人を見ながら裕二はそう思った。




第十章 お祭りと過去と告白のかたち




想いを伝える手段は色々ある。

手紙、メール、ほかにも色々あるけれど

一番良いのは言葉にして伝えること

「好き」と言う言葉を伝えるだけなのに

なにを、ためらっているの?フラれるのが怖いの?

そんなことを気にすることは無いんだよ!

自分の気持ちを伝えられたこと

相手に伝えられたそれが

未来に繋がるのだから

怖がらずに、恥ずかしがらずに言ってみよう。

好きな人に言ってみよう。

「好きです」それだけを伝えるために

人は生きているのかもしれないから。




結局、誤解が解けたのは一時間経ってからだった。

そして、僕たちは今、川原でやるお祭りに向かっているところだ。

なぜお祭りに行く事になったかというと、かれこれ遡ること一時間前

愛花が誤解爆弾を解体し終わったとき「ベトベトしてて気持ち悪〜い」と言ったので

裕二が愛花の着ているワンピの匂いを嗅いでみると甘い香りがした

「これ、炭酸飲料の匂いだ!」と裕二が言うと波子と渡も愛花のワンピの匂いを嗅いだ

「これは!コーラの匂いだ!」と渡が言うと波子も

「うん!これはコーラの匂いだね!」そう言った

なぜ分かる?匂いを嗅いだだけでコーラってボクニハワカリマセン

とにかく愛花が“気持ち悪〜い”と連呼するものだから、その辺に置いてあった浴衣を

借りることにした。

「でも、何で浴衣がこんなところに?」裕二が言うと愛花が何か思い出したように

「あぁ〜そういえば、今日、この絆町でお祭りやるんじゃなかったですか?」

濡れたワンピを脱ごうとしながらそう言った

裕二はすぐ渡を連れて女性用更衣室から出た

「おい〜裕二〜良いとこだったのに〜」と文句を言う渡に

「渡〜やめろよな〜」と裕二は赤面しながら言う

「裕二、お前な〜縁に言われたことまだ気にしてんのか〜?」

「うん、そうだよ!わるいかっ!」

「いや、悪かねーけど、過去を背負い続けても先へは進めないぞ!」そんなことを言う

渡を見て裕二は「そうだな、僕も頑張んないと!」と元気よく言ったものの

すぐに元気がなくなる。そんな裕二を励まそうと渡が

「そんなに落ち込むなよ!愛花の裸でも見――」とそこまで言ったところで

裕二は殴った。

渡を。

まぁ、普通だ。




       ☆




十分位して更衣室の扉が開く、中から波子が出てきて

「もういいよ!渡は盾を用意しとかないと矢で打ち抜かれると思うよ」と言う波子の

忠告を無視して渡と裕二は更衣室に入った。そこで待ち構えていたのは

薄いピンク色で花柄の浴衣に身を包んだ愛花がだった。

渡はすぐにどこからかデジカメを取り出すと愛花を撮り始めた。

裕二は愛花を見たまま動けなくなっていた。それを見た波子が

「あらら、裕二くんのほうが打ち抜かれちゃった?」と言ったが

今の裕二の耳には届いていない。

可愛いとかじゃなく、似ているのだ。


縁に


「ゆか、り?」裕二は思わず言ってしまった。

「え?」愛花は何のことか分からず。

渡は何かを思い出したように。

「あ、ご、ごめん・・・えーと・・・に、似合ってるよ」と裕二は誤魔化す。

「あ、うん、ありがとう」愛花がそう言うと裕二は更衣室の外に出た。

更衣室の外には女の人がいた。

「ねぇ、大丈夫?」そう話しかけてくる女の人に

「は、はい、大丈夫、です」裕二はそう言うと出口に向かおうと踏み出した。

それを止めるように女の人が裕二の腕をつかんで

「泣いてもいいけど逃げるのはダメだよ!君は彼女の死から逃げてるだけ

あの頃となんにも変わってないじゃない」と言った。

裕二は女の人の顔を見て

「蓮奈?」

「そうだよ」蓮奈と呼ばれた人がそう答える

「消えてくれ・・・僕の目の前から・・・もう邪魔しないで」裕二がそう言うと

蓮奈は出口の方へ走っていった。

「逃げてるんじゃないんだ・・・」裕二がそう呟くと

「あぁ、そうだ、お前は逃げてるわけじゃない、

みんなと違う道を歩いてるだけなんだ。

それは当たり前のこと、だって人は

自分で選んだ道しか歩けないから」渡がそう言って

「さ、お祭りに行こうぜ!祭りは全てを楽しくしてくれる魔法の訪れる

そんな場所なんだからな!お前にも良い事があるかもしれないぞ!ふっふっふっ」

最後の笑い声が不気味だったけどお祭りに行くか

そう、裕二が渡たちの計画にハマった瞬間だった。




       ☆




そんなこんなで第六十八回“願いよ、届け七夕祭り”の会場に着いた裕二たちはまず

じゃんけんをしてパシリを決めることにした。なぜかと言うと花火をやるから

場所取りだそうだ、じゃんけんの結果、裕二がパシリになりやきそばと飲み物を

買ってこいと言われ買いに行こうとしたとき

「私も一緒に行きます」と愛花が言ってきた。

「え、でも」と裕二がオロオロしていると渡が助け舟っぽいモノを出してくれた。

「裕二、いーじゃん別に、でも愛花ちゃん、くれぐれも裕二に変なとこに

連れ込まれないように」タイタニックだった。最初よくても、あとが最悪

「渡、お前じゃないんだから」と裕二が言い返すと

「いや〜わかりませんよ〜日宮にあった奴はみんな十八菌(禁)が

くっつくからね〜説明しよう十八菌(禁)とは日宮が作り出した未知の病原菌である。

ちなみに十八菌(禁)に感染するとZ病になるのだ!」としょうもない事を

説明してきた。それを真に受けた愛花が裕二から五メートルくらい距離をとる。

なんか傷付くな〜

「まぁ、じゃあ、買ってくるよ」と言って裕二が人込みに入っていくと愛花が

「あっ!まってよ〜」と言って付いて来た。




       ☆




やきそばの売っている店はすぐに見つかった。

一つ三百円のやきそばを四つ買う。

さて、ここで問題です。一つ三百円のやきそばを四つ買ったら合計何円になるでしょう。

正解は千二百円・・・ではなく千円です。なぜならそのお店は二つで五百円

だから四つ買ったら千円になると言うわけです。

飲み物を買おうと次の屋台に行こうとして愛花に

「次のところへ・・・って涼霧さん?」と言ったがそこにはすでに愛花の姿はなく

人込みから少し離れたとこにあるベンチに座っていた。

「どうしたの?」と裕二が言うと愛花は

「ねぇ、高凪君ちょっと良いかな?話したいことがあるの」と言ってきたので

「うん、いいけど・・・」と裕二は返した。

「じゃあ、あそこに行こうよ」そう言って愛花はすぐそこの橋を指差した。




       ☆




橋の真ん中まで来た裕二は愛花に

「で、話しって何?」と聞いた。

「あの、――――、―――――――ください」花火の開始の音で聞こえなかった。

「ごめん、聞こえなかった」裕二が言うと愛花は顔を真っ赤にして

「好きなんです!付き合ってくれませんか?」そう言った。

それを聞いた裕二は一瞬、驚いたものの

「ごめん、今の僕は付き合えない」と言う。

「そうです、か・・・」愛花は残念そうに肩を落とす。

「本当にごめん、僕の問題なんだ、君が悪いわけじゃない」

「縁さんって人ですか?」愛花がそう言った。

「そうか知ってるのか縁を」花火が打ち上げられる。

「はい、波子さんが言ってました」花火が二人を照らす。

「少し長くなるけど聞いてくれるかな?僕と縁の過ごした夏の話を」裕二がそう言うと

「いいですよ!聞いてあげます!」愛花が涙を拭きながらそう言う。

「あれは僕がまだ中学に入ったころの話し――――」裕二はあの夏のことを話し始めた。




第十一章 一年目の夏と恋と別れのかたち1




人は過去を背負い、生きていく。

楽しかったあの頃を

辛かったあの別れを

そんな過去を背負っているから未来へ進むことが出来る。

そう、未来は自分で作るものであって

人に作ってもらうものでもある。

過去は変えることが出来ない、だから人は後悔をする。

でも、それは未来を遮る。

未来を信じ、過去を断ち切る、それが今やることなのだから。

過去の別れを未来の出会いに。

全ての別れを全ての出会いに

変えて行け。




西川東中学校に入ってから三ヶ月が過ぎようとしていた7月7日の放課後

裕二はいつものように渡と一緒に日宮の家でゲームをする話しをしながら

下駄箱から靴を取り出そうとしたとき

靴の上に封筒が置いてあった。

封筒は白くて普通のものだったが・・・

「これって、古くねぇ?」裕二が封筒を開けながら言うと

「でも、これでやっとお前にも春が来たんだなぁ〜」と渡はのんきに返した。

「いや、春ってもうすぐ夏だぞ!・・・ってこれやっぱり

ラブレターだよ、あぁ〜校舎裏に来いってさ!

という訳で俺は校舎裏に行ってくる。そして断ってくるから

日宮先輩には遅れていくって言っといて」裕二はそう言うと渡を残し校舎裏に向かった。

校舎裏に着いた裕二はそこにいる少女を見て

「う・・そ・・だろ?」と言った。

その声に気がついた少女は

「すみません、急に呼び出してしまって

それで・・その・・・好きなんです。付き合ってくれませんか?」

夕日には程遠い夏の放課後の校舎裏、少女は勇気を出して告白した。

「・・・・ごめん、俺は君とは今は付き合えない」裕二はそう答えた。

「今は?どういうこと?」

「俺は君と付き合ってはダメなんだ。」

「なんで?」

「俺は君を傷つけてしまうかもしれないから

それに俺と君とではつり合わないよ」そう言って裕二は少女に背を向けた。

その背中に少女は

「つり合わないって、なんで、あなたにそんなことが分かるのよ!

あなたは何も分かってない、人はみんな同じ重さなのよ!」と今にも泣きそうな声を

投げつけた。

「同じ重さ?人がみんな同じ重さだって?違う!」

「違わない!お金をたくさん持っているから重い?

社長の子供だから重い?どこかの国の王様の子供だから重い?

そんなの関係ない!私は高凪君のことが好きなの

それはほかの人がどんなに否定しようが変えられないこと

勝ち組や負け組みって言われても、それが壁を作ることなんて出来ない!

高凪君が私を傷つけてしまうかもしれない?それは絶対に無いよね?

だって高凪君は信じている人を絶対に裏切ったりしないものね・・・」泣いた。

最後まで言ってから泣いた。そして少女は裕二とは逆のほうを向いて歩き出した。

それを止めるように裕二は

「まてよ!俺にも言わせろよ!・・・・・好きだ!付き合って・・・ください・・

お願いします!」そう言いながら少女に向かって頭を下げた。

少女は裕二の頭をなでなでしながら

「よく言えました。えらい、えらい!」そう言った。

だが裕二はその手を払いのけて

「止めろー!!俺は犬か?撫でられて尻尾振りながら喜ぶ犬か?」と逆ギレした。

「ひ〜ど〜い〜よ〜人がせっかく告白してなでなでしてキスまでしてあげたのに〜」

「キスはしてないだろ!で、答えはどうなんだ?」

「もちろん!ОKだよ!」少女は笑顔でそう答えた。

「そうか、では美南縁さん、よろしくお願いします」と裕二が言う。

「こちらこそ、よろしくお願いします、高凪裕二君」そう縁が言う。

そうこれが二人が付き合い始めた最初の日だった。





縁が裕二に告白した次の日の朝

裕二は携帯電話の音で目が覚めた。

「誰だ〜こんな朝早くから〜」と言いながら電話に出ると

「おっはよー!裕二くん!外見て!」そんな元気な縁の声が聞こえてきた。

裕二はカーテンを開け窓の外を見ると縁の笑顔が目の前にあった。

でもここは二階だ、どうやってここに?と思い裕二は縁の足元を見る。すると

「裕二君のエッチ〜」縁はそんなことを言ってくる。

「違う!美南さんはなぜ僕の家の梯子の置き場所を知っているのかな?」と裕二が

そう質問する。

「えへへ、私は裕二君のことなら何でも知っているのですよ」と縁は自慢げに答えた。

「そっか、ストーカー美南さんは僕のことは大体、知ってるんだよね〜」

「ストーカーじゃないもん!えーと・・・び、尾行してるだけだもん!」

「それ、あんまり変わってないよ、ストーカー美南さん」

「もう、いいもん!裕二君さっさと準備しないと置いてっちゃうよ!」完璧に

話を逸らした縁はほっぺをリスみたいに膨らませて“ぷいっ”とそっぽを向いてしまった。

だが縁はすぐ「おじゃまします」と言って窓から裕二の部屋に入ってきた。

が、しかし窓枠に足を引っ掛け、起きようとしていた裕二のほうに倒れてきた。

“ドスン”そんな音が裕二の部屋でしたことに気づいた裕二の姉、水樹が部屋に

入ってきた時には裕二の着ているパジャマのボタンは縁が掴んだせいで取れていて

パジャマのズボンのほうも脱げかかっていて尚且つ裕二が縁の上に乗っかっているのだ。

傍から見たらアレだ。そんなところを見て言葉を失っている水樹に縁が

「ぁああ、あぁぁあぁ」とか言うものだから裕二はすぐに縁の上から退くと

水樹のもとへ行き誤解を解こうとするものの水樹は「い、いやっ!いやっ!いやぁー!!」

と言って泣きながら、その場に座り込んでしまった。




       ☆




結局なかなか誤解が解けず完璧に遅刻してしまった裕二と縁は先生に怒られて

一時間目は集中できなかった。

そして放課後裕二に渡が

「おい、裕二、昨日なんで来なかったんだよ」

「あー・・ごめん昨日は――」と裕二がそこまで言ったとき

「おーい!裕二くーん!一緒にか〜え〜ろ〜」と縁が言いながら裕二に抱きついてきた。

それを見た渡は

「あー!美南縁!裕二お前、もしかして昨日のラブレ――」

慌てて裕二は渡の口を塞ぎ

「渡、それを言うな!あとで説明するからとにかくお前の家に行こう」そう言った。

そして三人で渡の家に向かった。




      ☆




渡の家に着いた裕二たちはまずゲームルームに行ってメイドの守樹奈に飲み物を頼むと

話し始めた。

「で、昨日、何があったんだ?」

「あのあと告白に告白を重ねて・・・終わり」そう裕二が言うと渡が

「嘘つけ!それで終わりだったら何で日宮の家に来なかったんだよ!」とさらに

聞いてくる。

「え〜だってそのあとは他人には言えないアレやソレを〜」縁は爆弾を爆発させまくる。

「マジかよ〜裕二、お前、最悪だよ」そしてそれを真に受ける渡

裕二は誰から止めればいいのか分からなくなってきた。

「あのさ、美南さん?アレな方向に話が進んでいますが?そして渡!

美南さんの話を真に受けない!」一応、両方とも止めた・・・はずだったが

「裕二く〜ん、恥ずかしがらなくてもいいんだよ〜別に今からここで―――」縁の暴走は

止まらない。

「やらないでくれ」裕二は即却下、それを聞いた渡が

「やっぱり、お前、最悪だよ」と、残念そうに言った。

「残念そうに言わないでくれ」

縁はなぜか制服を脱ぎ始めた。

「美南さん?なぜ、制服を脱ぐのかな?」裕二がそう聞くと縁は上半身、裸で

「ふふふ」と不気味な笑い声を発した。

「美南さん、不気味ですから・・・止めてくれ」と、裕二が言った時

メイドの守樹奈さんが飲み物を持って来てくれたので何とか暴走が止まった・・・かな?






結局、暴走は止まったのだが、縁は暑いと言って服を脱いだまま。

渡が「ゲームでもしよう」と言うので

ゲームをすることにした三人だったが縁がゲームの棚を見ているといきなり

「これ!これやろう!」と、言いながら裕二に未開封のゲームソフトを見せてきた。

「おい、それって・・・」裕二はそう言いながらゲームソフトの左下を見る。

「うん!十八禁だよ!私、一度やってみたかったんだよね〜これ」と縁が言うと渡が

「美南、やりたきゃ一人でやってくれ俺は無理だ!グロはダメなんだ」そう言ったが

縁は部屋から出ようとする渡の腕をつかんで

「グロじゃなくてエロいヤツなんだけどしかも三人まで同時プレイ可能だし」

そんなことを言う。

「裕二、助けてくれ〜」渡は裕二に助けてもらおうとしたが裕二は

「無理だ、ごめん僕だけでも逃げる!」そう言うと部屋から出た。

が、すぐに縁に捕まってしまいエロゲー地獄に引きずりこまれたのだった。




                終・・・?





いえいえ、終わりませんから、まだ続きます。


結局、地獄から抜け出せたのは三時間後だった。

地獄から戻った裕二は

「き、キツイ二度とヤリタクナイ」と言って守樹奈さんが

もって来てくれた二杯目のジュースを飲む。

提案した縁も二時間過ぎたあたりでギブアップ

そして最後の一時間を耐え抜いたのは渡ただ一人だった。

そんな渡は

「お前らもうギブか?」とか言っている。

「渡くん、すごいよ!私でもクリアできなかった子を一発で・・・」縁はそこまで言うと

疲れたのか寝てしまった。

「おーい!美南さーん?ダメだこりゃ僕が家まで送るんだよね?」裕二は呼びかけても

起きない縁を見ながら渡にそう聞いた。

「もちろん!美南の彼氏だろ?まぁ、がんばれ裕二!」渡はそう答えた。

「うん、そうなんだけど・・・重いんだよね、美南さんって」

「それ、美南が起きてるとき言うなよ、殺されるぞ!もしくはさっきのように・・・」

「やめろ!それ以上、言うなよ、僕が危ないから、

まぁ、とにかくまた明日な、じゃ!」裕二はそう言って縁に服を着せてからおんぶして

渡の家を出た。




       ☆




縁の家は渡の家からそう遠くないが疲れた。

人を背負って歩くのだから当たり前なのだが

結局、縁の家に着いたのは8時すぎだった。

裕二は縁を縁のお母さんに渡した。

裕二は家に帰って晩御飯を食べ風呂に入り

寝ようとしたとき携帯が鳴った。

縁からだった。

縁は「今日は楽しかったよ」そう言って一方的に切ってしまった。

裕二はそれを聞いて“クス”と笑ってから部屋の電気を消して眠りについた。



第十二章 一年目の夏と恋と別れのかたち2




鬼ごっこは子供の遊びだと思う大人は馬鹿。

小学生だって中学生だって高校生だって大学生だって

もちろん大人だって鬼ごっこをしている。

そう、恋の鬼ごっこを

彼を、彼女を、追いかける。

君も一度はそういう事があるだろう?

そして一度、追いかけたら諦めずに

捕まえてあげなよ。

君のことを待っているかもしれないから




注意!


デートそれは恋愛には必ずくっ付いてくる物であり

時としてそれが凄く重要な出来事に繋がることになる。

そしてハプニングも度々起こってしまうことがある。

そう、デートとはとても危険なイベントなのである。

だから準備を怠ると大変なことになるのだ。




駅前の時計の下に女の子が一人いる。

裕二は女の子に

「美南さん!待った?」と言った。

女の子はすごく不自然な笑顔で

「うん!すご〜く待ったよ!裕二くん!」

怖い、なんかすごい怒ってるみたいなんですけど

気のせいでしょうか?

「ご、ごめん!」裕二は一応、謝る。

普通はここで「別にいいよ〜来てくれたんだから」みたいな言葉が返ってきても

良いのだが、返ってきたのは

「別にいいよ、今度また十八禁に付き合ってくれたら」地獄への入口だった。

「グロいヤツ?」裕二がそう聞くと

「うん!グロとエロの両方!」もっと酷いことになった。

「格ゲー」

「ダメ」

「RPG」

「ダメ」

「シューティ――」

「ダメ」

「パ――」

「ダメ」

「―――」

「ダメ」

「エロゲー」

「ダメ・・・じゃない!危ない危ない引っかかるとこだった」酷いよ、これは

言うこと全部“ダメ”ってキツイ、もう諦めよう

「分かったよ、やるから今日は美南さんのおごりで・・・」

「ダメ、デートは男がおごるのこれ基本!」

たしかに昔ゲームでそんなことを主人公が言われていたような

「いやそれは僕がキツイからさ、半分出してく・・・ださい」

「う〜ん・・・いいよ!じゃあ行こう!まずは本屋へ」縁は何とか納得してくれたらしい

まぁ、そもそも僕が朝あんなことにならなければ

あれは五時間前・・・




       ☆




ゲームをやった日から三週間後

今日は縁との初デート、裕二は朝の六時に目が覚めてしまい

暇なので音楽を聴いて過ごすことにした。

そして、途中で寝てしまった。

起きたときにはすでに十時半、約束は九時五十分

急いで準備をして家を出る裕二

裕二は待ち合わせ場所に向かいながら

昨日、夜遅くまで浮かれて寝れなかったのが効いたな

そんなことを思いながら駅前の時計の下に向かった。




       ☆




そんな感じで遅れた裕二、初デートなのに

まぁデートと言ってもただの買い物なのだが

しかも本やらゲームやらを探すだけ

途中、昼食を入れて5時くらいに解散のやつ

ゲームのほうはすぐに見つかった。

一つ目の本屋を出て向かい側のゲーム屋で見つけた。

キング・オブ・ドラゴンというこの頃、流行ってるRPGのゲームだ。

でも、本のほうは中々見つからず昼になり

適当なファーストフード店に入り今日の昼ご飯になるものを頼む

裕二は席を取っておいた。

すぐ縁が頼んだものを持ってくる。

そして縁は席に着くなり

「どこにもないな〜あとは古本屋が三つに本屋が七つくらいかな」そう言った。

「で、なんて本を探してるんだ?」裕二は教えてもらってなかったから聞いた。

「願いの・・・えーっと何だっけ?」と言って縁は鞄から紙切れを取り出して

「あ〜願いの形って本だよ」そう言ったのだ。




       ☆




裕二が話してると突然、愛花が

「えっ!?願いの形って私の探してる本と同じ」と、言った。

「あっ!そういえば!そのあと見つかったんだ!その本」裕二がそう言うと愛花が

「どこで見つけたんですか?」そう聞いてきた。

「それは話を聞いてれば出てくるよ」そう言って裕二は夏の話の続きを話す。




       ☆




「願いの形?いつ発売したやつ?」裕二はポテトを摘みながら縁に聞く

「五年くらい前・・・かな?」

どうやら詳しくは知らないらしい

「ネットで探せば?」分からないんだったらネットが良い

「ダメだよ!自分で見つけなきゃ!そうじゃないと・・・」縁はそこで言葉を止める。

「そうじゃないと?」気になるから聞く裕二

「なんでもないよ!」そう言って誤魔化す縁

このとき縁はとんでもないことに巻き込まれていた。

裕二がそのことを知るのは縁が死んだあとだった。




       ▶




昼ごはんを食べ終わった裕二と縁は本屋と古本屋を一つずつ回ったが

一向に見つからない願いの形

途中、CD屋があったので裕二は自分の探しているCDを買うために店に入った。

縁は「別にいいよ、私も探してるやつあるからね」と言ってОKをだした。

店の中は案外広いが人が少なかった。

裕二は自分の探してるCDをすぐに見つけることが出来た。

まぁ、最近出たやつだからすぐ見つかるわけだが

縁を探すため店内を歩いていると

流れてる音楽が変わった。

ちなみに歌詞はこんなのだった。


ひとり僕は歩いてく

長い長いこの道を僕は一人で歩いていく

どんなに辛く悲しくても

どんなに楽しく嬉しくても

立ち止まることなく

僕は歩いていく


君と出会い二人になった

二人で道を歩いてく

どんなに辛く悲しい壁にぶつかっても

砕いて歩いていく

僕は君を連れてどこまでも

歩いてく



そして曲がまた変わる。

裕二はまださっきの歌が耳に残っていた。

そんなことでボーっと突っ立ってたら縁が

「裕二くん今の聞いた?」と聞いてきた。

「う、うん、聞いてたよ!あの歌のCDあるかな?」裕二がそう答えると

「これだよ、さっき、ここの店長さんに聞いたのそしたら

『この歌は俺の友人が彼女に送った歌なんだ』って言ってこれくれた」

「そうなんですか〜って言いながら笑顔で聞いてただろ?」

「ぐっ!す、鋭いね、大丈夫!ちゃんと買うから・・・たぶん」

「僕が買います!それ、結構よかったから、また聴きたいし」と、裕二は縁の持っている

CDを指差しながら言った。

CDを買って店を出た裕二と縁は本屋と古本屋を回る。

だが、一向に見つからず最後の古本屋を出たときには五時過ぎだった。

まぁ、夏なのでまだ明るい。

「無かった、どうしよう・・・あれ?ここに道なんてあったっけ?」縁はそう言うと

そのさっきまでは無かった(?)道に入ってく

裕二は縁を追いかけてその道に入った。





       ☆




その道は不思議な道だった。

真直ぐなのだ、ひたすら真直ぐ続く道

普通は無理だ。なぜならここは町のど真ん中

絶対に何かにぶつかってもいい距離を裕二はすでに走ってる。

そして、おかしい事がまだある。

さっきまで青い空だったのに、ここはオレンジ色の夕焼けなのだ。

そんなことを考えていると広場に出た。

そしてここはもっと不思議、裕二は思わず

「太陽と月が同時に出ている空なんて始めてみた」

そりゃ当たり前だ。普通は無理だ。

でも、相変わらず空はオレンジ色

広場の中心には噴水があり、その周りでは子供たちが遊んでいる。

そして裕二がいるのとは反対のほうに店らしき建物がある。

その建物から縁が出てきて裕二を見つけるなり

「ほら〜これ〜願いの形〜」と、言って裕二のほうに走ってくる。

そして縁が裕二に願いの形を見せる。

「これって・・・ラノベ?」裕二がそう言うと

「あれ?裕二くんにはラノベに見えるんだ、私には絵本に見えるけど

たぶんこれって見る人のよく読むものに見えるんだよ」

「嘘だね、美南さんにもラノベに見えてるはずだよ、だって

両手で持っててちゃんと本の端を持ててるから」

「すごい!裕二くん、すごい!推理小説ばっか読んでるでしょ?

しかも、ラノベのやつ」

「うん、って、いつの間にかもとの場所に戻ってる?」

空が青く、もう月が出ていたが太陽は沈みかけていた。

「そろそろ帰ろうか」裕二がそう言うと縁が

「うん!」と、言って裕二の手を握った。

これでやっとデートらしくなった・・・と思ったら縁が突然

「これから守屋くんの家に行ってゲームしよう!」と、言い裕二の手を引いて

渡の家に向かった。



       ☆




結局、渡の家を出たのは九時すぎだった。

そして今、裕二と縁がいる場所は公園のベンチ

なぜ、こんなことになっているのかと言うと

縁が渡の家を出てすぐ

「あぁ、家に帰りたくないな〜ねぇねぇ裕二くんの家に泊まっちゃダメ?」

「ダメ!美南さんが僕の家に泊まるのはダメ!親がうるさいから」即答

「えぇ〜じゃあ、泊めるか、キスするかどっちが良い?」危険な二択を縁が突きつける。

そして、公園で悩む裕二、こうなった。

どうする?キスするか?いやそれは・・・無理

じゃあ、家に・・・は無理だよな〜

完全に自問自答モードの裕二に縁が

「わかった!私が裕二くんの親を説得するから!」と、自信ありげに言った。

「あぁ、うん!いいよ、親を説得できたら泊めても」

絶対に無理だ!僕の家に泊まることなんて僕の親を説得なんて

そして、二人は裕二の家に向かった。




       ☆




しかし!裕二の予想は大ハズレ

縁の大嘘と嘘泣きの前に裕二の親は完全敗北!

あっさりОKを出してしまった。

でも、部屋は別々、縁は「同じ部屋で良いですよ〜」と、言ったが

裕二の父「何をするか分からないから・・・裕二が」

僕!?ひで〜まぁ僕としては、そのほうが、ありがたいですが

まぁ縁はかなりショックを受けているみたいだが

晩御飯は渡の家で食べてきたので良い

風呂に入って歯を磨いて裕二は寝ようとしたとき縁が部屋に入ってくるなり

「裕二君、おやすみ」そう言って裕二にキスをしてすぐ部屋から出て行った。

最初は何がなんだか分からなかった裕二だがすぐあの二択のことを思い出して

「卑怯だぁぁー!!」と、叫んだ。

そのあとすぐに部屋の電気を消し眠りに・・・つけない。

なかなか寝れない裕二の頭に浮かぶことそれはkiss、kiss、kiss

あれ?そういえばそんな歌があったな〜なんのゲームだったけ?

そんなことを考えていたら眠りについてしまった。




       ☆




そして次の日の朝、起きた裕二が最初に驚いたのは

縁が裕二の隣で寝ていることだった。しかも全裸で

「なんで?なんで、ここで寝てるんだ?しかも裸で」裕二はすぐに

縁を起こそうと呼びかけたが起きない。

そしてなぜかここで裕二の部屋に渡が入ってくる。

なんてタイミングの良い登場

訂正

なんてタイミングの悪い登場

渡は裕二の横で“裸”で寝ている縁を見るなり

「裕二が・・・十八禁に・・・」そう言った。

「渡、止めてくれ、それ超誤解だから」裕二のその言葉で縁が起きて

「ふぁい?うゃちゃしにょきょとにゃにか?言ってたぁ〜?」と意味不明なことを言った。




       ☆




「それで終わりですか?それにしても願いの形がそんなところに・・・」と愛花が言うと

裕二は

「あと、もう少しだけあるよ、そのあと僕と縁はちゃんとしたデートも行った。

そして、夏休みの終わりのころに縁が倒れたんだ」



第十三章 一年目の夏と恋と別れのかたち3




人は何のために生きているのだろうか

人は何のために生きようとするのだろうか

生きたいから病気を治し

生きたいから誰かと共に歩む

でも、人は世界を人を殺す。

それは人が馬鹿だから

何にも分かってないから

人が一番、弱く脆いものだから

すぐに壊れてしまう。

だから最後は共に笑顔で別れたい

さよなら




縁が倒れてから二週間が過ぎた。

夏休みも終わり二学期が始まり中間テストが迫っている。

夏の暑さがまだ残ってるそんな日の放課後

裕二は奇跡情熱病院(ネーミング悪っ!と、最初は思ったがもうなれた)の七階の

突き当たりにある部屋に来ていた。

そこは個室で777号室と書かれたプレートがドアの横にあり

その横に漢字で美南縁と書かれている。

最近は病室で裕二と縁は絵を描いている。

お互いの絵を。

これが結構、難しいのだ。

二人とも絵を描いているから相手を見るといつも絵を描いている。

だから自然と絵を描いている相手の絵になってしまう。

そこが面白いのだが

絵を描いているといきなり縁が話しかけてきた。

「ねぇ、裕二くん、あんまり学校サボっちゃダメだよ」

「でも、縁が――」

「私のことは気にしなくて良いから、裕二くんはもうすぐテストでしょ?

勉強はしなくていいの?」

「勉強は・・・してない」

「しなきゃダメ!」

「いいんだ!べつに・・・」

「よくないよ!」

「いいんだよ!勉強なんてしなくても!」

二人の会話が途切れる。

先に話し出したのは縁だった。

「守屋くんはどうしてるの?」

「渡も学校サボってる」

「ごめんね、私がこんなになっちゃったからだよね?ごめんね」

「謝るなよ、学校サボってるのは僕たちの意思なんだから」

「ごめんね、ごめんね」縁がそう言ったとき五時半になった。

「縁、今日はこれで帰るね、また明日も来るから、じゃあね」裕二はそう言って

病室を出た。

       


        ☆




裕二は家に帰ると自分の部屋に向かう。

裕二はパソコンをつけるとマイドキュメントからテキストファイルを選んでクリック

そして出てきたのは文章、小説だった。

裕二が最近書き始めたやつだ。

これを書いていることは縁には秘密にしている。

裕二はこのお話を縁の誕生日に渡すつもりだった。

これを書いてるから学校に行けない

渡も似たような理由で学校に行けないでいる。

渡の場合は縁にゲームを作ってあげている。

携帯ゲーム機用の全ジャンルのゲーム集を作っている。

RPGにS・RPGにシューティングゲームにテーブルゲームそれから

パズルにスポーツに恋愛シュミレーションにギャルゲーと

エロとグロの十八禁のゲームも詰め込んで

そんな夢のようなソフトを作ろうとしている。

そして縁の誕生日はテストの次の日

その日が来るのを楽しみにしている。

でも、そのとき僕はまだ気づいていない

縁がもうすぐ死んでしまうことに


       ☆



そしてついにテストの前の日の朝

僕は完成した小説の最終チェックに入っていた。

時間が無くて三十ページくらいの短編になった。

でも上手くできたと思ってもいい話しだった。

タイトルは“未来へ進む道”という名前で

主人公の少年がすごく長い道を歩いて、その道の途中で

いろんな人と出会いと別れを繰り返して道を進み続ける。

そんなお話し

最終チェックをしていると携帯がなった。

渡からのメールだった。

内容は“ゲーム完成した。そっちは出来た?”と言うものだった。

裕二はすぐメールの返信メッセージを打ち込み返す。

そんなことをしている間にあっという間に昼になる。

親には勉強中と言って小説を書いていたので今回の成績は酷いだろう。

まぁそんなことは気にしない、だって縁にあげる小説のためなら

いくらでも時間なんて捨ててしまってもいい、と思っているくらいだから

さて、今日も縁のところへ

昼ごはんを食べ終わった裕二はそんなことを考えながら

病院へ行く準備をするため自分の部屋へ向かった。




       ☆




準備を終わらせ家を出た時、携帯が鳴った。

また渡からメール“今から病院に行くけどお前も行く?”

“すぐに行く駅で待ってて”と打って返信した裕二は駅に向かった。




       ☆




駅で渡と合流した裕二は病院に向かった。

病院に着くとすぐ縁のいる病室に向かう、病室で縁はゲームをやっていた。

ゲームは渡が始めて作ったゲームでRPGの一時間くらいでクリアできるやつだった。

裕二は「美南さんまたそれやってるのか〜」と、言いながら椅子に座る。

「だってこれ面白いんだもん!今やってるので五周目だよ、今回の周クリアしたら

隠しダンジョン出来るの!」と、楽しそうに笑顔で話す縁

それを聞きながら「おぉ!そこまでいったか」と、驚く渡

裕二はこんな何気ない日々がいつまでも続いてほしいと思った。

そして帰る時間になった。

縁が「渡くん、ちょっと外してくれる?」そう言った。

「あぁいいよ、裕二、俺、下で待ってるから」渡はそう言うと病室を出て行った。

静かになった病室の窓からは夕焼けの空が見えている。

「ねぇ、裕二くん、私のことはいいからテストの予習して」縁がそう言った。

「そんなの無理だよ、僕は美南さんとの時間を大切にしたい、だから――」

「ダメ!そんなのダメ!裕二くんが私との時間を大切にしたら私・・・」

「私、笑顔でお別れが出来なくなっちゃう」縁はそう言うと枕の下から

日記を取り出して無言で裕二に渡した。

それを手に持って裕二は病室を出ようとした。

そのとき縁が「私・・が死んで・・から・・・読んでね」と、言った。

それを聞いた裕二が縁を見ると縁は笑っていた。

涙を流しながら笑っていたのだった。




       ☆




その日の夜、裕二は縁との二回目のデートで縁が書いた小説を読んでいた。

タイトルは“黒い翼を持った天使”で内容は

少女がある日、学校に行くとみんなが少女をイジメてくる。

そんなことが続いて一週間後、少女を助けるものが現れる。

それは少女の好きな人だった。

でも最終的にその好きだった人が少女をイジメてたと言う事を

少女が知ってしまう。

そして最後に少女は好きな人を殺してしまう。

お話しはここで終了

縁に聞いてみると「この続きは今書いてるんだ」と言っていた。

裕二は縁の書いた小説を読み終えると電気を消し眠りについた。




       *




そしてテストの日がやって来た。

裕二は学校に行くことにした。

朝食を食べ出かけようとしたとき携帯がなった。

縁からの電話、裕二は嬉しくてすぐに電話に出る。

「もしもし」

『あっ、裕二君?縁の母です』

おいおい娘の携帯使う親は普通いないだろ?

「あっ、は、はい、そうですが、なにか?」

『縁が君と話したい・・って』

「美南さんが?」なぜ、こんな朝早くから?

『ゆ、ゆう・・じ・・くん、ご・・めんね・・・最後が・・・笑顔じゃ・・なくて

ごめ・・ん・・・ね・・さよ・・な・・・・ら』

そこで裕二の携帯の電池が無くなった。




       ☆




「これで僕の話は終わりだよ」裕二が愛花にそう言った。

「そうだったんですか、でも波子さんから聞いたのとはちょっと違う」

「波子さんはどんな嘘を涼霧さんに?」裕二がそう言ったところで

花火大会?が終わりかけていた。

「あっ、そういえば、渡たちのこと忘れてた!涼霧さん早く行こう」と裕二は言って

愛花の手を掴んで渡達の待っている場所へ向かった。

その途中、愛花は「ゆっくりでいいよね?」そう呟いていた。



第十四章 一学期の終わりと夏休みの始まりのかたち




海はどこまでも続く

その広さが時にいろんな事故に繋がる。

それでも海に出て行く新しい場所を求めて

僕は君に渡る過去の島から未来の島へ

僕は渡る君を求めて

過去の恋は未来の恋へ

僕は君が好きだ

でも君はもうこの世に居ない

だから僕は自分の好きな人に想いを伝える

君へ「さよなら」を

好きな人へ「好きだよ」を




お祭りが終わって約一週間たった今日は夏休みの初日

これから一ヶ月みんなのやる気はゼロになる。

だがこいつらは違った。

裕二と渡と波子と愛花は初日から遊びまくっていた。

しかも朝の六時からゲームで

さらにそのゲームというのが

渡が縁のために作ったゲーム集

さらにジャンルはエロゲー

しかも提案したのは裕二だった。

「にしても良くこのゲームのこと覚えてたな」ゲーム内の女の子をイジリながら

渡がそう言うと波子が

「あっ!渡ズル〜イ!その手は無しだよ〜」そう文句を言っていた。

「それにしても波子さん弱いですね、僕でも渡に勝てますよ」と、裕二が言う。

「う、うるさい!あの手はセコイだろ!あのイヤラシイ手は!

でも、縁には勝ててなかったけどな」と、渡の反撃

そんなことを言ってる渡に自分が操作中の女の子で渡が操作中の女の子をいっきに

イジッて行動不能に

「酷い、俺のオリキャラが一瞬で・・・」

「裕二くんスゴイ!」と愛花が褒めてくれたが

「涼霧さん、それ地味に傷つくから」

「それにしても裕二が十八禁をやるなんて久しぶりだな

あっ!そうだ!今度みんなで海に行かないか?」いきなりの渡の提案に

「また話しが飛んだ、でも何で海?」裕二がそう聞くと渡が自慢げに

「この前、俺、別荘を買った、で、その近くに海があって今度みんなで行こうかな〜って

思って準備してたんだ」と、言った。

「そんなこと考えないでくれ」裕二はすぐ反対する。

が、多数決では渡が有利なぜなら

「私、行く〜!」と、波子が言うと愛花も

「私も行きたい!」と言い出した。

結果、賛成・三の反対・一で行くに決定!

「いつ行くの?」裕二が聞くと渡が

「明日」そう答えた。




       ☆




夏休みの二日目の朝九時の電車の中、裕二は遅い朝食を食べていた。

裕二のほかには渡に波子それと愛花がいる。

日宮と水樹は忙しくて来れないらしい。

そのまま電車に揺られること三十分、目的地に到着

目的地は三七未完市みつなみかんしと、いう絆町のもうひとつ先にある。

そしてさらに駅からバスで別荘のある場所へ

結局、裕二の家を出てから一時間以上かかった。

バスから降りるなり裕二は早くも

「疲れた〜寝たい〜」と弱っていた。

「裕二くん、はや〜い、私は早く泳ぎたい!新しい水着もあるし」そう言っているのは

朝から元気いっぱいの愛花だった。

「涼霧さん昨日あれだけやって、よく元気でいられるね」と益々HPが減っていく裕二に

「お、お前ら今度こそ・・・」

「やってない!ゲームだよ、結局、寝たの二時半だよ」と言って裕二は力尽きた。

「ジャンルは?」と波子が聞いた。

それに愛花がすぐ答えた。

「十八禁です!」と元気よく言った。




       ☆




お昼ごはんを食べた四人は海へ行こうと準備を始めた。

が、早くも問題発生!くだらないことだが

浮き輪が無いらしい。

「あれが無いと私、泳げないよ〜」と言いながら愛花が世界が終わる時のような

ダメージを受けていた。

「それなら大丈夫!裕二がいるから」と渡の回復アイテムが愛花のHPを回復させた。

と、同時に裕二は力尽きた。

それを聞いた愛花と波子は着替えるために更衣室へ

十分後・・・「じゃじゃ〜ん!」と言う波子の声と共に愛花と波子が戻ってきた。

渡は二人を見るなり「おぉ」と、かなりのHPを回復した。

裕二が最後の力を使って二人を見た。

まずは“なぜ?”が頭の中を回る、その原因は波子の水着にあった。

「なぜスクール水着?しかもサイズ合ってないんじゃ?」

裕二の言うとおりギリギリ着れていると言う感じだ。

そして次に“あぁ〜〜えぇ!?”が頭の中を回る。

「涼霧さん?その水着はどこで?それって昨日のゲームで僕が使ってたキャラの着ている

水着ですよね?何でそんなものが此処に?」HPが回復した裕二が愛花に聞くと

「これは昨日、渡くんから貰った」そう言った、しかも笑顔で。

まぁそんなこんなで準備を済ませ、いざ海へ

行けなかった、いきなりの雨、しかもすごい風付

「こりゃ無理だ」と渡が残念そうに言った。

そしてそれを聞いた愛花と波子はトボトボと更衣室に消えていった。






       ☆




その日の夜、雨が上がり夕飯の材料調達のため近くのスーパーへ向かう四人は

助っ人の二人を連れて歩いていた。

「なんで、ねーちゃんと作家がいるんですか?」

「ひどいね〜俺の名前は作家じゃなくて連二だよ、飛翔連二」と連二が言ったが

「その“連二さん”が何で私の邪魔をしに来たんですか〜?」と、ものすごく怖い顔で

愛花が連二に聞く

「い、いや、あ、あれは・・・ノックしてから入るべきでした・・・ごめんなさい」

連二は謝ったが愛花のオーラがさらに大きくなる。

なぜ愛花がこんなに怒っているのかというと

約2時間前のこと

雨が降ったせいで海で泳ぐことが出来なくなったので

みんなそれぞれ部屋にこもってしまった。

裕二は暇なので愛花とゲームでもしようと思い愛花を呼びに行った。

が、呼んでも出てこない何かあったのか?と思い部屋に入った。

部屋は真っ暗で何も見えない。

電気を点けようと前に進む

少し進んだところで開けておいた扉が勝手に閉まった。

と、同時に裕二は誰に押し倒され押さえつけられる。

助けを呼ぼうとすると口を塞がれた。

そして裕二を押さえつけている人が

「ごめんね裕二くん、でも私、分かったの縁さんみたいにならなきゃいけないって

だから・・・」

「えっ?涼霧さん?ちょ、ちょっと待っ」そこでキス、裕二は力尽きた。

そこに連二が「裕二君ひさ・・しぶり」と、言って部屋の扉を開けた。

まぁこんな感じで愛花が怒りのオーラを纏っているわけで

その中にいる裕二は「誰か僕を助けて」そう呟いていた。







      ☆




スーパーから帰ってきた六人はさっさと夕飯を食べてゲームモード

今回は水樹がいるので十八禁ではなくレーシングゲームをやっている。

そしてなぜか一番上手いのが愛花であり最下位が渡なのだ。

「あれ?渡ってこんなに弱かったけ?」裕二が聞くと

「愛花ちゃんが俺を邪魔してくる」と、渡が答えた。

それから一時間が過ぎゲームモードが終了して

自由行動状態のとき裕二は愛花を自分の部屋に呼んだ。

「ねぇ、話しって何?」

「涼霧さんはもう学校に行く気は無いの?」

「うん、行かない」

「そっかじゃあ学校では会えないのか」裕二のその言葉に

「えっ?それって裕二くん学校に行くの?」驚いた顔で愛花が裕二に聞く

「うん、行こうと思ってるんだ」

「えぇぇぇ!!ど、どうして?」

「僕は涼霧さんに縁の話しをして気づいたんだ

いま僕がやらなきゃいけないことは縁のことを考えて毎日を過ごすんじゃなくて

僕はまた小説を書いてみようと思って

小説って言ったら学園物だからそのネタ集めに学校へ」

そうこんな曖昧なものでも、いいのだと気づいた

別に学校へ行く理由なんてその程度のことで十分だと

学校には勉強しに行くんじゃない

ネタ集めに行く

学校は小説のネタの山だから




       ☆




夏休み三日目の朝は晴れてしまった。

そしてなぜか女はみんな朝から水着姿で家の中を行ったり来たり

朝食の時も水着

そして午後になるまで待つときも水着

そしてそしてゲームのときも昼食のときも

さらに海に向かう道でも水着

普通の人が見たら“なに?こいつら”みたいなことになるだろう。

なぜこんなことになっているのかというと

みんな夏休みの宿題が山のようにあるから今日は海で遊んで明日から

地獄の宿題の道に入るからだ。

これが恐ろしい量

各教科プリント五十枚に

国語は読書感想文を作文用紙百枚〜百五十枚(本を書けるよ)

そして技術の自由工作はパソコンのフリーゲーム作り(自由じゃないし)

英語は適当な番号に電話をかけて英語で会話して相手が理解できたらダメ(ゲームじゃん)

理科はいろんな生き物に塩をかけてみよう(ナメクジ縮み、カタツムリは溶ける)

こんな感じの宿題地獄で夏休み中に終わるか終わらないかの地獄である。

とにかく海に着いた女性チームは海へ猛ダッシュして海を目の前にしてコケた。

それを笑った男性チームは女性チームのとび蹴りをくらって力尽きた。

その日は楽しかったみんな一人一人が笑ってコケて楽しめた。

夜はみんなで花火をしたし寝るときはすぐ寝れないからみんなで怖い話しをやったり

こうして楽しい一日が終わり地獄への道が開けた。




えぴろーぐ 学校へのかたち




新たなる道を僕は歩きだす

朝の通学路、お昼の給食、放課後の校庭

普通はみんなが同じこと

終わりは始まり

普通は面白くない

だったら学校を普通じゃなくしよう

みんなを普通から違う何かに変えてしまおう

まずは君から変えていく




夏休みの宿題地獄を抜けて二学期の初日、始業式の日

裕二は久しぶりに制服を着て学校への道を歩いていた。

今日は少し早く起きすぎたので家を早くに出た。

誰も居ない通学路を一人で歩く

あと十数分したら制服の川になるけど

学校の門に着くとそこには先客が居た。

「私も学校に来たよ、だって裕二くんが行くなら

私も行かないと会えなくなっちゃうし」愛花がそう言った。

これはこれで大変な学校生活になりそうだ。



                  〈つづく〉


                  あとなき



まずはこの話しは泣ける話ではありませんでしたね、笑える話でした。

この話しを書き始めたころは「泣ける話にしよう!」とか思っていたのに

なんか段々笑えるほうへ・・・

そしてキャラが最初のキャラの設定と全然違う!

波子は設定では冷静な成績優秀で冷たい人みたいな感じだったのに

明るく天然キャラになったし

渡も最初は成績サイテーのゲーム少年だったのに

成績優秀のエロいキャラになり

愛花も最初は可愛い、のんびりキャラのはずが

いつの間にか渡たちに流されてるし

もう、むちゃくちゃな話しで

本は結局、見つからず

第二部に持ち越しだし

ほかにもいろいろラストの設定があったり

たぶんこれは第二部の最後で・・・

なんかこのままだとネタバレしそうなので止めときます。

とにかく最後まで読んでくれた人ありがとうございました。


2008年の春が見え隠れする晴れた日の午後、次の話しを考えながら

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