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アンナがフロアから戻ってきた。一緒に踊っていたガイも一緒だ。
ロバートが、アンナと若い男性のガイが一緒にいても何も言わないと言うことは、ガイの人柄は合格らしい。
父がすぐに、ガイを私の前に連れてきて紹介した。
「こちらはバース子爵家の長男でガイくんだ」
「こちらはもう一人の私の娘、エレナです」
「こんばんは。ガイです。王都には出てきたばかりであまり知りませんが、今日の夜会は凄いですね。」
金髪で優しい顔をしたガイは話を振ってきた。
私もドレスを摘まみ軽く挨拶をした。
「初めまして、エレナです。今夜は宰相のマイエ侯爵の夜会ですから、本当に素晴らしいですわね」
あまり若い男性と話した事がないので、会話に困る。
次の言葉がでない。こんなとき、どうしたらいいの?
他の夜会で、義理で仕方なくダンスを踊ったときに、相手から話しかけられた事はあるが、その時は、相手の話を聞きながら肯く程度だった。会話とは言えない。
もちろん、結婚相手になりそうもない、父ぐらいの歳の年配者や、既婚者だ。
「良かったら、一曲踊りませんか?」
ロバートが合格を出した人なら間違いはないのかなぁ?
婚約者候補だけど、うまくいけばこの人と結婚か。いい人そうだけど、複雑な思いだ。
「ええ、よろしくお願いします」
ガイが差し出した手に、自分の手をのせた。