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弟子入り

次の日。放課後に屋上へ行く。


そこには昨日のように寝転がっているテルキがいた。屋上の扉を開ける音で気がついたようで、テルキは体を起こす。


「今日は誰がバッジを狙いに来たのかと思えば・・・昨日の一年坊主じゃねーか。毎日毎日挑戦か?毎日来ればどこかで勝てるかもなんて甘い考えはよすこったな」


アズサは無言で歩いていく。


テルキはふっと笑うと、臨戦態勢をとった。


「今日は、戦いに来たんじゃありません」

「へぇ。覚悟を決めた顔をしてるから、てっきりまた戦いに来たのかと思ったぜ」

「あなたに言っていなかったことを思い出したので。それと、お願いがあって来ました」


アズサはどこまでも静かに言い放った。


「じゃあまず言ってなかったことってやつの方から言ってもらおうか」


テルキが警戒を解かずに言うと、アズサが頷いた。


「俺の戦う理由は・・・惑星に行きたい理由は、好奇心のためじゃない」

「ほう・・・じゃあなんだって言うんだ?」


アズサは拳を握り、答える。


「俺は、夢のために戦ってるんだ!」

「夢、だと・・・?」


そうだ、コウとの約束のため。


「惑星に行き、誰も知らないような秘密を持ち帰ってくる。それが、昔からの夢でした」


そして、自分との約束のため。


「だから_」


だから_。


「俺はもう、逃げない!」


そこまで言い切ると、アズサはテルキを見る。


「ふーん、随分意思が固まったみてーじゃねーか」

「テルキ先輩・・・」

「以前のお前だったら、どんなに強くなろうがその夢を叶える事はできなかったと思うぜ。今のお前とは大違いだ。昨日の夜、何があったのか知らねーが、その出来事に感謝するんだな」


やれやれ、と肩をすくめながらテルキは言った。


「お前なら、きっとバッジをゲットできる。ま、俺のはやらんがな」

「あ、ありがとうございます!」


嬉しくて、頭を下げるアズサにテルキは苦笑した。


「で、もう一つのお願いってやつはなんだ?」

「あぁ、その事なんですけど・・・俺を弟子にして欲しいんです」

「は?」


この願いにはテルキもあっけにとられた。


「俺、テルキ先輩から大切な事を教えてもらいました。だから、俺を弟子にしてください!」

「別に俺はお前に何かを教えた覚えはねーけどな」

「それでも俺は、バッジ争奪戦への心構えを教えてもらったと思ってます!だから・・・!」


そこまで一気に言うと、テルキがわかったわかった、とさえぎる。


「俺が教えられるのは戦い方程度だ。それでもいいか?」


その返答に、アズサは、ぱぁっと顔を輝かせる。

「もちろんです!よろしくお願いします、師匠!」


アズサは歓喜した。


「師匠呼びはやめろって。でもま、これからよろしくな。アズサ」


これからアズサの修行が始まるのだ。





「ア~ズサ君!なになに?君、テルキに弟子入りしたんだって?」


次の日の昼休み、図書室に行った。そこで先に本を読んでいたミモリの第一声がそれだった。


「情報早いっすね・・・まぁ、そうですけど」


別に否定する理由もないので、正直に打ち明けた。


「バッジ争奪で戦い挑んだらコテンパンにされて、次の日弟子入りかぁ・・・うん、なんか少年って感じだね!」


どこまで知っているんだろうこの人は。


きらきらと目を輝かせながら言うミモリにアズサは呆れつつ、言葉を返す。


「何がっすか・・・まったくもう。俺は本気なんですよ」


ミモリは意に介さず、手を胸の前で組んで、アズサの周りを歩き出す。


「えー?だって少年漫画とかでよくあるじゃん!今日の敵は昨日の友ってやつ?っはーっ、いいね~、青春だね~!」

「昨日の敵は今日の友、ですよ、先輩。あと、友じゃないですし。俺の師匠ですから」


そう言い放つアズサにミモリはうんうん、と頷く。


「ふふふ。そうだったね。一日で随分たくましくなっちゃって。まさに見違えるようだわ」


まるで、昔からよく知る子供がしばらく見ないうちに大きくなったときのような感嘆の声を上げたミモリに、アズサは苦笑して言った。


「俺は本気で惑星行き狙ってますから。俺の夢を叶えるために。そのためなら、あなたですら倒す覚悟です」


その言葉に、静寂が流れる。ミモリは多少なりとも驚いているようだ。少しして、ミモリがいきなり噴きだした。


「いいね~!それくらい骨がある子は久しぶりだわ~!早く戦える事を楽しみにしてるわね!アズサ君」


そういつもと変わらず話すミモリにアズサはふと思った疑問をぶつけてみることにした。


「そういえば、先輩が惑星に行きたい理由ってなんですか?」


その瞬間、一瞬ミモリの表情が固まった。が、すぐに、いつもの調子に戻っる。


「あ、やっぱ気になっちゃった?んー、少し長くなるけどいいかな?」


アズサは頷いた。心なしか、ミモリの声のトーンが落ちたような気がした。アズサももしかしたら聞いてはいけない事を聞いてしまったかもしれないと思ったが、あとには引けなかった。


二人は図書室の長テーブルに向かい合わせで座った。そして、ミモリは記憶をたどるようにゆっくり、ゆっくりと話し始めた。


「そう・・・あれは、忘れもしない今年の元旦。ちょうどあなた達一年生が入学してくる前の話よ」


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