暗闇を裂く華
目覚めよ、猪木。
今日はとってもお腹が痛かったです、ぐれん丸です。
戦闘描写って難しいですね…
なんか、こう、ふわっとした感じが、ね…
・この小説は、東方projectの二次創作です。
・視点変更時に時間軸が前後します。予めご了承の上、脳内補填してください。
・今回は多分キャラ崩壊はないと思いますが、万一発見してしまった場合は全てを忘れてください。
・読んでいる最中に気分が悪くなったら、それは恐らくひどい文章あるいは液晶の影響です。直ちに目を瞑り、目と心を休めて下さい。
・読んでいる最中に万が一幻想入りしたくなったら、東方のゲームで我慢してください。因みに自分としては妖々夢がお勧めです。
・二次設定に限らず、二次創作自体が嫌いだ!という方は、ここが我慢のしどころだと思ってください。
・グングニルだけがレミリアのスペルではありません。
紅魔館、秘密の地下室。
空間がきれいに歪められ、今や広々としているその部屋はここ数百年類を見ないほどに騒がしかった。
二人の吸血鬼は部屋のほぼ中心で互いの得物を打ち合っている。
二つの武器が重なるたびに、ガァン、カァンという小気味のよい音が地下室に木霊し、一拍遅れて弾丸が飛び交う。
剣を振るい、打ち合い、少し離れて弾を避ける。
この、最早パターン化された動作を姉妹は何巡も繰り返していた。
九回目となる弾丸の飛来をフランは危なげなく避け切り、レミリアの方を向き直る。
その直後、槍を構えて突進してくる姉の姿を認めた瞬間にフランは背中の翼を全力で動かし、地面とほぼ垂直に上昇した。
レミリアが突き出した槍が空を切るのを尻目に、フランはぐんぐんとその高度を上げる。
少し遅れて空中に飛び出したレミリアが部屋の高さの半分程に達した時、フランドールは既に天井付近に到達しておりこちらを向き直っていた。
自分を見下ろしにっこりと微笑む妹の手が、怪しげな光を放つ札を手挟んでいるのを見てレミリアは上昇を中断した。
グンニグルを握る手にぐっと力を込め直し、スペルカードを構えるフランと対峙した。
フランドールが背中に生える奇妙な形の翼を動かすたびに、そこから下がる三角錘を二つくっつけたような形のオブジェが七色にきらきらと輝く。
地下室の天井は今や床から20メートルほどの高さであるが、フランはパタパタと翼を動かし天井すれすれのところで滞空している。
彼女はカードを持つ左腕を高々と挙げ、その札に意味を持たせるべく言い放った。
「圧し潰せ!スターボウブレイクッ!!」
言い終えた途端、フランの周りに七色の球体が突如として出現した。
次々と現れる色とりどりの弾は、フランドールを中心とした円を空間に描き出すように増えていき、その端が四方の壁に到達し新たなひとつの壁となった。
次の瞬間、それらの弾ひとつひとつが重力の理から解き放たれたようにふわりと浮き上がり、再び運動の方向を転じて落下を始めた。
林檎が地球に引かれて落ちるように、色鮮やかな壁は恰もレミリアに吸い寄せられるように動き出す。
弾丸の壁は宛ら釣天井が落ちるように紅き悪魔に迫る。
レミリアはこの弾幕の鮮やかさに一瞬目を奪われるも、直ぐ様自身が通り抜けられる弾の隙間を探しにかかった。
(…そこね!)
レミリアは直ぐに弾幕の穴を見つけた。
その穴までの距離と自分の飛行速度を鑑みるに、後二秒程度の余裕があると彼女は直後に判断する。
レミリアは上体を大きく捻って左足を前に出し、槍を持つ右手を引いて投擲の構えをとった。
次の二段目の弾幕を展開し終えた妹に一瞬で照準を合わせ、全身を使ってグングニルを投げつける。
ゴウと槍が空を裂く音がし始めたのと同時に、彼女は弾幕の抜け道目指して全速力で飛翔した。
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フランは第三段目となる光の壁を展開している最中、目にも止まらぬ早さで飛んで来る槍への対応にほんの僅か意識を奪われた。
ひらりと紅槍を躱し、それに追従する紅球弾を避けその一部は剣で打ち返す。
ドスリとグングニルが天井に突き刺さる音が背後から聞こえた。
槍を避ける間弾幕を展開するのに意識が割けず、七色の壁は未完成のまま空中に固定されていた。
足下を見ると、レミリアが一段目の弾幕を丁度通り抜けたところだった。
直ぐ様半ばで中断していた第三弾幕の展開を再開し、完成していた第二弾幕を姉に向かって落とす。
光の壁はふわっと上昇すると、再び落下に転じた。
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(………!)
一つ目の壁を抜けたレミリアも落ち着いては居られない。
二つ目の弾幕を通り抜ける為の隙間が、ここからかなり離れた、部屋の対角に近い所にしか見付けられなかったのだ。
つい先程避けた弾幕が床に当たってドドォンと音を立てるのを尻目に、全速力を以てその弾幕の穴を目指す。
しかし五メートル程地面と水平に進んだ頃、このままでは間に合わないと気付いた。
それでやむなく下降することで、押し潰さんと迫る弾幕から距離を取りつつその隙間を目指すことにする。
フランから遠ざかってしまうと反撃のチャンスが遠退くが今は仕方ない。
クンと音が聞こえそうな程素早く飛翔の方向を変え、数秒後の自分の位置と弾幕の隙間の位置が重なるように移動する。
光の壁が迫る速さは加速度的に早まり、レミリアも負けじと加速した。
大丈夫、間に合うとレミリアは自分に言い聞かせ、出せる限りの速度で空中を駆ける。
彼女が飛ぶのはもう地面すれすれ。
手を上に伸ばせば弾幕に触れられるだろうというところだ。
視界は上方から迫る虹色に塗り潰されて行く。
穴まで後数メートル---。
ビュゥウン!!
光の網からレミリアが這い出いてきた。
凄まじい速度であった。
次の瞬間、
ドドドドドォォオオン!!!!
七色に輝く光の壁が床を焼き焦がす音が響いた。
妹の方に上昇し始めていたレミリアは背中に爆風を受けて急加速する。
彼女は飛行しながら、お気に入りの帽子を焦がしてしまった事に多少がっかりしたが、何とか通り抜けられた事で安堵の溜め息を漏らす。
上を見る。
色鮮やかな弾幕が三度落下を始めた所であった。
まだかなりの時間的余裕があると判断する。
そこでレミリアは掌を上に向け、紅い霧を集めて四本のナイフを形成した。
三本のナイフはどこぞのメイドのように指の股に挟み、もう一本は親指と人差し指の腹で握った。
ナイフを作る間もレミリアの顔は次なる弾幕を向いており、既に抜け道を見つけた所である。
第四弾の壁を作っているフランに向かって一本のナイフを投擲し、次なる弾幕をくぐり抜けるべくレミリアは急上昇した。
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惜しい、あとちょっとだったのに。
フランは姉が第二の弾幕を抜けたのを見て心の中で舌打ちをし、それとほぼ同時に完成した第三の弾丸の壁を投下する。
予想外の粘り強さを見せるレミリアに対し驚きながらも、どこまで頑張れるかなと考えていた時、視界の隅に何かが飛び込んできた。
悪魔の妹は首を少し傾げてそれを避けた瞬間、それが何であるか理解する。
---鈍く光る赤色のナイフであった。
出所は知れている。
今ちょうど第三弾幕をくぐり抜けたレミリアだ。
その速さ故に分かりづらいが、彼女の手にはまだナイフが握られているようだ。
これしきでは弾幕を展開する邪魔にはなり得ないのに何故だろうとフランは考えたが、姉の意図が理解出来ぬまま、たった今完成した第四の光の壁を放った。
ふわりと浮かび上がること一瞬、七色に輝く釣天井は落下を始めた。
続けて五つ目となる弾幕を展開し始める。
フランを中心に次から次に現れる球。
その球で形作られる円が天井の半分の面積になろうかという時、またも視界に何かが煌めいた。
フランは右手に持つ剣でナイフを両断し、剣に秘められた熱量を以て融かし尽くす。
下を見ると、落下中の虹色の弾幕を構成する球と球との間、少女が一人通り抜けられそうな隙間の真下で滞空しているレミリアの姿があった。
「小癪な…!」
悪魔の妹は弾幕を展開する速度を上げ、完成すると即座に姉に向けて投下した。
ブワッとその弾丸ひとつひとつが持ち上がり、フランの視界を色とりどりに染め上げる。
放った色鮮やかな弾幕の行く先を見ようともせずに、続けざまに次なる七色の壁の建設に取り掛かった。
全ては、憎き姉に怒りをぶつける為に。
怨み晴らさでおくべきか。
復讐に燃えるフランドールの目に、またもや飛来する紅い物体が映った。
「無駄なことをッ!」
そう言うや否や、フランはレーヴァテインで横薙ぎに払った。
ボシュウという音を立て、ナイフが焼失する。
そして直ぐに、僅かな時間だけ中断していた弾幕の展開に意識を集中させようとして---。
右手下方から突如飛来してきたナイフに気が付いた。
その刃物の軌道は、フランドールの頭部を正確に捉えている。
今までの三本よりもずっとずっと接近していたナイフを感知すると、フランは殆ど反射的に反応していた。
一瞬のうちに体ごと大きく仰け反り、躱す。
常人では到底叶わない反応速度で、吸血鬼は難無く凶刃を回避した。
---しかし、この戦い、この一瞬に於いて、その回避は悪手であった。
一つは、弾幕の展開を完全に中断したこと。
もう一つは---紅き悪魔を僅かに一瞬、見失ったこと。
この二つは、膠着しつつある状況を打破するに十分な材料であった。
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レミリア・スカーレットは第四の虹色の壁を通り抜けた直後に三本目、そのまま数メートル飛行して四本目のナイフをフランに向けて投擲した。
彼女は今部屋の半分より少し高いところを飛行している。
落ちて来る五回目の弾幕、何処を通り抜ければよいかは既に分かっていた。
その隙間は、フランのほぼ真下に位置する。
これでこのスペルは終わりにするという意気を持って、最後になるであろう隙間抜けをするべく全速力で飛翔した。
飛行の最中にフランを見上げると、自分を見失ってまごついているようであった。
あんなに単純な罠に掛かるようじゃまだまだね、と妹のことを評しつつ急上昇する。
あと数秒でレミリアの位置は把握されるだろう、しかし、数秒有れば十分だった。
落下してくる第五の虹色の壁、弾丸の雨を縫うように通り抜け、遂にフランとの間には何も遮る物が無くなった。
妹までの距離は凡そ五メートルほどだと見当をつけた。
フランは既にこちらに気付き、炎剣を右腰に構えてこちらを見下げている。
…姉妹の目が合う
直後、レミリアは急加速した。
妹との距離はぐんぐん狭まり---
突然、かくんと急上昇する。
フランのレーヴァテインの間合いに入る寸前の出来事だ。
それ故に、姉の加速に完全に反応できていたフランが袈裟懸けに斬り下ろした炎剣の切っ先は、レミリアのはためくスカートを浅く切り裂いたのみであった。
レミリアはそのまま妹の頭上を飛び越えた。
フランドールが攻撃を空振ったことを理解し、直ちに後ろを振り返った時にその目に映ったのは---
姉の顔だった。
レミリアの端整な顔が、目の前に見えた。
上体を大きく捻り、まっすぐ伸ばした手は奥に向かってる。
脚は膝から折り畳まれ、背筋は大きく反っていた。
あ、これは殴られるんじゃないか。
時間の経過が緩やかになったように感じる中、フランは直感的にそう思った。
姉の身体は限界まで引き絞った弓の様で、今にも込められた力を解き放とうとしていた。
…そしてフランは気付いた、現実が非情であることに。
---その手に、天井に突き刺さった紅槍が握られていることに。
直後、姉の手元がぶれた。
姉の全身がぶれた。
世界がぶれた。
ぐるりぐるりと物凄い速さで世界が廻る。
あまりに突然の事で、体が全く動かない。
フランドールが落下しているという自身の状況を認識できたのは、床に激突する寸前であった。
ドグシャァァアンンッ!!!
地下室に、激突音が響いた。
お疲れ様でした。
なるべく違和感無く書きたかったのですが、難しいですね。
本当はこの回で(フランの)スペルカードを三枚分書く予定だったのですが…分からないものです。
何故スターボウブレイクには必ず隙間があるのか?
という疑問については、その様なものだと理解しておいてください。
避けられない弾幕は弾幕では無いのです。