宴の始まり
おいでませ幻想。
作者の脳では1ヶ月が経過しました。
いつの間にか中二成分が…?
何か恥ずかしい台詞を書いてしまったような気がします、ぐれん丸です。
・東方二次創作です。
・東方projectを知らない方には分かりづらいと思います。m(_ _)m
・二次設定が苦手な方は歯をくいしばって耐えてください。
・中二病だけがレミリアではありません。
悪魔の妹は歓喜した。
一つは、姉がまだ壊れていなかった事に。
もう一つは、その姉が遊んでくれると言った事に。
…長い間、幽閉されていた鬱憤を、閉じ込めた本人に晴らせることに。
興奮が抑えきれない。
「行くよ、お姉さまッ!」
と短く叫ぶや否や大きく踏み込み、しなやかなバネを利用して跳躍した。
一瞬でレミリアに肉薄する。
狙うは顔面、大きく振りかぶった右腕を凄まじい速度で振り下ろす。
パシィン!!
フランの腕に伝わったのは期待していたのとは異なる感触で、想像よりずっと小気味の良い音が地下室に響いた。
「まぁまぁ。狭い地下室で馬鹿みたいに殴り会うのは興醒めじゃない?」
声を発したのは、左手の平でフランの拳を受け止めたレミリアであった。
その顔には妖しげな微笑みが浮かんでいる。
レミリアは左手でフランの腕はを掴んだまま、右手の指を鳴らした。
パチン…!
秘める力と裏腹に華奢な指から発生した音が地下室の壁に吸い込まれる。
その音がすっかり消えると、地下室に変化が起きた。
地面が少し揺らいだのを感じてレミリアは左手を放す。
次の瞬間、四方の壁が遠ざかるように動き始めた。
空間を切り取り部屋を作る役割の壁は音もなく遠ざかってゆく。
タンスやベッドなどあまり多くない家具も壁に引っ張られるように、それでいて互いの位置関係は崩さないように離れていく。
天井が高くなってゆくのは、単に天井が離れているのか、床が沈んでいるのか、あるいはそのどちらとものせいか。
吸血鬼達の間も部屋が広がるにつれてじわじわと広がる。
二人の様子はと言うと、レミリアは余裕の笑みをその顔に湛えているがフランはあわてふためき手をばたばたさせている。
部屋が広がっていくというこのあからさまな怪奇現象は、数十秒続いた。
部屋を囲む壁や天井がその動きを止めたとき、地下室は紅魔館自慢のエントランスよりずっと広くなっていた。
対峙する二人の吸血鬼の間は部屋の拡張に伴って十メートル程度の距離となった。
「咲夜に頼んで空間を広げて貰ったの。」
レミリアは口をポカンと開けている妹に向かって言った。
「これで存分に暴れられるでしょ?」
その言葉を言い終わると、レミリアは細くしなやかな右の腕を持ち上げ妹を指差した。
その顔はキリリと引き締められていたが、何処か余裕を感じさせる様でもあった。
紅き悪魔は言った。
「お互いに言いたいことは沢山あるでしょう。でも今は穏やかに語らいたい気分じゃないわ。
だから…全ての思いを弾幕に乗せて、気の済むまで遊びましょ?」
「…闇に閉じ込められ続けてきた私の思いが中ったら、いくらお姉様と言えど壊れちゃうよ?残念ながら今は手加減できる気がしないの。」
「殺す気で掛かってきなさい、死なないから。私も貴女をぶっ殺すつもりでやるわ。幸いにして、語り種は尽きないのよ。」
「怨み言と辛み言は私も尽きないわ。
…遺す言葉はそれだけ?」
「ふふっ、お互いに思いが尽きないのなら…
楽しい夜になりそうね。」
動き出したのは両者同時であった。
レミリアが掌を上に向けると、何処からともなく黒い気のような霧が密まり、長方形を形作ったかと思うと一枚のカードとなった。
重力に従って落下するカードを、レミリアは外側へ払う様に指先に挟んだ。
「神の名の下に悪魔の呼び声に応えよ。我は粛正の力を求めん…神槍『スピア・ザ・グングニル』!!!」
紅き悪魔が高らかに詠唱すると、紅く縁取られた精緻な魔方陣がレミリアの足元の脇に現れた。
その中心から見事な装飾が施された槍が紅い光を放ちながら出現し、レミリアはその柄の部分をしっかりと掴んだ。
本当はスペル発動に詠唱は必要無いのだが、士気の高さは強さに直結すると考えるレミリアはそれっぽい事を言わずには居られないのだ。
対するフランは、
「迸れ!禁忌『レーヴァテイン』ッ!!!」
短い詠唱と共に彼女の右手の側、空中に現れた魔方陣から燃え盛る炎長剣を抜き放っていた。
それぞれの手に得物を持った吸血鬼が飛び、互いに引き寄せあうように接近した。
フランは大上段に剣を構える。
レミリアは下段で切っ先を右に流している。
「ぉらあああぁっ!!!」
打ち合う寸前に聞こえた雄叫びは一体どちらのものであったか。
ガキイィィィンッ!!!!!
凄まじい衝撃。
二つの武器が恐ろしい速度と信じられない力でぶつかった事で発生した火花が、弾幕の様に飛び散り煌めく。
二人は衝撃に身を任せて吹き飛ばされるように離れた。
吸血鬼は一瞬にして地面まで到達し地面で数回バウンドするが、その際は地面と接する瞬間に手や足をつき、柔らかく関節を曲げることでダメージを分散している。
彼女達はいずれも自身の体より大きい武器を手に持っているため、得物が地面に触れないように左手一本で衝撃を和らげるという離れ業を行ったりしている。
腕の骨折くらい吸血鬼は容易に治癒できる。
しかし、それにも多少はエネルギーを消費してしまう。
それ故にダメージを極力溜めないように戦闘は進めるべきなのだ。
レミリアは三回のバウンドの後、体勢を立て直した。
そして、息を継ぐ間もなくレミリアは回避動作に移った。
スペルカードによって出現した武器の恐ろしさは、その切れ味やリーチだけではない。
一番注意すべきなのは'剣筋からの弾幕'である。
それらの武器は振るうと弾幕を伴って動くのだ。
レーヴァテインの剣筋から飛来する無数の弾丸。
レミリアはその弾丸ひとつひとつ弾道を見極め、最短の動きでそれらを避ける。
その回避動作には一切の無駄がなく、時折ステップや飛行を交えるそれはひとつの舞踏の様であった。
弾丸が床に当たり炸裂する音は恰もバックグラウンドミュージックかの様だ。
レミリアは舞い続けて弾丸の雨を避け切った。
最後のひとつの弾が床で弾けるのを確認してから、ふぅ、と息を吐きレミリアは妹の方を見た。
フランも丁度グングニルの弾幕を避けきった様だ。
その表情は、満面の笑み。
「あはは、あははははは!!!
…本当に、楽しくなってきたねッ!!!」
作者の中ではレーヴァテインとグンニグルは装備魔法なのです。
遊戯王というよりは進化クロスギアなのです。(意味不明)
…咲夜さんは今回、地下室の外側からドアに耳をぴったりくっつけて、何でこんなことしてるんだろう…などと主への不満をいだきつつも合図を待っていたのです。