自転車に乗った王子様
自転車に乗った王子様
子供のころの夢は白馬に乗った王子様と恋に落ちて結婚すること。
そんな無邪気な夢はいつの頃か忘れてしまった。
大人びていく周囲の友達。昔は一緒に遊んだ男子も思春期になるとほとんど会話がなくなった。みんな恋をし始めていた。
私もある人を好きになった。その人は寡黙で、顔は美形、スポーツ万能。女子の憧れだ。
もちろん勝ち目がないのは解っている。しかし、ひょんなことから仲良くなった。
悪い関係じゃない。今の関係を壊さないように悪化しないように生活していた。
ある日、合コンに急遽参加することになった。乗り気じゃなかったが断る理由にはならない。もしここで断れば……。まぁ、女子の友情とはシビアなのだ。
あの人には別に好きな人がいる。それが誰か知らないけど、私じゃない。だって前に好きだった人は私と違ってかなりの美人だった。だから今回も私じゃない。
つい比べてしまう、彼と。軽い、軽すぎるんだ。
「どうしたの?紗希、全然楽しんでないじゃん」
「ううん、そんな事ないよ!楽しいよ!」
「そう?ならいいけど。で誰狙い?」
「私は卓也君かな」
「ホント?私日埜くんかな。声かっこよくない?」
「修二君は?いい感じじゃない?」
「え~ちゃらすぎない?」
こういう会話苦手。誰が誰狙いとか腹の探り合い。怖い怖い。私は隅っこでおとなしく隠れておこう。
「そろそろ戻ろうか」
「そうね」
やっぱり苦手だな……。帰りたい……。
「紗希!」
カラオケボックスの扉が開き、腕を掴まれた。
「え?」
「はぁ、はぁ、……帰るぞ」
腕をつかんでいる人は私の思い人だ。
「え……晴仁くん?」
「高野君じゃん!どうしたの?」
「悪い、こいつ、急用で来た。連れて帰る。これ会費」
「ちょっ!?」
「ホントに悪い。ほら行くぞ」
私は訳が分からないまま店の外へ連れていかれた。
「ちょっと、晴仁君、どういう事?」
晴仁君は自転車に乗る。そして手を伸ばし私を後ろに乗せた。
「良いから、来い」
店から離れるまで説明はないようだ。
「どうして、この店が解ったの?」
「ああ、七瀬から聞いた。七瀬と替わったんだろ?」
「え、うん。そうだけど」
「お前が嫌そうな顔をしてた気がするから助けに来た」
「え、そんな顔してた?」
「いや、そんな気がしただけ」
この人は落ち着いているふりをして意外と行動派だ。
「いや、違うかな。なんか嫌だった」
話が見えない。
「お前が合コン行くのが嫌だった」
ああ、この人はなんて罪作りなんだろう。私の事を心配しての事なんだろうけど、私は、そんな言葉でも惑ってしまうのに。残酷にもこの人は私が忘れようとしても忘れさせてくれない。
私がどれほどの思いを投げかけても届かないと解っているのに彼は私に思いを持たせ続ける。届かないボール。届けてはいけないボール。これを投げると私たちの関係は壊れてしまう。しかしそのボールを投げたのは
「お前を誰かにとられるのが我慢ならない。……言わないと分からないみたいだから言う」
ボールを投げたのは彼の方からだった。
お前の事が好きだから
私の王子様は自転車に乗っていた。
基本的に妄想文です。
風呂上がりのチューハイのつまみにもならないような文だと思います。
ていうか作者が酒を飲みながら書いた文です。ごめんなさい。
一応前後のストーリーがあるのですが、それを書く気は今はないです。
読者の皆様の強い、強い、ご要望があれば書きます。
できればみなさんでいろいろ妄想してみてください。
感想に
おっさんw
マジキチww
とか書かないでください。
作者の心が砕け散ります。