不穏な休日2
つい橋木に引っ張られるがままに
ショッピングモールの中に入ったのはいいけど、
その橋木が急に止まってしまう。
ん……?
どうしたんだ?
彼女はやってしまった、という顔で口を開く。
「で、武田さん。私は何をしようとしたんです?」
「僕が聞きたいよっ!!!ってかえぇっ!?どういうこと!?」
「思えば私、こういう所来たことなかったです」
「じゃあなんで引っ張ったの!?」
これは完全に予想外だった…。
でもそんな慣れないところに突っ込んでいったのも、
僕が暗い表情をしていたせいだと思うと、
やっぱりこの子はいい子だな、とか思ったりして。
そんな風に少し考えていると、
それをどう受け取ったのか橋木が急に慌て初めて、
「い、いや、だって私勉強しかしてこなかったですし!男性とも友達とも遊んだこととかなくて!というより友達もあまりいなくて!!!」
なんだか聞いてもいないことをカミングアウトしてくださってた。
てか後半悲しいなおい。
ふぅ、一息つく。
頭をリセットしよう。
学校のこととか僕の能力とか、考えるのは一旦止めだ。
今はただ橋木に喜んでもらえるようにしなくちゃな。
「別にいいよ」
「へ?」
はてなマークを浮かべる橋木に、僕は笑いかける。
「無理しなくていい。今日は僕がエスコートする。この町の紹介も兼ねてね。いいよね?」
それに彼女は吃りながらもはいと答えた。
それから後は、男性としてまぁまぁ及第点を
与えられるほどのエスコートはできたと思う。
一緒に服を見て回ったり、ご飯を食べたり、
ペットショップで立ち止まる橋木を見て微笑んだり。
楽しい時間はすぐ過ぎてしまうようで、
気づくともう日が傾いてきていた。
十分に楽しんだので、僕たちは最初の待ち合わせ場所に戻っている。
「橋木の家はどっちの方なんだ?」
「私は……あっちですね」
橋木が指を差した方向は
僕の家がある方向と同じだった。
「丁度いいな、じゃあ帰るか」
「ええ、あと今日は楽しかったです。ありがとうございます」
「あぁ、僕も楽しかったよ」
そう言って二人笑い合った。
どれだけ歩いただろう。
僕らは今閑静な住宅街を歩いている。
ここから家まであと十分ってところかな。
まわりは誰もいなくて僕と橋木が歩く音だけ聞こえている。
今日は色々あったな……。
橋木の知らない一面を見れた気もするし──
そこで、僕は気持ち悪さを感じる。
ちょっと待て、いくら日が沈みかけてるとはいえ、住宅街で足音『だけ』聞こえているっておかしくないか……?
ここまで僕の思考が行着いたとき、
「武田さんッ!!!」
僕は橋木に突き飛ばされていた。
ふらつきながら起き上がると目の前の地面が隆起していて、男の声が耳に届く。
「ほぅ……避けたましたか。なかなかの反応速度ですね」
「誰だ!!!」
丁寧な言葉遣いに向かって僕は叫ぶ。
するとさっきまで誰もいなかったところに、
一人の男が立っていたのに気がつく。
オールバックの茶髪にスーツに白い手袋。
まるで執事のような服装だ。
そいつは僕を見ながら言う。
「申し遅れました。私は岩波。武田様でよろしいですね?」
「なんの用ですか」
自然な動作で橋木が僕と岩波の直線上に立つ。
それを確認して岩波は手入れのされた眉をひそめた。
「あなたに用はないのですが。私はただ武田様と……」
「初っぱなに攻撃しといて、話をしたいだけ、とは言わせませんよ」
相手に言葉を最後まで言わせず、橋木は言い切った。
さっきまでと雰囲気が全く違う、これは殺気。
もし自分に向けられていたら、と思うと嫌な汗が伝う。
しかしそんな殺気にも臆さない岩波が肩をすくめる。と、
「いえ、そんなことを言うつもりはありませんよ。ただ私は……おやおや、少々マナーがなっていないのではないですか?」
いつの間にかその頭に向けて橋木が放った蹴りを片手で防いでいた。
「──ッ!」
それを視覚した直後、
蹴りの反動で橋木は僕のそばまで戻ってくる。
そして叫んだ。彼女自身の異能を。
「駆け抜けろ!!!【疾風疾駆】!!!」
瞬間橋木を中心に可視できる風が逆巻く。
彼女の長い髪が舞い上がる。
対して岩波も、髪を掻きながら喉を震わす。
「崩し崩れろ【地盤隆起】」
彼の言葉に呼応するように
その足元のアスファルトが砕けた。
すさまじい量の魔力だ。
というか僕、さっきから蚊帳の外じゃね?
『というかさっきからお前蚊帳の外だな』
いつのまにか出てきた『僕』も同じことを思ってたらしい。
うるせぇよ。