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不穏な休日

「981…982…983ッ」

『おーおー、一本指腕立てたぁ今時古い筋トレしてるねぇ。熱血漫画かって。』

「う…るせぇよ…僕はッ…よわい…。強く…なら、なきゃなんな、いんだ。」


息を切らしながら頭に響いてくる声に返す。


こんにちは、武田ひろみです。

今僕は自室で絶賛筋トレ中。


ちなみに

この間からもう一人の『僕』が話しかけてきて困っている。

消えればいいのに。


『その扱いはないんじゃないか!?』

「そうやって…心を読んでくるとこが…嫌いなんだよッ!1000!!!」


ぷはぁ

筋トレ終わりっ。


そのまま汗で湿った床に崩れ落ちる。

かなり気持ちが悪い。


『筋トレなんてしなくてもあの異能使えばお前は最強じゃねぇかよ。使用方法間違わなきゃ。』

「【光喰フォトン・イーター】のことか?」

『名前は勝手に付けろっつったけどさ、中二臭い……あ、いや、いいとおもうぜ……?』

「るっせぇよ!!!哀れむな!!!」


コホン……。

【光喰】は、この間顕現した能力のことだ。

命名は僕。

概要は、紛らわしいが『僕』に教えてもらった。


発動するとまず、髪と眼の色素が抜け、白髪緋眼となる。

なぜだかわからんが、長さも伸びる。

そしてその特筆すべき能力というのは、

名前のまま、この異能は光を喰らうところだ。

言い換えるなら、光に属するものを徐々に奪っていく。

それは単純な明るさでもあるし、光に類する魔法でも、その人の【希望】でもある。

そして奪った【光】は【力】に還元される。


ここだけ聞くと、チートな能力だと僕も思った。

でもやはり、強い力にはリスクがあるようで、

発動直後から【光喰】は僕自身も蝕んでいくらしい。


『まぁ蝕むっつーか、破壊衝動が膨れていくだけだけどな』

「だから心を読むなって……」

『しょうがねぇだろ?その心に俺はいるんだから』


『僕』はキヒヒと、嫌な笑い声をあげる。


……話を続けるが、そういうことだ。

その破壊衝動に耐えるには精神面を鍛えるしかないんだと。


じゃあなんで筋トレ?


まぁ当然この疑問に行きつくわけだ。

それは異能なしの僕が強くなれば、

この力に頼らなくていいんじゃないか、

という考えに則っている。


『あんま効果は出てなさそうだけどなー』

「継続は力なり」

『これまだ三日目ぐらいじゃなかったか!?』


頭の中でなんかわめいているが、

気にしないでおこう。


『気にしろよ!!!』


うるせぇなぁ……。

こんど除霊師さんでも呼ぼうかな。


『いや、俺霊的なものじゃないから!!!』


てか実際この異能使ったとこ

覚えてないんだよな…。

どのくらいの力が使えるのかもしらないし。


ふと彼女の言葉が頭に浮かぶ。


『それはあなたに力を感じたから』


……取り敢えず会ってみるか。


◇ ◇ ◇


「こんにちは、武田さん。」

「休日なのに呼び出して悪かったな。」

「いえ、武田さんからお誘い頂けるなんて嬉しいです。」


僕の正面の彼女は微笑む。


橋木美奈。

先日僕と戦った少女。

さっきの言葉を言った張本人。

戦闘時の面影などなく、

年よりも随分と大人びていて、どきりとしてしまう。


ここは、僕の通う学校から少し離れたデパート。

いや、ショッピングモールか?

のすぐそばの待ち合い場所である。


鼓動を抑えるのに苦労していると

彼女が話かけてきた。


「私ここら辺初めてなんですよ。」

「そっか、橋木は転校生だったっけ?」

「はい、だから色々教えてください。」


そう言う彼女はとても美しくて、

とっさに視線をはずしてしまう。


「どうしました?」

「いやっ!?なんでもない!そ、そういえばあの模擬戦闘の話なんだけど……」


なんとか本題に持ってくことに成功した。

歩みを進めながら僕は言った。


「あの時のこと、よく覚えていないんだ。教えてくれるか?」


はい、と橋木は返す。


「もう何て言うか見てられませんでしたね、制御できなくなった小春さんのゴーレムに吹き飛ばされた辺りから。」

「あぁ……確かにあれは痛かったな。」

「普通痛かったじゃ済まないんですけどね……。骨もおかしく曲がっていましたし。」

「こう見えても体だけは頑丈なんだ」


回復力もそれなりなようで、

骨折ぐらいなら一日二日でくっつく。

唯一の取り柄だったんだが。


僕らは行き先も決めずに歩き続ける。


「その後殴られそうだった小春さんを突き飛ばしたじゃないですか。あれも驚きました。」

「え、なんでだ?」

「あの時の武田さんは動ける状態じゃなかったですし、動けてもあの速さは異常です。余裕でトップスピード超えてました。」

「まじか……無我夢中だったから覚えてなかった……。で、どうなったんだ?僕が知りたいのはここからだ。」


雰囲気を読み取ってか橋木は一息つく。

そして吸い込まれそうな大きな瞳で

僕の目をまっすぐ見て言った。


「悪魔でした。」

「悪魔?」


あまり聞きなれない単語に聞き返してしまう。

そんなこと言われたのは初めてだ。


「いつの間にかゴーレムの上にいて、いつの間にかそれを叩き割っていました。冗談じゃなく、あれは全く見えませんでした。」

「そうか……話は変わるけどさ、前に橋木は僕に力を感じたから、戦いを挑んだって言ってたよな?」

「言いましたね。それがどうかしましたか?」


彼女はうなずき、僕に問いた。


それに僕は返す。


「最初から僕にあの力があることを知ってたのか?」


橋木は突然の言葉に目を開いたが、

その口元を緩めて僕に言う。


「いや、知りませんでしたよ?」

「え……?だって」

「私が感じたのはもっと大まかなことです。それがここまでのことなんて、思ってもいませんでした。私は生まれつき魔力と潜在能力を見るのに長けていましたから。」

「……そうか」


このとき僕はどんな表情をしていたのか。

橋木は僕の前まで小走りで出てきて、

不満そうな顔で口を開く。


「なんか不満そうですね」

「そんなことは……」

「じゃあ遊びましょう!」

「へ?ちょっ…うわっ!?」


突然腕を引っ張られる。


待って、ストップ!!!



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