5話
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なのの
春にはまだ程遠い早朝、
少しずつ朝の光が王宮を照らしていく、夜を過ごした寝室にも光が射し込んでくる
眠る彼女を僕は静かに見ていた、手を伸ばしそっと頬に触れてみる
指先から伝わる確かな体温、柔らかな黒髪そして白い肌
乱暴に扱えば壊れてしまうそうなそんな印象を醸し出す
「本当はこんなことしたくなかった…」
今更後悔しても遅い、時間は戻らないし、いつまでもこうしてはいられない
琴菜の耳元にそっと囁く
「おはよう琴菜、そろそろ起きないと……ね」
そっと琴菜を抱き寄せながら、回した腕に力を込めて再度囁く
「聞こえてる琴菜、朝だよ」
「う…ん」
一瞬、目に皺をよせて体を動かしたがそれに合わせて揺れる胸元が、酷く心許無い存在に見えて僕の理性を試しているかの様だ
目覚めのキスとばかりに琴菜の額にキスを1つ落す
まどろみの中で感じる、穏やかに波打つ音が耳に届く、頬を撫でる感触と額に感じる心地よい温もり
「……もう少しだけ寝かせて」
掛布を胸元に寄せ丸くなる、でもすぐに背中を擦る優しい温もり
包み込む温かさに髪の毛を梳く優しい指はどこか懐かしい
「もう、ちょっと寝た…い」
「そうしてあげたいのはやまやまなんだけど…ね」
また感じる頬の温もり、抱きしめられる心地よい温もり
少しずつ意識が浮上していくと同時に感じる疑問、耳に届いたこの声は・・・誰?
「まさか」と言う思いで私は目を開け、瞬きを繰り返す、そして目の前にいる人の顔を認識する
「イーツ…殿下?どう…して?」
「おはよう、琴菜」
驚きと戸惑いに溢れた目、目線の先にいるのは紛れもなくこの国の皇太子
「ま、まさか……私?」
胸元を抑え、驚きで飛び起きた
2人とも服を着て寝てた事実が何もなかった証
「………うっ」
「初な反応が嬉しいけど、護衛達は僕がここにいることは知っているし」
イーツ殿下の言葉といろいろな感情が混ざり会う
こんなことをしてまでイーツ殿下は私と……
でもこれは自分で招いた過ち、もうどうすることも出来ない、運命は動き出している
「なぜ……なぜ、ここまでするのですか?こうまでして私の気持ちを無視するのですか?」
イーツ殿下に抱きしめながら私は泣き崩れてしまった
イーツ殿下の言う通り、もうすでに王宮内に知れ渡っていることだろう、イーツ殿下と同じ部屋で一夜を過ごしたという事実が
「僕は、君を愛している」
「だったら何故?こんなことを」
より強く抱きしめられる、心地よいと感じながらも
どこか素直になれない
抵抗する気力はもうない、耳元で囁かれた彼の意思
「琴菜が心配することは何もない、全部僕が1人でやったことだ、責めは僕が
受ける。だから、黙って側に居て欲しい」
謝罪にも似た、イーツ殿下の言葉
悲しみに沈んでいく心、
絶望に似た私の感情
私の心を望むと言うならもっと別にあった筈
なぜ、ここまで私の気持ちを無視してまで望まれるのですか?
………イーツ殿下
………何故
なるべく早めに更新できるよう頑張ります
なのの