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第七十四話◇
血塗れの彼の背後には殺し合う蒼と紅の兄弟。
一体どこで間違ってしまったんだろうか。
「…バルド。いえ…」
「バルド様。」
彼の名を呼ぶ。もう聞こえてはいないだろうが。
「王にとって邪魔者は我々従者が排除する。貴方にとっては誠に不本意でしょうが…貴方も邪魔者の一人。」
憧れだった人は…せめて…
「覚悟。」
裏切り者ではなく、従者として死なせてやりたい。
「…ぅ゛…あ゛…!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
突っ込んでくる彼を迎え撃つ様に駆け出す。
彼の横を走り抜ける。
振り返った時に見えたのは、血を吹き出し、崩れていく彼。
「バルドさ…!」
しかし、その表情は笑っている様な気がした。
倒れた彼をぼーっと眺めていたらぐにゃりと景色が歪む。
血を流しすぎたらしい。
ガクンと膝の力が抜ける。
倒れていく中、視界に映るのは主の姿。
「…申し訳ありません。カノン様…。どうやら私は…ここまでの様です…。」
主の勝利を願いながら、従者は意識を手放した。