第七十一話◇
やらかした…(汗)
どんだけ放置したんだ私…;;
すいませんでした;;
ーヒナタsideー
急がなきゃ。
「はあ…はあっ…。」
城の中を走る私。
いつのまにかさっき拾った弓を握りしめる。
カノンとジルクが心配…。
走り続けると何か争っている様な声が聞こえる。
「…なんだろう?」
その声が聞こえる方に向かうと、なにか戦ってる様な…刃物が交わる音も聞こえてくる。
走っているうちに開けた場所に出た。
コンクリートで出来ている大きな部屋なんだけどコンクリートだけじゃないみたい。
多分コンクリートの下に土台として土があるんだと思う。
私からみたら土とコンクリートで出来た体育館みたいな感じ。
「ヒナタ様!お下がり下さい!!」
広間を見回していると突然声が響く。
「!?」
声の方を見るとあちこちから出血してるボロボロジルクがいた。
壁に背を預けて座り込んでいる。
息も荒くてその顔はいつもみたいに余裕の笑みがない。
「ジ…ルク…?」
ジルクの視線の先には鎧を着た人物。
戦場に出て来てる位なんだから多分男の人なんだろうけど…。
その人が持ってる剣からはジルクの血が滴っている。
「!?」
「ヒナタ様!!」
ジルクの前にいたはずの鎧の男が私の目の前に移動していた。
剣が迫る。
けれど足が動かない。
傷も構わずジルクが駆け出した。
剣が突き刺さった。
飛び散る赤い血。
けど全く痛くない。
恐る恐る閉じていた目を開けると、
私を庇ったジルクの右肩に剣が突き刺さっていた。
「ジ…ッ!!」
「この方に…。」
ジルクの名を叫ぶ前に響く低い声。
「…手を出すな。」
いつも温厚で優しかったジルクが初めて…
初めて怖く感じた。
ゴシャン!と何かが潰れる音。
前を見ると鎧の男の顔面に深々とジルクの剣が突き刺さっていた。
赤黒い血が剣を伝う。
男の身体が力を失って後ろに倒れる。
「……。」
「大丈夫ですか?ヒナタ様。」
「ジ…ジルク!」
ぼーっとその様子を眺めていた私にジルクが声をかける。
相手の返り血と自分の血でドロドロだがいつもの様に優しく笑っている。
けれど手で押さえている右肩からはドクドクと血が流れる。
「私の事はお気になさらず。カノン様の元に参りましょう。」
「でも…」
血がボタボタ滴っているジルクをそのまま放って置く訳には…。
すると困った様に笑ってジルクが言った。
「貴女様もカノン様も優し過ぎます。もっと、私を道具の様に扱って頂いてよろしいのですよ。」
「そんな…」
ジルクを下から見上げる様に見るとやはり困った様な顔をしていた。
「失礼。」
次の瞬間。
ぽふぽふと頭撫でられる感覚。
「貴女様は本当にカノン様に似ておられる…。」
その声は優しいのに…なんだか悲しそうだった。
「あの方を救えるのは貴女しかいないのかもしれませんね…。」
「ジルク?」
「失礼しました。」
スッと私から離れる。
「行きましょう。カノン様が心配です。」
そうだ。カノンは…
「ジルク!カノンは何処!?」
ジルクが壁際に移動する。
「この部屋はもともと一つでした。」
「へっ?」
「敵の魔法によって部屋が真っ二つに別れてしまいまして…。」
「嘘…。」
じゃあ今この部屋の広さは半分なの?
「カノン様はこの壁の向こうです。」
土で出来た壁を触ってコンコンと叩くジルク。
「ふむ…。意外と脆いですね。これならば…。」
少し考えてからジルクが言う。
「ヒナタ様。少し危険ですのでお下がり下さい。」
言う通りに少し下がる。
フー…とジルクが大きく息を吐く。
そして壁に向かって手をかざす。
すると…
もの凄い音と共に暴風が発生し、壁にぶつかる。
壁にビシビシと亀裂が走る。
さらにジルクが魔力を込めると、風が壁を突き破る。
風によって出来た壁の穴から見えたのは…
笑いながら剣を降り下ろす長く青い髪の男の人。
倒れる黒い短髪の男の人。
その男の人から吹き出す赤い血。
目を見開くカノン。
「バルドぉッ!!!」
カノンの叫びが木霊した。