第六十五話◇
「よろしいのですか?ジルクにあれを任せて。」
「ジルクがあんな鎧に負ける訳ねぇだろ。」
バルドの問いに俺が即答する。
「左様ですか。ではこちらも…はじめましょうか。」
そう言ってバルドが中段に剣を構える。
それに対して俺は上段に剣を構えた。
「らぁッ!!」
ダンッと地面を蹴って連続でバルドに突きを放つ。
腹に三発、右肩に二発、左足に三発突きを放つが全て避けられる。
それに苛立って力一杯剣を降り下ろす。
ギンッ!と言う金属音。
力一杯降り下ろしたのにも関わらずバルドは余裕な表情で俺の剣を自分の剣で受け止めている。
「…懐かしいですね。」
「何が…ッだよ…!?」
剣と剣が交わり力比べになるとぽつりとバルドが言った。
「貴方様とミズキ様…お二人の剣術の指導をしている時の様です。」
「…なに…言ってんだよ…!!」
兄貴も、指導の時間も…
全部…全部…
「全部てめぇが壊したんだろうが!!」
ボッと剣から炎があがる。
その炎がバルドを襲う。
けど地面から現れた土の壁が炎を遮る。
魔法か…!
「ふむ。魔法の力はつけた様ですね。」
「うるせぇ!!」
バルドの剣を弾いて一旦距離を取る。
「てめぇが…てめぇが反乱なんか起こさなければ良かったんだよ!!」
「……。」
「!?」
俺の怒鳴り声に一瞬…本当に一瞬。
バルドが辛そうな顔をした。
けどさっきの嘲笑う様な顔に戻ると言った。
「その減らず口…黙らせますよ。」
バッとジルクが戦っている方向に手を向ける。
すると轟音と共にさっきとは比べ物にならない大きさの土の壁が現れる。
「カノン様!!」
「ジルク!!」
部屋が、土の壁によって二つに分かれた。