第五十六話◇
私は話した。
カノンの様子がおかしい事。
それと…
まだ私が戦争に関与している事の自覚がない事。
私は…普通に過ごしていただけ。
ごく普通の学校で、
ごく普通の生徒で、
ごく普通の人間だったのに。
何故か、命を狙われて、
何故か、こんな世界に呼ばれて。
なにが…なんだか…
分からなくなった。
自分が何を信じたら良いのか分からなくなった。
そんな私が人の命を奪って良い訳無い。
「…本当に、何なんだろうね。」
「二人に話しても…しょうがないのにね。」
黙って聞いてたお姉さま…アンジェが立ち上がった。
「この…お馬鹿!」
ベチッという音とおでこに衝撃。
「いったぁ!!」
思わず涙目になりながらおでこを押さえると仁王立ちしたアンジェがいた。
「アンタが信じるものなんて一つでしょうが。」
「それにその信じてる物が迷ってるなら一緒に考えてあげるモンでしょーが。」
ポカンという表現が今の私にはすごく似合うんだと思う。
「ほら!早く行きなさいよ!」
「ど、何処に!?」
「この城の屋上!!」
「あるの!?」
「あるわよ!!」
アンジェに押し出され私は部屋を出た。
なによー…。
口を尖らせながら屋上に向かう。
「ヒナタお姉ちゃんどうしたのー?」
「んふふ…乙女の悩みよ。」
アスカとアンジェがこんな会話しているのを知らずに…。