第四十四話◇
「てんめぇ!カノン!!炎使うなんて反則だろうが!!」
「それを言うならお前だって反則だろうが!!」
ギャーギャー言い合う二人。
ヴォルトは身体中に軽い火傷の後がありカノンは右肩を押さえている。
似た者同士ね…。
「決着つけてやるよ!!」
「こっちのセリフだ!来いよヴォルト!!」
それぞれ腰に差していた剣を抜いて構える。
「「オラアァァァァ!!!」」
ギィンッ!と金属がぶつかる音がする。
火花が散る。
「わ~…すごい…」
カノンとヴォルトの闘いは人の姿になっても激しかった。
「おおおっ!!」
バチバチッとヴォルトの剣が電流を帯びる。
そしてそのままカノンへ振り下ろされる。
「させるかよっ!!」
今度はカノンの剣がボオッと炎を帯びる。
カノンの炎とヴォルトの電流がぶつかり合い相殺される。
ブワッと砂煙があがる。
「どうなったのかな…?」
「ヒナタ様。」
私が夢中でカノンとヴォルトの闘いを見ているとジルクから声をかけられた。
「どうしたのジルク?」
「私が目配せをしたらヴォルト様に向かって矢を打って下さい。」
「…は?」
…それは私にあの子を殺せと?
両軍とも兵は刃のついた剣は持っていないけど、カノンやジルクは刃のついた剣を持っている。
それに私だって危険な矢を持っている。
充分人を殺せる。
「あ、違いますよ?威嚇程度に足元にでも打って下さい。それだけでいいんです。」
び…びっくりした…!
まぁ…それだけなら…。
「で…出来ることはやりたいけど…。」
「ありがとうございます。では。」
ジルクが手を振ると風が起きて風が止んだときには彼の姿は無かった。