第二十五話◇
「戦争と…私が…?」
「ああ。」
「隣国の名前はデルト。この国の北部にある国だ。」
「戦争…なんてあるの?」
私の問いに黙って頷くカノンとジルク。
「さっき言ったろ?俺の一族は龍にも人にもなれる一族だった。」
カノンが言う。
さっきから気になってた…。
『だった』ってなに…?
「…デルトの国王が俺に呪いをかけた。」
カノンが言うとジルクが俯く。
「呪い…?」
「ヒナタ…お前がいないと俺は龍の姿になれない。」
…私が?
「なんで私?」
「デルトの国王が俺にかけた呪いは二度と龍の姿になれなくなる呪いだ。」
はぁーとため息を吐くカノン。
「それはこの世界の誰にもとく事は出来ない。」
「でも…別世界から来たお前ならとく事が出来る。」
「ちょっと待ってよ!私カノンになにもしてないよ!?」
たまらず声をあげる。
けどカノンは真っ直ぐ私を見たまま言った。
「お前の存在自体が俺の呪いをといてるんだ。」
「存在…?」
もう意味分かんないんだけど…。
「まあ分かりやすく言えばヒナタ様の魔力のおかげですかね。」
ジルク。分かりやすくないんですけど。
「生きるものなら誰でも魔力を持っています。それをコントロールし、扱える者と扱えない者の違いはありますが。」
「魔力をコントロールし、扱える者は…こんなふうに!!」
「うお!?」
「わわっ!?」
ジルクが言いながら手を振った瞬間部屋につむじ風が起きる。
ジルクの燕尾服みたいなスーツが風にパタパタと舞う。
風にのって一枚の紙がジルクの所に辿り着く。
「魔法を扱う事が出来ます。」
それを取り、目を通しながらジルクが言った。
「お前なぁ…!」
若干怒り口調でカノンが唸る。
「部屋の中で魔法使うなよ!!」
「おや?加減もせずに最大級の魔法を使って部屋を一つ丸焦げにしたのはどなたでしたっけ?」
「それはっ…!」
「あなたでしょう。後この資料間違ってます。書き直して下さいね。」
「なにぃ!?」
ショックを受けているらしいカノン。
意外とガラスのハートね。