語られることのない都市伝説 【月夜譚No.411】
隣から思い切りネタバレの話が聞こえてくる。これから見ようと思っていたミステリー映画のトリックが、詳らかにされていく。
彼は頭を抱えたいのを堪えて、眉間に皺を寄せた。
所用で普段は乗らない電車を使ったのがいけなかったのだろうか。満員電車の中、一度座ったこの席から立ち上がるのは至難の業で、妙齢の女性の声は決して大きくはないのによく通って耳を塞いでも内容が入ってきてしまう。
こういう時に限ってイヤホンを忘れるのだ。垂れ流される展開を否応なく聞かされ続け、到頭犯人の名前まで明かされてしまった。
フラフラとホームに降り立った彼は大きく息を吐き、改札を出た。
いっそのこと、記憶を消してしまいたい。そうすれば、何の憂いもなく映画鑑賞を楽しめるのに。
「……あれ?」
考え事をしていたせいか、いつの間にか知らない路地に入り込んでいた。昼間だというのに辺りは薄暗く、のっぺりとしたビルの外壁だけが前後に伸びている。
彼は踵を返して道を戻ったが、行けども行けども出口がないどころか景色も一向に変わらない。
このままここから出られないのではないかと怖くなってきた時、道の向こうに光が見えた。彼はほっとすると、その光の中に駆け込んだ。
一瞬、眩しさに視界が眩む。徐々に慣れてきた目に映ったのは、自宅最寄りの駅前だった。
何をしていたのだったかと少し考えて、出かけるところだったと思い出す。
駅に入ろうとしたが、何故か嫌な予感がして彼はバス停に向きを変えた。
バスを待つ間、スマートフォンで近くの映画館の上映スケジュールを調べる。今度の休日に目当てのミステリー映画を見にいこうと画策する彼の表情は明るかった。




