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ある大学教授の手記④


そんなはずはない。

だがそうとしか考えられない。

なにゆえ今になって?

彼女とのことはずっと昔の話だ。

付き合っていた女は束縛の強い女だった。

それが事故に遭い四肢を失った。

私は苦悩した。

きっとあの女は自分の不幸を盾にさらに私を支配するようになる。

そう思うと恐ろしかった。

そんな時に言い寄ってきたのが彼女――木下利久だった。

彼女は優しかった。

私に寄り添ってくれた。

しかしそれは罠だった。

私が彼女と関係を持つまでの罠だった。

肉体関係を持ってしばらくした頃、彼女は私にあの女と別れるように迫ってきた。

私の為だと言う彼女の目はぎらついていた。

あの時だ。

私はあの女を裏切っておきながら、面と向かって彼女を捨てることを憐れに思った。

いや、その瞬間に直面することを恐れたのだ。

四肢を失い、醜く変わり果てたあの女に罵倒されるのを恐れた。

そんなひどい仕打ちをする自分を嫌悪した。

心の底ではあの女がこのまま衰弱して死ぬことを望んでいたというのに。


彼女はそんな私に業を煮やし、もういいと言った。

自分でやる。と言った。


しかし実際に死んだのは彼女の方だった。


あの女と同じように四肢を失い、最後には背中が腐って死んだ。

医師の話では寄生ちゅうかバクテリアとの見立てだったが、詳しいことは結局誰にも分からなかった。


そしてあの女は、ある日忽然と病院から消えたらしい。

どこに消えたのか?

そこにこの呪いを解くための答えがあるはずだ。

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