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くくらよ総合病院3F リネン室

 

 櫻子氏から再び動画が送られてきました。

 

 それだけで、彼女がまだ無事だということが確認できて僕は胸を撫でおろしました。

 

 ですがこれ以上動画を再生するのが恐ろしいです。

 

 濃厚な障りの気配がします。

 

 先ほどからパソコンのデスクの下――僕の足元に、何かがいる気がしてなりません。

 

 これを読んでいる皆さんは無事でしょうか?

 

 変な物音や気配はありませんか?

 

 蛍光灯が明滅したり、妙な音を立てていませんか?

 

 夜中に奇妙な虫の声が聞こえたら、すぐに画面を閉じてください。

 

 動画の内容に移ります。

 

 

 *

 

 

「咄嗟にリネン室に逃げ込みました。傷口が少し痛みますが、何とか無事です。彼女が追ってきている様子はありません。一安心です。ところでこちらをご覧ください」

 

 そう言って櫻子氏は、白いシーツが積まれた棚を映し出しました。

 

 棚自体には何も変わった様子はありませんが、僕はあるモノを見つけてゾッとしました。

 

「ね? 分かったでしょう? この棚、裏に扉を隠してるんですよ。あるいはバリケードととも考えられるかもしれない。バイオハザードなら突入待ったなしですが、さすがに腰が引けますね。どうしようかな……」

 

 僕は「やめろ」と叫んでいました。

 

 ですがその叫びが動画の彼女に聞こえるわけもありません。

 

「まあこうなったらどの道ですね。凸しまーす。これ、固定されてんのかな……」

 

 そう言って彼女はシーツをよけ始めました。

 

 鼠色のペンキで塗られたスチール製の棚と一緒に、背後の扉が露わになっていきます。

 

「いけそうな感じですね。よかった。ボルトで固定されてたら、六角レンチを探し回るところだった。リアル・バイオハザード! この動画バズるんじゃない?」

 

 彼女が平静を保つどころか、馬鹿げたことを話している神経が心底理解できません。

 

 この女の情緒どうなってんだよ⁉

 

 そんな僕のことなどお構いなしで、彼女は棚を脇へやり、扉の前に立ちました。

 

 錆びだらけの鉄のドアです。

 

 古いマンションやアパートのボイラー室にあったような、重厚な鉄のドアです。

 

 ステンレスのドアノブだけが、かろうじて輝きを保っていました。

 

 それがまるで〝開けて〟と誘っているように見えて、僕は息が止まりそうでした。

 

「じゃあ、行ってみまーす」

 

 そう言って櫻子氏がドアノブに手をかけると、ノブは拍子抜けするほど簡単に右に回り、重い扉の開く音がしました。

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