大阪会場のSさん
僕は再び予見ゼミが開かれた大阪会場に電話をかけました。
しかし前回話を伺ったSさんは不在で、別の方が電話に出られました。
「もしもし。お世話になっております。以前電話で〝予見ゼミ〟について取材をさせていただいた深川という者ですが、Sさんはいらっしゃいますか?」
「はぁ……Sは今不在でして……」
どうにも歯切れの悪い返事に嫌な予感がしました。
ですが、ここで引き下がるわけにもいきません。
「そうなんですね。いつ頃お戻りになられますか?」
「……戻りません」
「え……?」
思わず声が漏れました。
相手の女性は黙っていたのですが、しばらくしてから低い声で言いました。
「Sは体調を崩して退職しました」
「それは……お気の毒に……」
僕はうまく答えることが出来ずに、それ以上何も言えませんでした。
電話を切ろうかと思ったその時、受話器から意外な言葉が聞こえてきました。
「深川様から連絡があったら、連絡先を伝えるように言われています……ホンマに掛かってくるとは思ってへんかったけど……」
「あの……体調不良の内容とかって、教えてもらえたりしますか……?」
「いや、それは本人に直接お願いします。個人情報なんで、私からはよお言いません」
いつの間にか大阪弁に戻っていたその女性は、それだけ言って電話番号を教えてくれました。
正直かけるのが恐ろしいです。
ですが、僕や櫻子氏と関わった故に障りがあったのだとすれば、このまま無視するわけにもいきません。
僕はしばらく番号を書いたメモを睨んでいましたが、その番号をタップし始めました。
その時、自分が微かに震えていることに気付きました。




