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俄かに

 櫻子氏から送られてきたのは俄かに信じられない映像でした。

 非常口の緑色の明かりに照らされた薄暗い病院の廊下で、確かにミミズのような姿の巨大な環形動物がうねっていたのです。


 今の時代、AIを使えばこのような動画を生成することも可能でしょう。ディープフェイク動画は本物と見分けがつかないくらい進歩しています。


 ですが櫻子氏の状況を考えると、その線は考えづらいように思います。

 そもそも入院を含む全てが嘘で、僕にドッキリを仕掛けているならフェイク動画説もあり得るのかもしれませんが、僕の調査内容にまで影響を及ぼすなんてことは不可能です。


 僕は迷った挙句、この動画をオヨメに見せてみることにしました。

 オヨメは青い顔で動画を見終わった後もしばらく沈黙していました。そりゃそうだと思います。


「どうする……? もうやめようか……?」


 若干の期待を込めて僕がそう言うと、オヨメは首を横に振りました。


「櫻子ちゃんを見捨てられないよ。手術の痕がまだ痛いんでしょ? 多分弱ってるんだと思う……それに」

「それに?」

「櫻子ちゃん、何かに気付いたんだよ。ミミズとヤギおじさんとソロモン……」

「ソロモン関連だとヤギおじさんはバフォメットか……でもは聖書にミミズの話なんてあったかな?」

「でも、調べる方向はそっち向きなんじゃないかと思う。予言ゼミも聖書関連で調べてみたら?」


 予想に反してオヨメは調査に前向きでした。というよりも、櫻子氏はオヨメの仲良しなので、彼女の身を案じてのことでしょう。

 ですが僕はこれ以上踏み込むのはヤバいんじゃないかという気持ちがやや優勢でした。

 オヨメにはまだ言っていませんが、近頃の霊障が無視できない域に入って来ています。

 鏡の中で自分の動きが遅れたように感じたり、視界の端で何かが動く気配があります。


 視界の端ならまだいいのですが、実は嫌なイメージがあります。


『眼トキソカラ症』というものをご存知でしょうか?

 回虫などの寄生虫が、本来の宿主ではない人に入ってしまった場合などに起こるもので、寄生虫の住みよい場所を求めて眼球内に迷入してしまうというものです。


 オヨメにも霊感があります。

 ですが僕にしか異変が感じられないということは、怪異は外側ではなく僕の内側に入り込んでいるのではないでしょうか?

 得体の知れない寄生虫のように、ミミズが僕の中で蠢いているかもしれないと思うと、正直僕はもうこの一件から手を引きたくてたまりません。


 ですが同時にこうも思います。

 入り込まれている時点でもう手遅れなんだと。

 もしそうならば、引き返す選択は意味を成さないでしょう。

 解決するまで迷宮の奥に入っていくしか、もう僕に道は残されていないのかもしれません。

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