予見ゼミの様子
「ホンマ奇妙なセミナーでしたわ。中会場が満員で、多分100人くらい集まっとったはずですよ」
「奇妙といいますと?」
「レジュメは半ぴら数枚なんですよ。それでみっちり五時間。何話すんかと思ったら、講師のおっさん延々おんなじことばっかりですよ?」
この時点でとても嫌な予感がしました。
ですが僕には続きを促す以外の選択肢は残されていません。
「同じこと……」
「そうです。フニクリフニクラってあるでしょ? 鬼のパンツは良いパンツって歌の元になってる。あんな感じのことをずーっと喋ってはったんです」
ぞくりと鳥肌が立ちました。
〝くくりく くくるき くくらよ〟
その言葉が脳裏を過ったからです。
正直とても怖かったのですが、僕は意を決して確認してみることにしました。
「それって〝くくりく くくるき くくらよ〟じゃありませんでしたか?」
「ああ、そんな感じやったかもしれません! 私も会場の外からちょこちょこ様子見てた程度なんで、絶対とは言えんのですけどね」
「あの、それで受講者の方たちは怒ったりしなかったんですか? 詐欺とか、そういう話になると思うんですけど……?」
「そこですよ! それが一番けったいやったんです! 怒るどころか、時々ドッと会場が湧いて爆笑する声とかするんですよ⁉ なんか身内にしかわからんネタなんやろうけど、あれ多分宗教やと思いますよ? 信者さんの集まりやったんちゃうかなあ」
「なるほど……ちなみに、詳細な日付はお分かりになりますか?」
「はいはい。ちょーっと待ってくださいよ? ええと……20■■年の1月ですね。日付は……あれ? なんか染みになっとって見えへんな……すんません。多分中頃やとは思うんですけど、おかしいなあ……」
「十分です。本当にありがとうございました」
僕は丁寧にお礼を伝えて電話を切りました。
予見ゼミは実在していました。
開催地域と開催時期が分かったので、僕はその近辺で詐欺事件の訴訟や記事がないかを調べることにしました。




