迷宮入り1
正直、櫻子氏にどうやって調査を進めたのか尋ねようかとも思いましたが、小説家の癖に取材も碌にできない無能ですね――などと言われるの癪に障るので、僕は連絡するのを辞めました。
掲示板に今さら何かを書き込んでも反応があるとは思えませんでしたから、私はパチスロ雑誌に掲載されていた会場に連絡することにしたのです。
いつの記事かも分かりませんから、その電話は酷く要領を得ないやり取りなりました。
「もしもし。お尋ねしたいことがあるのですが、■■■センター様でお間違いないでしょうか?」
「はい。そうですが?」
「そちらで〝未来を見通す目 予見ゼミ〟というセミナーが開催されたという記事を見つけまして、そのセミナーについてお伺いしたく」
「いつ頃のセミナーでしょう?」
「ちょっと時期が分からなくて……」
「……少々お待ちください。お名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
「深川です」
面倒くさがっている気配や、不信感が伝わってきて早雲心が折れそうでした。
受話器から流れるモーツァルトを聞きながらしばらく待っていると、ふいに先ほどの女性の声が響きました。
「申し訳ありませんが調べてみたところ、該当するようなセミナーは見つかりませんでした」
「そうですか。お手数をおかけしました」
神奈川に続き名古屋の会場も同じような反応でした。
フェイク記事でそんなセミナーは存在しないのではないかと思った矢先、大阪の会場の職員の方が大きな声でこう言いました。
「ああ! ありましたね。そんなやつ! けったいなセミナーでしたわ」
「本当ですか⁉ 連絡先とかわかりますですしょうか?」
「個人情報なんでそれはちょっと……失礼ですけどあれですか? 被害者の方とか?」
「いえ……僕じゃなく知人がちょっと……」
嘘ではないとは思いつつ、罪悪感で言葉に詰まっていると、電話口の男性にはそれがかえって同情を誘うことになったようでした。
「ああ……それはお気の毒に。でもなあ……さすがにもう連絡先も変わってるやろうし」
「いえ。お気遣いありがとうございます。その、どんなセミナーだったとか、何かご存じありませんか?」
「……まあ、それくらいやったら話しても問題ないでしょう」
男性はそう言って、セミナーの様子を話してくれました。




