第2談
「ねえ、ケイ」
「なんだ」
「私って儚げ美少女じゃない?」
平ノ宮スイは屋上の机を縦に二つ並べて、その上に寝そべりながら、またくだらないことを言い出した。
「どんな前提だ」
「で、私思うのよね」
「なんだ」
「もしかして、『余命が残り僅かなんじゃ』って」
「…理由を聞いてもいいか?」
「だって、こんなにも儚いのよ。罪な女どころじゃないわ。きっととんでもない業が無ければ、世の理に反してるわ」
「なるほど」
「ケイはどう思う?」
あの日以来、俺は屋上の掃除をしながら、こうしてこの女の話を聞いている。
なぜこの女がここに居るのかは、俺もわからない。
「ねえ、聞いてる?」
「聞いてなかった」
「だから、私は余命宣告されてもおかしくないって話よ」
スイは右手で額を隠し、ため息をつく。
「困ったものだわ。神もミスはするのね。
私ったら、義務感に刈られて今にも屋上から身を投げ出しそうだわ。」
「…それよりさ、手伝ってくれない?」
「手伝うって何を手伝うの?」
「屋上の掃除」
「沢井先生に頼まれたのは貴方よ。私は関与してはいけない。だからこうして見ているでしょ」
「お前が言わなきゃバレないだろ」
「お前…?」
「あ、いや平ノ宮。平ノ宮」
補足。平ノ宮は『お前』と言われるのが嫌いらしい。
そして現状パンツが見えそうだ。
「、今日、修学旅行の班決めがあったのよ」
「そうだな」
閑話休題と言うやつだ。
またくだらないことを言い出した。
俺は相槌だけして掃除をし続ける。
「でね。私って、美少じゃない?
だから、すぐに班は決まったのよ」
「うん、」
「それでね。あ、6人班なんだけれど、一人足りなかったのよ。でもまあ少なくてもいいとは言っていたから、特に気にしてはいなかったわ。
けれど、他のグループで7人になっちゃって、その子たちはジャンケンで負けた子がこっちに来なければいけない。みたいなことになったのよ」
平ノ宮は寝そべりつつ足を組み替える。
パンツが見えそうだ。
「でね。本題はこれからよ。じゃんけんで負けたその子が、負けた瞬間にこう言ったのよ。」
「なんだ」
「『くそぉぉ!!』……って」
俺が沈黙していると、続けて話しかけてくる。
「どう思う?」
「…まあ、失礼な話ではあるが、特段仲の良くない人と修学旅行ってのも、まあ些か共感できるな。ましてや本物のナルシストともなれば」
「何か言った?」
「いやなんでも。」
「でね。私は思ったのよ」
俺は『何を思ったの?』など聞かない。
パンツが見えそう。
「『いや、私と同じ班になれて、嬉しいだろうがッ』ってね」
「…なるほど」
「あと、さっきからスカートの中を覗こうとしないでもらえる?
非常に不愉快だわ」
「見てるわけないだろ」
「はあ、死にたいわ。」
屋上にいる儚げ美少女は今日も死にたがっている。




