真夜中の恐怖
あれは僕が20歳くらいの、下宿生活にもようやく慣れてきた頃の話です。
僕が住んでいた下宿は、四畳半のワンルーム。
ドアを一歩出れば、そこはすぐに共同廊下。
風呂もトイレもキッチンも、洗濯機も物干しも、全部“仲良くシェアしましょう”スタイル。
まるで男だけの無法地帯、男子限定サバイバルキャンプ。
家賃は月1万円。光熱費合わせても14,000円。
今の人にこの話すると「それ、逆に罠じゃない?」って顔されます。
そりゃそうです。今や幻の激安物件。
当時、10人ほどの大学生や院生がこの謎の建物に住んでいました。
気の合う仲間もできたけど、一度も顔を見たことがない謎の住人もいて、、、
特に気になったのは、「女の声」が聞こえてくる部屋の主。
「え?女性?この物件に?」
という衝撃に当時の僕は震えました。
いま思えば、彼は彼で“人間界の上位種”だったのかもしれません。
さて、そんな奇妙で自由な下宿生活の、忘れられない一年生の夏の話です。
もう30年も前、エアコンなんて贅沢品!
○○県の灼熱地獄に耐えるため、部屋の窓とドア全開+扇風機フル稼働でなんとか風を起こしていました。
部屋の中はもはや天然サウナ。テレビ見てるだけで滝のように汗が流れます。
快適さゼロ。野性味100%。
そんな夏のある日、同じ下宿の友人・山田くん(大阪出身・三男坊・甘え上手)が、やたら僕の部屋に来ては「暑いわ〜」を連発。
まぁ、普通に食事して、会話して、特に何も起こらず1日が終わる――はずでした。
……が、事件はその夜、静かに牙をむきました。
僕の目覚まし時計は、昔ながらの「ガンガンベル式」デカ音仕様。
朝7時セットがルーティン。
でもその夜、突然、午前1時に、、、、、
「ガンガンガンガンガンガン‼」
と、下宿全体に響き渡る爆音!
飛び起きた僕、寝ぼけながら時計を探すも、ない! どこにもない!
でも、明らかにこの部屋で鳴ってる…
ようやく発見したのは、なんと、、、天井の照明の上!
そこに乗せるか⁉
「これはもう、犯人はあいつしかいない」
そう確信した僕は、1週間後、きっちり仕返ししてやりました。
でも、事件後は先輩たちに謝って回る羽目に、、、
何しろ深夜の爆音ですから、そりゃ全館騒然ですよ。
仕返しされた山田くんは、怒ってました。
激オコでした。
事件から数週間後、僕は油断していました。
朝、ドアを開けようとすると――開かない。
びくともしない。
何度押しても、まったく動かない。
(あれ? 地震? 台風?それとも……バイオハザード?)
不安が爆発し、思考停止の末、窓から裸足でダイブ!(1階で助かった)
回り込んで玄関から建物に入り、自分の部屋のドアの前に立った瞬間、、
「ガ―――ン!」
ショック過ぎて言葉が出ません、、、
廊下側の部屋のドアは、ドアの四辺がガムテープでべったり!!!
もう、芸術かってレベルで隙間なくガムテープで封印されてました。
「やっぱり……大阪出身野郎だ……」
そう確信した僕は、悟りました。
山田くん、見た目は陽気な三男坊だけど、実は復讐の執念の塊だったのです。
その後、山田くんは可愛い彼女ができて急に真人間になり、卒業後は○○市の彼女の実家近くに移住。お子さんも2人できて、平和な人生を送っているそうです。
でも、僕は今でも思うのです――
大阪出身者、信用ならん。