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第7話 魔女、野菜炒めを食す

「エリーはこの後どうするつもり? 何か依頼でも受ける?」


「とりあえず拠点になる宿を探して、お昼もまだなので街を散策しながら何か買って食べようかと考えていました」


「そう、なら私が案内してあげる、良いですよねミランダさん」


「そうね、お昼休憩にはちょうどいい時間だから、いってらっしゃい、宿は宿木亭なら女の子一人でも安心できるし案内してあげなさい」


「(北の開拓村から一人で来たみたいって大将に言ってあげなさい)」


「(わかりました)」


 なにやら二人で内緒話をしているけど、これが聞こえているんだよねー、わざわざ聞こえているなんて言わないけど。


「サーラさんよろしくおねがいします」


「それじゃあ行きましょうか」


 ギルドのカウンターから出てきたサーラさんに促され歩き出す、ギルドの出口に来た所で一度振り返りミランダさんに頭を下げる。顔をあげるとミランダさんは優しげに手を振ってくれた。


「まずは宿に案内してあげる、宿木亭といってエリーみたいにウッドランクになりたての女の子をたまに案内しているのよ」


「女の子だけですか?」


「そう女の子だけ、大将とその奥さんの二人がやっていて娘さんが一人いる所よ」


 娘さんに悪い虫がつかないようにそうしている感じかな。


「大将も奥さんも元ゴールドランクの冒険者なのよ。だから防犯はバッチリの良い宿だよ」


 ギルドから暫く歩いて本通りから少し裏に入った所にその宿はあった。立地としては流行る要素のない場所だけど、宿のある道は綺麗に掃除されている。両隣は元々お店だった名残があるけど今は空き家のようだ。


「たーいしょう、まだお昼食べられる?」


「おうサーラか、余り物でいいなら出すぞ」


「じゃあ二人分お願い、それと部屋にまだ空きがあったはずだよね、この子を泊めてあげて」


 サーラさんに続く感じで宿に入ると、テーブルが3つほど並んでいるのが見えた。カウンターの奥からは、いかついマッチョな人が出てきて私を値踏みするように見て一瞬眉をピクリと動かした。


「こいつか?」


「(北の開拓村から一人この街に来たみたいです)」


 それを聞いて一瞬訝しげな表情を浮かべ頭をガシガシと掻くと、ちらりと私の方を見てサーラさんを見て話しかけてくる。


「余り物だから銅貨3枚でいい、話は後で聞く、とりあえず飯だな適当に座って待ってろ」


 サーラさんがお金を出す前に、ポケットから銅貨を6枚出して大将さんに渡すと何も言わず奥へ歩いていった。サーラさんにはここは私が払いますと言っておく。


「エリーありがとう、今度お返しするね、それにしても大将がなんかいつもと反応が違うような気がするね」


「そうなんですか?」


 暫く待っていると、大将がお水の入ったコップと野菜炒めのようなものを持ってきてくれた。


「冷める前に食べちまいな、話はその後だ」


「はい」


「それではそれぞれの神に祈りを」


 サーラさんが目をつむり食事の前の祈りを始めたのでそれに合わせて手を組み目を閉じて心のなかで「いただきます」と言っておく。


 お肉と大盛りの野菜炒めという感じで、タレがいい味を出している。このタレちょっと欲しいな、作り方教えてもらえないかな。二人して特に話すこともなくひたすら食べて、最後にお水を飲んでごちそうさま。


「美味しかったです、特にタレが最高ですね」


「でしょー、ここの料理はヘルシー志向で女性に人気だし美味しいのよ」


 食べ終わった食器をカウンターに持っていくと、大将さんと奥さんだろうか、金髪をポニーテイルにしている女性が出てきて、食器を受け取り一度奥へ引っ込んで戻ってくる。


「サーラ、後はこっちで対処するからお前は戻っていいぞ」


「なんだか今日の大将っておかしくないですか?」


「あん? そんな事はない、気のせいだ」


「まあいいです、それじゃあエリーの事お願いしますよ、それじゃあねエリーまたギルドでね」


「はい、サーラさん色々ありがとうございました、ミランダさんにもよろしく言っておいて下さい」


「それじゃあね」と言って宿から出ていった。


「エリーといったか、とりあえず座りな少し話を聞きたい」


 私と大将が座ると綺麗な女性がお水を3つ持ってきて席につく。


「俺はガンドルフ、元ゴールドランクの冒険者だ、こっちが妻のアーシアだ、昔の怪我が原因で声を出すことが出来ないが気を悪くしないでもらいたい」


 なんだかすごく警戒されているのがわかる。


「私はエリーと言います、よろしくお願いします」


「…………」


「…………」


「…………」


 なぜか無言の時間が過ぎていく。


「お前何者だ?」


「何者……ですか?」


 ここはどう答えたら良いのだろうか、バカ正直に魔女ですなんて言うわけにもいかないし、どうしたものかな。


「お前のそのローブ、なにを隠しているかしらんが、隠している時点で駆け出しのものじゃねーだろ」


 あー……、分かる人にはやっぱりわかっちゃうもんだね。


「そうですね、なんといいますか世間から隔絶された場所で生活していて、最近そこから修行の旅に出たという所でしょうか」


 ガンドルフさんがアーシアさんに目を向けて、アーシアさんが頷いたことでため息をついている。


「嘘は言っていないようだがそれが全部じゃないだろ」


「まあ、それは、私にも言えないことはありまして」


「なら言えることは全部言っちまいな、それを聞いてどうするか判断する」


「判断ですか?」


「ああ、お前と命をかけて戦うかどうかのな」


 そう言ってガンドルフさんは可視化できるほどの闘気を纏って笑いかけてきた。いやそんな怖い笑顔浮かべたうえに、命をかけて戦うってどういう事よ? ぷるぷるわたしはわるいまじょじゃないよ、とでも言えば良いのかな?

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