第48話 魔女、高級宿に泊まる
第二巻の発売日がきましました。
ということで、二巻該当部分をカクヨム版と同時に推敲して
少しずつこちらでも公開していきます。
ダーナの街を出てから半月ほど経った。馬車に揺られる気ままな旅は王都まであと半分くらいの所まで来ている。いくつかの街で馬車を乗り継ぎながらの旅なので、目的地が同じだと少しずつ仲良くなる人も出てくる。
「エリーちゃんこれ食べる? 飴っていうのよ。前の街で買っておいたの」
「ありがとうございますアデレートさん」
特に旅の中で仲良くなったのが、この老夫婦のアルバスとアデレートと名のっている。ダーナの街を出た頃は二十台ほどの馬車の列だったけど、街につくたびにその数は減っていき今一緒に行動している馬車の数は五台二まで減っている。
ちなみに乗合馬車は基本的に街間を往復している感じなので、次の街にたどりつくと乗り換えになる。そんな中ダーナの街から一緒なのがこの老夫婦と、商人の護衛として雇われている冒険者が何パーティーかいる。
私自身はのんびり旅なので何日か余分に街に滞在したりしているのだけど、アルバスとアデレートとはずっと一緒に行動する機会が多かった。別に示し合わせたわけではないのだけどね。
旅の途中何度か盗賊にも襲われたのだけど、私の出る幕はまったくなかった。ダーナの街で得た魔物の貴重な素材を運ぶために、この商隊は護衛に慣れた冒険者が雇われているからだ。
そんな護衛に慣れた冒険者だけども全く無傷という訳にはいかない。そこで登場するのがニーナが作ったポーションとアデラが作った軟膏というわけだ。途中の街で雇いなおされた冒険者は別として、ダーナの街から来ている冒険者は身をもってニーナのポーションの効果はわかっているので宣伝もしやすい。
「あれって大将さんのところの娘さんだったのね、護衛が終わって王都観光が済んだらまたダーナに戻るつもりだから、その時は利用させてもらうわね」
と言ってくれたり、他の街で一晩泊まる時には酒場でスタンピードの武勇伝を語るついでに、ダーナの街にはすごい錬金術師と薬師がいるなんて広めてくれた。いやーなんとなく、ニーナが大変な目に合いそうな気もするけど、それも修行と思って頑張ってねと念を送っておいた。
どこからともなく「師匠ーー!」という悲鳴が聞こえた気がするけどきっと気のせいだよね、うん。
◆
新しい街へ到着したのでまずは宿探しを始める。アルバスとアデレートに関しては、あえてどういう身分の人なのか聞いていないけど、街につく度にその街を統治している人が出迎えている所からして、結構なご身分なのだと思う。一度「ご一緒にどう?」と誘われたけど遠慮させてもらった。
少しだけ貴族の屋敷にあるであろうお風呂の誘惑に負けそうになったけど我慢した。だってどう考えても堅苦しいだろうしあまり深入りするのもどうかと思ったからだけど。
いやね、なんとなくわかっているのだよね、アルバスとアデレートの二人が私になんらかの用があるって事は。ダーナの街からここまで同行している上に、多分二人の護衛だと思える人たちか、私を監視している視線を感じているからだ。
大きな街を何度も超えているのだけど、お二人とは街の滞在日数も毎回同じになっているし、乗合馬車も同じのに乗ることになっていたりと流石にあからさま過ぎだと思う。
あえて振り切る必要もないからそのまま来たのだけど、魔女の弟子としての私に用があるのか、錬金術師としての私に用があるのかそろそろ教えてほしいものだね。私から話を振るわけにもいかないので気づかないふりを続けているのだけどね。
色々と屋台で買い物をしながら宿の情報収集を済ませて早速向かう。たどり着いた宿は結構良いお値段はするらしいのだけど、ちゃんとお風呂のある所ということだ。見た感じは大将の宿の四倍くらいの大きさだろうか。
扉を開けて中に入ると受付とその奥に大きな扉があった。扉両脇には執事服を着たガタイのいい男性が二人立っている。とりあえず受付の方に向かう。受付には女性が二人立っていてチラリと私の格好を確認してくるのがわかった。
「こんにちは、何泊かしたいのですけど部屋は空いていますか?」
二人のうち若い方に声をかけてみる。
「はい空きはございます。一日二食付きで金貨一枚となっております」
あなたは払えますか? と問いかけてくるような視線を感じる。二食付いて一泊金貨一枚というと大将の所が二食付きで銀貨一枚だからざっと十倍ってところだね。まあ見るからに上流階級向けの宿だからそれくらいはするのかもしれない。
「それじゃあとりあえず五日ほどお願いします。お風呂もあるって聞いてきたのですがどういう感じになっていますか?」
「お風呂は入浴時にご連絡いただければお部屋に魔術師がお湯を浴槽に注ぎますので、ご利用の際はお申し付けください。一日一度までは宿泊料金に含まれておりますが二度目以降は一回あたり銀貨一枚となっております」
「そうなのですね。えっと自分でお湯を用意する分には問題ありませんか?」
「その場合はご自由にお使いくださって結構です」
「そうなんだありがとう」
「お食事ですが夜は七の鐘以降に、朝は日の出に合わせまして御用意させていただきますので、スタッフにお申し付けください。他にご質問はございますでしょうか」
「今のところは大丈夫です」
金貨を五枚取り出して受付嬢に手渡す。
「ありがとうございます。こちらがお部屋の鍵となります、そちらの扉から中に入っていただきまして、左手の階段を登っていただき二階の二番のお部屋となっております」
「ありがとう」
「この度は当宿グランゴルドにご宿泊いただき誠にありがとうございます。なにかご不明な点などございましたらお気軽お声がけくださいませ」
鍵を受け取って早速部屋へ向かう。扉の前に控えている二人の男性が扉を開けてくれた。なんだか堅苦しい宿だねと思ったけど扉をくぐった所で納得した。魔導具の照明で照らされたホールがあり、まるで貴族の屋敷のようになっている。値段もそうだけど結構高級な宿のようだ。ここまで豪華な宿は初めてだわ。
食事がどんなものかわからないけど、きっと金額に見合ったものが出てくるのだろう。今から楽しみだね。
階段を上がり二階の二番の部屋の鍵を開け中に入るとここもかなり豪華仕様だった。天蓋付きのクイーンサイズくらいのベッドがありトイレも個室になっていた。そして肝心のお風呂なのだけど、ちゃんと足を伸ばせるくらいのサイズの浴槽があった。各部屋に同じものが備え付けられていると考えるとあの値段も納得だ。





