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第5話 魔女、街に入る

「ん~」と伸びをする。久しぶりにベッド以外で寝たから体が痛い。あたりはまだ薄暗くて日は昇りきっていないみたいだ。被っていたフードを上げると朝の冷たい空気で一気に目が醒めた気がする。


 周囲に人の気配も魔物の気配も動物の気配もない。結界も特に変化はなく健在だったので解除しておく。タライを取り出し水を入れて顔を洗い歯を磨く。軽くストレッチをして体をほぐしていく。少し森に入り木切れや落ち葉を集めて比較的マシなかまどを借りることにする。火を付け水を入れた小さい鍋でお湯を沸かす。お湯が沸くまでの間にパンを取り出しハーブと薬草を挟み込んで置いておく。


 お湯を沸かしている火を利用して収納ポシェットから取り出した薄切のオーク肉を炙り、程よく焼けた所で先程のパンに挟む。お湯が沸いたようなので火を消して、乾燥させた花を入れたティーバッグを用意しておいた木製のカップに入れて上からお湯を注ぎ込む。


「うん、いい香り。朝はやっぱりこれだね」


 再利用できるのでティーバッグは水気を切って魔法で乾燥させる。各種茶葉を保存している箱に入れて収納ポシェットに放り込んでおく。


「いただきます」


 お茶を一口含んで香りを味わう。先程作ったパンを食べると、オーク肉の甘い脂とハーブの辛味がいい感じに合わさって美味しい。最後にお茶で口の中をさっぱりさせて、適度に冷めた温めのお湯でうがいだけしてお片付け。


「よし、火も消したし忘れ物はないね」


 杖に座ると空へ上がる。まだ進む先には木々しか見えないけどこの先には街があるのだろう。日が昇り一気に気温が上がってくる。おっとオーク発見。一匹しかいないところから見るとはぐれかな?


 街道から近いしサクッと魔術で首を狩って収納に放り込み再び上空へ。体に古傷がいっぱいあったからあまり買い取りには期待できないかな? 持っていた武器も一応回収したけどボロボロだったしこっちも期待薄だろう。


 それから暫く進んでそろそろお昼かなという所で、森が途切れて草原の向こう側に街らしきものが遠目に見えた。このまま飛んでいって良いものか迷う。正直今の時代の常識というものはわからない。飛んで行った所でいきなり攻撃されるという事もあり得る。暫く考えた後、森から抜ける少し手前で地上に降りて歩いていくことにした。


 上空から見ただけだと結構近そうに見えたけど、平地ではないので歩きだと意外と時間がかかったがなんとか町の入口までたどり着いた。遠目からでもわかっていたけど、結構大きい外壁に囲まれた街のようだ。外壁と同じ大きさの門の前では、門番が二人いて暇そうにしている。時間によるものなのか分からないが、人の出入りはほとんど無いように感じられた。


 近づいていく私にも特に警戒するような感じはない。一応被っていたフードを上げ顔を出して入り口に近づいた所で、二人のうち見た目50代くらいの人に声をかけられた。ちなみにもう一人は20代くらいに見える。


「お嬢さん初めて見る顔だけど一人で森を抜けてきたのかい?」


 使われている言語は共通語だった。


「はい、一人で旅をしているのですけど、ここはなんという街ですか?」

「ここかい? ここはダーナの街だよ。街に入るのなら身分を示せるものがあれば入れるよ。冒険者カードか商人の認証カードや紹介状なんかだね」


 まあ分かりきったことだけど、そんなもの持ち合わせていない。


「すみません、どちらも持ち合わせていなくて。私の暮らしていた場所にはそういう組合? ギルド? のようなものがなくて」


「あーそうなのか。あっちから来たってことはどこかの開拓村だろうし無くても不思議じゃないか」


 開拓村ね。つまりあの街道を北へ向かっていたらそういう村だけで、ここみたいな街はないのかもしれない。


「それに使えそうなお金も無くて、魔石ならいくらかあるんですけどどうにかなりませんか?」


 そう言ってローブのポケットに入れていた小粒の魔石を何個か取り出す。


「魔石だけ持ち出したって所か」


 若いほうがそう言って苦々しい顔を浮かべている。ふむ、持ち出したという言い方から察するに、村から逃げ出してきたと思われてるようだ。


「身分証がなければ入るのに銅貨5枚必要だけど、その魔石を換金したら十分足りるだろう。ギースは冒険者ギルドまでこの子についていってあげな。冒険者カードならすぐに作れるだろうから、それの発行と魔石の換金、換金した代金から入場税の銅貨5枚を受け取ってきてくれ」


「了解でありますジョシュ兵長殿」


 ギースと呼ばれた若い門番が軽く敬礼をして私に街に入るように促してくる。


「えっと、ありがとうございますジョシュさん」


 軽く頭を下げてお礼を言ってから、ギースさんに追いついて着いていく。街に入るとかなり活気が良いようで賑わっている。すごいね、異世界だね、活気があって良いね。なんだか道の左右に屋台が並んでまるでお祭りのようだ。


「なんだか人が一杯でお祭りみたいですね」

「あー、ここじゃあこれが普通だ、祭りの日はこんなもんじゃない」


 その後は無言で暫く大通りを進んでいくと剣と盾の描かれた看板が下げられている建物が見えてきた。


「ここが冒険者ギルドだ、今の時間はほとんどの冒険者は出払っているから丁度いいだろう、ほら入るぞ」


 私はギースさんに促され冒険者ギルドの中に一歩足を踏み出した。


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