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第38話 魔女、解析する

「ここをこうして……、こうこうこうで……」


 例の魔結晶の解析を初めてから二日経った。その間飲まず食わずでやっていたけどやっと終りが見えてきた。この魔結晶を作った奴は絶対性格が悪い、というか解析されることを想定していたのか、複雑に編まれた術式を解析するのになかなか手こずらされた。


「よし出来た、あー疲れたー眠いー頭痛いー関節が痛い」


 情報を全て抜き出したことにより魔結晶が砕け散る。抜き出し解析の済んだ情報は魔石に転写しているので魔結晶は砕けても問題ない。なんとか解析が終わったが頭の使い過ぎでしんどい。体もずっと同じ体勢だったので各部が痛い。情報の精査は後にしてとりあえず───。


「お風呂だね」


 部屋を出て階下に降りると大将とアーシアさんにニーナちゃんにアデラがご飯を食べていた。


「エリーやっと部屋から出てきたか、飯食べるか?」

「みんなおはよう、ご飯はお風呂上がってから貰うよ」

「師匠顔色が悪いですけど大丈夫ですか?」

「エリーの姉御おはようございます」

「大丈夫だよ、お風呂入ってご飯食べて一回寝たら復活するよ」

「師匠、それって大丈夫とは言わない気がするんですけど」

「あはは、まあお風呂入ってくるよ、また後でね」


 裏口から外に出てお湯をためで髪と体を洗って二日ぶりのお風呂に入る。


「あぁー、気持ちいいー」


 腕を組んで上に上げて、んーっとすると固まっていた肩の筋肉や関節がほぐれて頭痛も治まってくる。続けて肩をぐるぐる回したり、お風呂の中でストレッチをすると気持ちいい。


 一度湯船から上がり魔法で出したお水を飲んで再びお湯に浸かり体の力を抜いてプカプカと漂っていると眠くなってくる。本格的に眠ってしまう前にお風呂から上がって、魔法で体と髪を乾かし後片付けをしてから食堂に戻ると大将が食事を用意してくれていた。


「大将ありがとう」

「おう、ゆっくり食べろ」

「いただきます」


 白パンが二個とスープと野菜、久しぶりの食事にはちょうどいいかも知れない。


「足りなかったらまだあるからな」

「今はこれで大丈夫かな、食べたら夜まで寝るからその時にお肉が食べたい」

「わかった用意しておく」


 食事をしていると着替えてきたのかニーナちゃんにアデラとアーシアさんが冒険者の装いをして出てくる。アデラなのだけど結局あの後すぐにこの宿に来ることを決めて、私の隣の部屋で寝泊まりしている。


「今からお出かけ?」

「はい、師匠が出してくれた課題の素材が残り一つなのでアデラとママといっしょに魔の森まで行ってきます」

「そうなんだ、気をつけてね」

「はい、行ってきます」


 三人に手を降って送り出す。


「大将はいかなくて良いんですか?」

「ああ、今の魔の森ならアーシアがいれば大丈夫だろう」


 食事も終わり大将が出してくれたお茶を飲んで席を立つ。


「それじゃあ大将、私少し寝るから何かあったら起こしてね」

「ああわかった、あーそう言えばギルマスからエリーの手が空いたら一度来てほしいと伝言を預かっている」

「そっか伝言ありがとう、明日にでも顔を出してみるよ」


 部屋に戻って夜着に着替えを済ませて布団に潜り込む、4徹の時よりも眠気がすごい頭の使い過ぎだね、死使鳥の羽を使ったお布団の暖かさに包まれると同時に眠りに落ちた。



 目覚めスッキリ、やっぱり死使鳥の枕とお布団は気持ちいい眠りを提供してくれる。夢すら見ない死んだような眠りをね。さてと晩ごはんまではまだ時間がありそうだし解析結果を精査してみましょうかね。


 魔石を取り出し魔力を注入すると、魔石からホログラムのように映像が浮かび上がる。この魔石は私がそういうふうに作った魔石だ、そしてここにはあの獣人の少女が魔結晶を埋め込まれた後に見ていたものが映像として映されている。残念なことに映像だけで音声はでない。


 最初に映されたのはどこかの石造りの部屋と黒いローブをまとった複数の人物、フードを下ろしているので顔までは見えない。それ以前に目の焦点が合ってないようで視界はぼやけている。そのぼやけも時間がすぎるとともに無くなってきた。


 映像の内容を説明すると、何者かわからない集団に魔結晶を埋められた複数の人達。人種は様々だけど獣人はあの少女一人だけのようだった。何度か部屋を移動した後に魔法陣に乗せられて転移したようで場面が火龍山が見える森の中だった。


 既にスタンピードが起きた後のようで、ドラグニスが飛び立つ姿が見えた。一緒に転移してきていた指示役の者から何か命令を受けたようで魔の森を進み火龍山に近づいていく。


 たまに襲ってくる魔物を倒しながら進み火龍山へ到着し登りだす。そこで私と遭遇する流れだった。いやー自分で言うのも何だけど私って理不尽だね我ながら酷いわ。最後は空を見上げている所で映像は終わりホログラムは消える。


「はぁ結局分かった事は、こういう技術を持った集団がいることくらいか」


 火龍山を狙った理由も、獣人の少女がこの大陸にいた理由も分からずじまいか。あーでも指示役が魔の森に来ていたって事は、転移に使った魔法陣なんかが残ってたりするのかな?


 まあ流石に追跡されないように消しているとは思うけど、私の探知にも引っかからなかったことから私が火龍山に着く頃には逃げ出していたんだろうね。問題は火龍山を荒した目的がわからない事だね、さっさと退散したことからドラグニスの溜め込んだ財宝が目的では無さそうだし。


 ドラグニスにダーナの街を襲わせるのが目的だったのかな? まあこれ以上考えても世情に疎い私じゃ分からない。映像をアールヴに見せて新しい発見があることを期待するとしましょうか。


 ちょうど七の鐘が鳴るのが聞こえてきた、よし気を取り直して晩ごはんを食べに行こう、大将のことだからリクエスト通りお肉料理を作ってくれているだろうから楽しみだ。魔石を収納して部屋を出て階下の声を聞きながら食堂にへ向かう。


 ニーナちゃんもアデラもアーシアさんも着替えを終えて食事を運んでいるところだった、三人とも無事に帰ってきたようで何より。

「三人ともおかえりなさい」

「あっ、師匠ただいまです」


 ニーナちゃんが笑顔で手を降ってくれる、うんニーナちゃんの笑顔はいつ見ても可愛いね、すさんだ心も自然となごむ。

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