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第25話 魔女、顔見知りに出会う

 お風呂でさっぱりした後に四人で昼食を食べる。暫くこの宿には戻ってこられないだろうという事で残っている食材で作ってくれた。


「エリー、ギルドには報告しておいた。そこで街に残っている冒険者は全員招集がかかっている」

「それはウッドも?」

「ん? そうだなウッドもだ」


 つまり孤児組も集められるって事か、流石に前線に送られることはないと思うけどね。


「大将とアーシアさんも参加するんだよね? もう冒険者じゃないから義務はないと思うけど」

「まあな。そういうわけだからエリーにはニーナの事を頼みたい」

「ニーナちゃんの事は元々そのつもりだから良いけど、大将とアーシアさんの方は大丈夫なの?」

「俺とアーシアは遊撃という形で自由行動を認めさせたからな。やばくなったら引くつもりだ」

「そっか、じゃあ念のためという事でこれを渡しておくよ。必要だと思ったらためらわずに使ってね」


 収納ポシェットから2本のフラスコ型のポーションを渡す。


「これは?」

「上級ポーションってやつだよ」

「おま、良いのか?」

「いいよいいよ、ニーナちゃんの修行の目標の一つとして作った物の余りだからね」

「助かる、ありがたく受け取っておく」


 食事も終わり食器を片付けて装備を整えるために一度解散。私は最初にこの街に来た時の服装に着替える。大将は魔術師の杖を持ち灰色のローブをまとっている。大将って筋肉でパツンパツンなのに実は魔術師だったんだよね、闘気もまとえる魔術師って詐欺じゃないかな。


 いっぽうアーシアさんは純白の神官服を着ていて光神の聖印を下げている。聖印を持つことが許されるのは高位の神官と洗礼を受けた貴族の信徒だけなんだけど、聖印を持つアーシアさんは親が貴族なのかも知れない。そしてニーナちゃんの服装は普段着の上に私が作ったローブを着ている。もうちょっとおしゃれにしたいのだけど、私の弟子だと印象づけるために仕方なくこういう装いにしている。


「それじゃあギルドに向かいましょうか」


 大将とアーシアさんは気負うことなく、ニーナちゃんは少し緊張気味に宿を出て歩き出す。私は「大丈夫だよ」とニーナちゃんの頭をポンポンと撫でながらギルドへ向かう。ギルドまでの道には昨日まではあった屋台のたぐいはすべて撤去されている。戦うことの出来ない人たちは家に引きこもり、戦う覚悟を決めた人たちは兵士達と共に南と北の門を守るように別れて集まっている。貴族は領主を中心としてまとまり街を守るようだ。


 冒険者ギルドの周りには街に残っている冒険者が大量に集まっている。ギルドの中にいるのはパーティーの代表とソロの人かな? ウッドの子達は中に入らずにじゃまにならない場所に固まっているのが目についた。その中にはアデラがいたので手招きして付いてくるように合図する。中に入ると外ほどではないけど冒険者がかなりの人数がいるように見える。酒場の方もテーブルや椅子は片付けられてそこにも冒険者が集まっている。適当なスペースに落ち着いてアデラに少し話を聞いてみることにする。


「アデラ今ってどんな感じ?」

「多分ですが今街に残っている冒険者はほぼ全員集まっていると思います」

「じゃあそろそろ話が始まるかな」

「えっとそれじゃあ外に出てますね」

「出なくていいからここにいなさいな、あなた達には私の手伝いをしてもらうつもりだからね」

「手伝いですか?」

「うんそうだよ、っと話が始まるようだね」


 ギルドの受付の奥にある階段から受付のミランダさんとサーラ、それと話したことのないギルド職員の女性二人にガラさんとダンさん、そしてギルドマスターだと思われるエルフの男性と二十歳くらいの女性にそんな女性を守るように二人の双子に見えるそっくりな女騎士が降りてくる。先程までざわついていたギルド内は静まり返っている。ん? んんん? よく見てみるとあのエルフのギルドマスター知り合いだわ。


「勇気ある冒険者諸君、街の危機に対して集まってくれたことに感謝する。余り表に出ることがないためか知らない者も多いだろうが、私がダーナの街で冒険者ギルドのギルドマスターをしているアーヴルだ」


 集まっている冒険者をぐるりと見回すように話し出すギルドマスター。そして一度通り過ぎた目線が不自然に戻る。その視線が私を凝視した後にひきつる表情。とりあえずニコニコと笑いながら手を振っておく。アーヴルは少しの間視線を彷徨わせながらもなんとか平静を取り戻したようだ。


「後ほどソロのものには臨時のパーティーを組んでもらう。パーティー毎に防衛の担当箇所の割り振りをさせてもらうつもりだ。冒険者諸君には協力をしてもらいたい。報酬に関しては期待してもらっても良い、こちらに来ていただいているご領主様のご息女であられるダーナ・アデリシア様が確約してくれている」


 ギルドマスターと変わるように前に出て来たのは金髪で2つのドリルを下げた20歳くらいの女の子だった。綺麗なカーテシーをした後にギルド内を見据えて話しだす。


「はじめまして冒険者の皆様、アデリシア・ダーナです。この度のこの街の危機にご協力いただき感謝の言葉もございません。この街を預かる領主の一族として皆様に敬意を。不躾になりますが皆様の行いに対しては、アイアン以上の方には最低でも大金貨一枚をお約束いたします」


 残っているのが殆どブロンズとウッドという事を考えると報酬としては妥当なのかな。今街に残っている冒険者の割合はゴールドが一にシルバーが二、アイアンは2で残りがブロンズとウッドが合わせて五って所かな。


「そしてブロンズとウッドの方々には最低金貨一枚を支給させていただきます。それ以外にもそれぞれの功績により追加での報酬も用意させていただきます。金品での報酬となりますが、街をそして皆様それぞれの守りたい物のためにどうかお力をお貸しくださいませ」


 そう言って頭を下げる。どう反応していいかその場にいる人達は固まっている。そりゃあ冒険者にとっては領主のお姫様なんて高嶺の花だからね、そんな人に頭を下げられてどう反応したら良いか困るってもんだよね。

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