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第6話 姉さん先輩と膨らむ気持ち

 二人で映画を見終わったあと、俺と寧々さんは感想を言い合いつつ、ショッピングモールのフードコートに向かうことにした。


 寧々さんが「ちょっとお腹が空いたね」と言ってくれて、俺も同じ気持ちだったので、ラーメン屋に並ぶことにした。


 女の子とラーメンか。なかなかイメージは無いがそんなような時間も寧々さんと共有できるのがなんだか少し嬉しく思える。

 温かいラーメンを食べるのも、今のこの心地よい気分にぴったりだ。


「啓太くん、何にする?」


「うーん、醤油ラーメンですかねぇ」


「じゃあ、私も同じにしようかな」


 こんな風に、何気なく一緒に食べるものを選んでいると、まるで俺たちがもう少し特別な関係になったかのような気がして、心が高鳴る。

 まぁ現実そんなことは無い訳だが。


 ラーメン屋に並んでいるときも、寧々さんは時折話しかけてくれて、そのたびに俺は少しずつ気持ちが和らいでいった。

 いっぱい気遣ってくれてるんだなぁ、と節々から寧々さんの優しさを感じ取っていた。


 席に着き、ラーメンを食べながら俺たちはまた、さっきの映画の話をしたり、最近の大学のことやサークルの話をしたりした。

 気がつけば時間がどんどん過ぎていった。

 ずっと常に明るいオーラを出した寧々さんといると、俺は自然と笑顔が出てしまうんだ。


「啓太くんって、話してると本当に素直で面白いね」


 面白い、そう言われて俺の心は跳ねた。


「そうですか?  そんな風に言われたの初めてです」


「うん。だから、もっと話したくなるの。」


 そんな風にあまりにもストレートに言われると、なんだか胸がドキドキしてしまう。

 寧々さんの視線が俺に向けられるたびに、どうしても緊張してしまうけど、それでも彼女の言葉には不思議な安心感があるんだ。

 心がどんどん落ち着いていくような、このまま彼女に身を任せていいのではないか、そんな気にさえなってくる。


「「ご馳走様でした!」」


 ラーメンを食べ終わると、俺たちはショッピングモールの中を少しぶらぶらすることにした。

 寧々さんは楽しそうに店を見て回りながら、いろんなものを手に取っては俺に見せてくれる。

 その無邪気な姿がまた可愛らしくて、俺は心の中で何度も「可愛いな」と思ってしまう。


「これ、どう?  可愛くない?」


 寧々さんが小さなアクセサリーを手に取って見せてくる。


「はい、可愛いです……!」


 俺は即答した。すると、彼女は少しだけ照れくさそうに笑った。

 俺の言った『可愛い』はアクセサリーに対しての『可愛い』なはずなのに、そんな反応をされるとこっちも照れくさくなってくる。

 まぁ寧々さん自体が可愛いのも事実だ。まじ可愛い。


「そっか、じゃあ、買っちゃおうかな」


 その笑顔に、俺の心は完全に打ち抜かれた。

 こんなに近くで寧々さんの笑顔を見ていると、どうしても意識してしまう。

 でも、それが不快じゃなくて、むしろ心地よいのが不思議だ。

 この二人の幸せな時間がずっと続けばいいのに、そんなことを久しぶりに思った。



 ******



 その日の帰り、俺たちは駅の改札で寧々さんが乗って帰る電車を待っていた。

 日が暮れて少し肌寒くなってきたけれど、寧々さんと一緒にいるだけで心は温かい。

 寧々さんが、


「今日はありがとう、楽しかった」


 と言ってくれたとき、俺は心の底から、


「こちらこそ、楽しかったです」


 と返した。

 そして寧々さんは少し緊張気味に口を開いた。


「また、どこかに出かけられたらいいね。」


 寧々さんがそう言ってくれたとき、俺の心は温かい何かに包まれた。


 彼女との時間が、俺にとってどれだけ特別かが、だんだんと分かってきた気がする。


 電車が来ると俺たちは手を振り合った。


「またね」


「はい! じゃあまた」


 彼女の背中が見えなくなるまで見送ってから、俺は家へと歩き出した。

 今日は本当に楽しかった。時間が過ぎるのがあっという間に感じた。

 心の中で、少しずつ膨らんでいくこの気持ちを、いつかちゃんと伝えられる日が来るのだろうか。


 彼女との時間をもっと大切にしようと、そう思いながら俺は家への道を歩き続けた。この先もきっと、寧々さんとの新しい日々が待っている。

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