第4話 姉さん先輩とお誘い
次の日も、俺の頭の中は寧々さんのことでいっぱいだった。
昨日の帰り際のやり取りを思い出しては、自然と顔がにやけてしまう。
おいおい、俺はもう恋愛なんかこりごりだって思ってたはずなのに、なんでこんな気持ちになってるんだよ。まったく、俺って単純すぎるだろ。
だけど寧々さんと一緒にいると、なんか心が楽になるというか……そんな感じになる。
失恋の傷が癒えるっていうか、そもそも傷があったことすら忘れそうになるっていうか。
寧々さんといると俺は「大丈夫」って思えるんだ。
あの優しい笑顔と、ほんの少し強引な先輩っていう頼りがいのあるところも、全部ひっくるめて俺を救ってくれてるんだ、そんなことを思った。
そんなことを考えていたら、サークル室に着いた。
扉を開けると、すでに寧々さんがいた。彼女は、いつものように明るくて優しい笑顔を浮かべて俺を迎えてくれた。
「おはよう! 啓太くん。今日はちょっと早いね。」
「おはようございます、寧々さん。まぁ、ちょっと気分が良くて……」
なんだその返し。まるで朝から張り切ってます、みたいなノリじゃないか。
恥ずかしいこと言ってしまったかもしれない。
でも、寧々さんはそんな俺の言葉にクスッと笑った。
「気分がいいのは素敵なことだね。私も嬉しいよ。」
その笑顔に、また心が軽くなる。
朝からこんな調子で、俺、大丈夫か? いや、むしろ絶好調じゃないか。
その後、サークル活動が始まって、俺たちはいつものようにミーティングを進めていった。
寧々さんがリーダーシップを発揮して、みんなをまとめていく姿は本当に頼もしい。
俺ももっと頑張らなきゃな、なんて思うけど、やっぱり彼女のサポートがあるからこそ、頑張れる気がするんだ。俺はまだまだ弱い。
ミーティングが終わる頃、ふと寧々さんが俺に近づいてきた。
「啓太くん、今日は何か予定ある?」
ドキッとした。俺はこれから何をされるのだろう。ドキドキが止まらない。
「あ、えっと……特に何もないですけど。」
寧々さんは嬉しそうに微笑んで、俺に向かって小さく首をかしげた。
その仕草が、なんだか妙に可愛く見えて、俺の心臓は一気にバクバクし始めた。なんだ、これは。
「じゃあさ、今日は私と一緒に出かけようか? たまには外でリフレッシュするのもいいと思うんだ。」
つまりそれは……デートのお誘いか?
いや、違う、これはただの「リフレッシュ」だ。
そう、普通の先輩後輩の関係として……そう言い聞かせるが、普通に嬉しい。心臓の鼓動がとても早い。
「それ、いいですね、ぜひお願いします!」
少しでもカッコつけようと思って、軽く笑って答えたけど、内心めちゃくちゃ舞い上がってる自分がいる。
喜びすぎかな? でも、こんな気持ちになれるのも寧々さんのおかげだな。
そうして、俺たちは午後の予定を決めるために話し合った。
結局、近くのショッピングモールに行って、映画を観たり、ちょっとした買い物をしたりすることになった。
こんな何気ないプランでも、寧々さんと一緒なら最高に楽しいだろうな。そうに決まってる。
時間が来ると、俺たちは一緒にキャンパスを出て、駅へと向かった。
電車に揺られながら、俺たちは他愛もない話を続けた。寧々さんと話してると、本当に心が安らぐ。
いつの間にかもうすっかり失恋から立ち直って元気になった俺がいるんだ。
駅に着いて、ショッピングモールに向かって歩き出す。
これから何が起こるのかはわからないけど、寧々さんと一緒にいれば、どんなことでも楽しめる気がする。
心の中で、また少しだけ新しい期待が膨らんでいくのを感じながら、俺は彼女と一緒に歩き出した。
俺の新しい日常が、また一つ広がる瞬間がやってくるんだ。