2 朝
ブルア、時間だ、起きろ」
そう言うのと同時にパパがカーテンを開けた。
眩しい朝日が顔に射す。
朝は嫌いだ。毎朝どうしてこんなに眠いんだろうと、ぼくは思う。
「よく、眠れたかい?」
パパが、ぼくのベッドに腰かけて言う。
「うん、でも、もっと寝ていたいよ」
ぼくは、布団に半分顔をうずめて、目をこする。
「わかるよ」
パパが、同情するように、感情をこめて言った。
「パパも、お前ぐらいの時は、いつまでも眠っていたいと思ったものさ」
パパは笑って、ぼくの頭に手をのせた。
ぼくが、朝食のレーズンパンを、ほおばっている時も、パパは忙しい。
洗濯をしたり、かたずけをしたり。お風呂やトイレの掃除も、毎朝欠かさずにきちっとする。
だから、この家はいつも清潔で、きれいに整えられている。
パパはずっと前から、なんでもきちっとするし、きれい好きだったらしい。
ママはよく、パパがきれいにしてくれるから、本当に助かるって、よく言っていた。
ぼくの家は、きれいに片付いているけれど、どの家もそうじゃないことは知っている。
友達のアルフの家は、いつも、ママがいるのにきれいじゃない。流しには、使ったカップやお皿がたまっているし、テーブルやチェスト、ソファーの上にまで、いろんなものであふれている。
アルフのママは、ちょっと、ふとっちょだけど、優しくて、おもしろくて、ぼくは好きだ。それに、アルフの家には、ゲームもまんがもいっぱいある。
けれど、アルフの家にはあまり長くいたくない。
早く自分の家に帰って、きれいなソファーで、ゆっくりテレビを見たり、本を読んだりしたいと思う。
「早く食べないと、時間がないぞ」
ぼんやりしているぼくに、パパが言った。
「うん、わかってる」
ぼくは、豆のスープをすくって口に入れた。
かむと、ふにゅっとつぶれる豆の、歯ごたえが嫌だ。味はそう悪くはないんだけれど。